第8話 新しい試み



『マネジメント』



その言葉を見つけた俺は衝撃を受けた。

そうか、誰かをマネジメントすればいいんじゃないか?と。

勇者時代は様々な人達と出逢い、海千山千の怪物達も多くいた。

そんな中で召喚された、高校生のペーペー勇者は世間知らずの、カモネギくんであった。



「あの頃は色々と助けられたっけ。ルナガイアのこと何も解らなかったから余計にな」



時には大国の英雄と呼ばれる軍師が、時には大商会の敏腕会長が、時には面倒見のいい先輩気質の冒険者が、みんなが俺を助けて活かせる方向に持っていってくれた。



「活かすために、『生かして』くれた戦友もいたな・・・」



もちろん魔族の罠や、魔物の大群によって窮地に陥り、死を覚悟する場面は何度もあった。

その度に誰かによって、自分は生かされてきたのだ。



そんな悲しい過去も乗り越えての、今の俺だ。みんなの犠牲を無駄にしないためにも魔王討伐を頑張ったのだ。



「おっと、しんみりしちまったな。そうそうマネジメントだったな」



今の俺に出来るとしたら、マネジメントというよりも家庭教師とか、習い事の先生といったほうがしっくりくるな。



「勉強は教えてやれんが、生存術とか、魔力の扱い方、剣や魔法なんかも教えてやれるな」



魔力は異世界ルナガイアだから使える訳ではない。

地球でも使える人は使えるだろう。ただ表立ってないだけで。

エクソシストや、陰陽師、シャーマンや、寺生まれの息子なんかも使えるのかもしれない。



「問題はどうやって生徒を募集するかだな。あと資格とかあるのかな?いつもので調べてみるか」



そうして二日ほど調べたり、教育方法を考えたりしながら、スマホをポチポチとしていった。





二日後。

考えた結果、口コミや宣伝効果の偉大さを思い出したので、西沢に協力してもらうためRainで連絡することに。



『ちょっといいか?』


『なに?どーしたの?』



早っ!送ってからすぐに返ってきたんだけど。

気を取り直しお願いを送ってみる。



『頼みたいことがあるんだけど』


『だいたいのことならいいよー』


『俺の弟子になってくれない?』


『え?』




よーし、ここからだ。

考え抜いたプレゼンを披露する時だ!



このあと、めっちゃ説明して弟子になってもらい、モデルケースとして周りに広めていってもらおうという事を伝えた。

変な勘違いされてたみたいで、説明は大変だったけど。



数日後に会う約束をしたので、その時に何を教えるか楽しみにしてもらった。





そして約束の日、もう大学生活は始まってるらしく、休日を利用して近くの大きい森林公園的な場所に二人で来ていた。



「久しぶりだね、大学生活はどうだい?」



「うん、お久しぶり。あんまり夢のキャンパスライフって感じじゃないかな?」



西沢とたわいもない会話をしながら、今日の主旨を説明する。



「じゃあ早速だけど、いいかな?」



「オッケー!先生、よろしくお願いします」



先生と言われドキッとしたけど、気を取り直してちゃんと魔法で場を整えるところからやらなければ。



「じゃあいくよ?空間魔法『亜空間部屋プライベートルーム』」



「え?え、えぇ!?何これ?」



亜空間部屋は、別次元に亜空間を利用して広いスペースを確保する魔法だ。

これにより、高威力の魔法や、激しい戦闘を行っても周りに被害が出ないようになる。

イメージ的には、アイテムボックスに入るような感じかな?



「この中では時間も普通に流れるし、空気もある。しかもどれだけ暴れても大丈夫な空間なんだ」



「いや、聞きたいことそれじゃなくて。いや、それもなんだけど」



「更には、アイテムボックスに一生分以上の食糧もあるから安心してほしい」




西沢は感動しているのか、あ~とか白昼夢かとか詩的なことを言ってる。

俺も初めて見た時は驚いたからわかるわー。

本当は外界との時間の流れを遅らせたり、止めることも出来るけど魔力を無駄に使うから止めた。



「じゃあ最初は初歩の魔力を感じるところからいってみようか」



「はっ!え?魔力・・・?」



こうして西沢を鍛えて、俺がマネジメント出来るってことを口コミで広めてもらえば、完璧だな。

ゆくゆくは道場とかもアリかな?

ルナガイアでも、そういった道場主は一生食うに困らないほど稼げると聞いたしな。



「あの、木村くん?」



「ん?どうした。なんか質問か?」



「そうね。とっても大切な質問よ。まずはそこに正座してもらえるかしら?」



「え?なんで?「正座っ!」はいぃぃ!」




このあと西沢から、怒涛の質問責めを喰らった。

どうやら説明不足だったらしい。

西沢に色々と答えていったのであった。




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