第7話 再び西沢からのナナミン



ん?なんだ。Rainか。

そういえばマナーモードにしてたっけ。捜査の最中に鳴ったらマヌケなので、そういうフラグは折っておいたんだった。



「な、ナナミンからだ」



早速、次のデート?の打ち合わせだろうか?

逸る気持ちを抑えながら、Rainを開く。



『こんにちは~』


『木村くん聞いてよ!』


『あのアクセの反響すごかったんだから!』


『みんな可愛いって言ってたよ』



な、なんだ。ただのレビューか。

いやいや、違うだろ。大事なことだよ。そうだよ、お客様の声ってやつだ。



少しガッカリしながらも読み進めていくと、連続でどんどん送られてきた。



『肩凝りが治りました』


『足が速くなりました』


『重い日も安心』


『片想いのあの人と結ばれました!』



おいぃぃぃ!なんだよ、それ!

どこかで見たことあるセリフばっかじゃねーか!

重い日ってなんだよ!あ、あれか?女の子の日とかってやつか?

げふんっ!いや、それは置いといて。肩凝りと足が速くなるのは解る。

そういう付与をかけておいたからな。健康維持と身体向上小と運気向上小の効果だろう。

あ、もちろん重い日もそれだな。



けれど一番俺が動揺したのは、片想いのあの人と結ばれましたって一文だ。

はぁ、好きな人がいたのかぁ。

思ってたりショックなのは、ちょっと西沢に惹かれてたのかもしれない。



やけ酒でも飲もうかと、アイテムボックスから異世界の酒を取りだそうとした刹那、追加のRainがきた。



『あのアクセを友達に使ってもらった感想だよ』


『みんな色々と驚いてたみたい』


『お値段もお手頃だとちゃんと宣伝しておいたからね』




心が急速に落ち着きを取り戻していく。・・・なんだよ、まるで俺が西沢を好きで意識してるみたいじゃないか。

あ、さっき惹かれてるって思ってたわ。間違えてない。



『友達にはネックとブレスとアンクを渡したんだけど、これってあげちゃっても良かったのかな?勝手なことしてごめんね』



いやいや、全っ然!オッケーっすよ!

俺は『いいよー』とだけ返してしまった。気の利いたことが言えない・・・辛い。



『ごめんね?ありがとう!あと指輪は私が使ってるんだ』


『これけっこーお気に入りなの』



あぁ、たくさん持ってったもんね。指輪以外を渡して、わざわざレビューを聞いてくれたんだ。

優しいなぁ西沢は。

ん?まてよ。レビュー四つあったよな?じゃあ西沢が片想いのパターンがあるじゃん!

よし、さりげなく聞いてみよう。



『誰がどのアクセサリーを着けた感想なの?』



うん、なかなか上手い返し方だな。



『ネックが肩凝りでー』


『アンクが足が速くなった人ね』


『ブレスが片想いが叶った人だよ』



そ、そうか。西沢じゃなかったのか。ふ、ふーん。そうなんだぁ。

俺は始めからそうじゃないかと思ってたけどな。

あれ、待てよ。じゃあ残りのアレは・・・



『少し言いづらいけど、最後が私です。言わせんなよ、恥ずかしい』



ま、マジか。いや、そうなんだけど、言わせんなよ恥ずかしいとか言っちゃうタイプなんだ。

新しい西沢の一面を見たな。

なんか意識したらドンドン好きになっていってしまいそうだ。

あ、ちゃんと返事しておこう。



『なんかごめん』


『いいよ、別に』


『あとさ、友達も他の子に教えたいんだって』


『だからURL教えてもらってもいいかな?』



それは願ってもないことです。

早速返信を『いいよー』と送って、続けてURLも送っておいた。

どうやら西沢は、友達の後輩やら妹やらにも宣伝していくらしい。

他にもSNSでインセタというアプリにも載せてるとか。俺は時代についていけてません。未だによくわかってない。



アレコレやりとりしてたら、最後に西沢から写真が送られてきた。



『これホントにお気になの』


『(自撮り写真)』



指輪と手が映ってるけど、胸よりちょっと上から撮影してるから谷間が強調されていた。

俺はその画像を、そっと保存した。

パソコン買ってデータ移しておくか、そうしよう。





胸の谷間画像の一件より、あれから数日たった。

いや、他にも色々あったんだけれども、最後のインパクトのせいでよく覚えていない。

しょうがねーよ。思春期だもの。



そういえばルナガイアでもあったな。筆下ろし殺人事件が。

あれは恐ろしい事件だった。

俺が筆下ろしに娼館に行ったら、女が男を刺し殺してる現場に出くわしたんだよな。



結局、女を取り押さえて衛兵を呼んで事情聴取したら、男の寝物語を本気にした娼婦が、騙されたことを知って刺したというありふれたお話だった。



その一件のせいで、俺が娼館に行ったのが姫様にバレて、以後娼館への立ち入りを禁止されたんだった。

・・・虚しすぎる。

勇者だから周りの目を気にしてとかなんとか言われたけど、筆下ろしも出来ずに死ぬかも知れない戦いに身を投じる気持ちも解ってほしい。



あれ以来、たまに西沢から少し際どい画像が送られてくることがある。

さすがに罪悪感から、『際ど過ぎない?』と送った。

返信としては、『普通だよー?』でした。

今時の子は進んでますのね!

ま、全部保存してますけど!



「あれからぼちぼちアクセサリーも売れてきたな。まだ1ヶ月経ってないのに、もうすぐ売上が十万円台に突入しそうだ」



あれから西沢のおかげで、口コミやインセタ等の媒介をツールに、アクセサリーが売れ出しているのである。

まさに西沢様々である。



「けど思ってた無双とは違うんだよなー。もっとドカーンと稼ぎたいよなー」



占星魔法でも使って、街角で占い師やるとか?いやいや、あんま稼げるイメージねぇわ。

なら、マジシャンとかやってみるか?たまにデパートの屋上でやってたりするよな。魔法使えば楽だし。

あれってギャラとかどこから貰うんだ?路上パフォーマンスみたいに、投げ銭てわけでもなさそうだし。



「うーん。なかなかいい案が出ないなぁ。スマホでも見るか」




困った時にはスマホ頼り!

今日もポチポチ検索していくと、心引かれる言葉に出会う。





『マネジメント』





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