第6話 やれることが多いと迷うよね



セカンドプランが発動するも、ほぼ一発屋で終わってしまったのでサードプランを発動することにした。

さて、肝心のサードプランだけど・・・



「賞金稼ぎか、悪くないな。英語でバウンティハンターだっけ?」



まさに元勇者の仕事として、うってつけであると言えよう。

追跡や捜査の魔法やスキルもあるし、なんなら魔道具もアイテムボックスに無数に入っている。

こんなに向いてる仕事はない。



早速、いくつかピックアップしてどれにしようか候補を絞っていく。

問題は国内にするか、国外にするかだ。金額だけなら国外にいる凶悪なテロリストの方が高い。



「う~ん。さすがに行ったことのない国にはすぐに行けないな」



転移魔法は便利だが、ラノベの例に漏れず、行ったことのある場所にしか行けない。

更に言うならパスポートも持ってない。



「パスポートは今後必要になるかもしれないから、親父に頼んでみるとして、やっぱ国内になるなぁ」



そうと決まれば善は急げだ。

準備に取りかかるとしよう。

認識阻害の効果がある指輪型魔道具を装着して、更に認識阻害の効果を上乗せする仮面を被る。

見た目は怪しさバツグンだ!




ネットで調べた、とある殺人事件の容疑者の写真を見て、占星魔法を使う。



「この者の居場所を示せ。占星魔法、『広域探索エリアサーチ』」



『広域探索』とは、広範囲かつ高い精度で相手の居場所を占う魔法だ。

スキルにも探索はある。こちらは範囲が狭いが、常時発動できるというメリットがある。



広域探索の魔法の場合、頭の中に簡単な日本のエリアマップを浮かべて、そちらに失せ物である物や人を思うだけで簡単に場所が特定できるのだ。

出てきたイメージは、山の中のログハウス的な小屋だった。



「場所は意外と近いな。隣県の田舎町かな?ここなら前に電車で通ったことがあるぞ」



記憶を頼りに、隣県のちょいと寂れた駅を思い浮かべて転移していった。





「なんか空気が綺麗な気がする。周りは山ばっかだな。さて、ここからは走っていきますか」



先程の魔法で浮かんだイメージを思い出しながら、驚異的なスピードで爆走していく。

山を駆け抜けて、木々を飛び越えて、少し広い平坦な場所を見つけると、そこには先程のイメージ通りの小屋があった。



「こんなところにっていうほど遠くはなかったな。警察もなんで見つけられなかったんだろ?」



小屋の周りは何も無かったので、時折山を降りて必需品でも買いに行っていたのかもしれない。

そんなことを思いながら小屋の扉を黙って開ける。

中には中年の痩せたオッサンが居た。オッサンは驚いた顔で叫ぶ。



「うおっ!誰だ!てめぇは!?」



「はいはい、静かにしようね~。『睡眠スリープ』」



有無を言わさずに睡眠魔法で眠らせる。

耐性が無い一般人なら、丸一日はぐっすりだ。



オッサンを縄で縛り(異世界産の頑丈な素材)、オッサンを抱えて転移魔法発動。

駅まで戻ると、そこから最寄りの警察署まで爆走する。





「はい、到着っと。すみませーん」



オッサンを抱えたまま、警察署へと入っていき、受付カウンター前にオッサンを下ろした。



「これ、換金お願いします」



懐かしいなぁ。

そういえばルナガイアでも、ギルドで魔物素材をよくこうやって換金してたっけ。

ちなみに盗賊の場合は首を持っていく。奴らに救いは無い。



懐かしい気持ちになりながら、縛られたオッサンを見て、固まってるお姉さんに話しかける。



「あの、指名手配されている重要参考人?って人を連れてきました。ほら、ここの手配書に載ってるでしょ?」



そういってスマホの懸賞金画面を受付のお姉さんに見せてあげた。

お姉さんはフリーズから立ち直ると、「しょ、少々お待ち下さい!」と言って席を離れていった。




暫く待っていると、数名の警察官に囲まれていた。なんか悪いことした気分になるから止めてほしい。

代表らしき叩き上げっぽいオッサンが話しかけてきた。



「こんにちは。君がこの近藤を連れてきたのかね?」



容疑者のオッサン、近藤って名前だったのか。

とりあえず刑事さんっぽい人に答えるとしよう。



「はい。そうですけど」



「そうか。ちょっとした悪ふざけとかそういうんじゃなさそうだな。話を聞きたいから、着いてきてもらえるかな?」


「わかりました」



オッサン刑事さんと警察官たちに囲まれながら移動する。

場所は取調室っぽく感じる。

なんだろ?俺が逮捕されたみたいなんだけど。



そのままオッサン達に囲まれながら椅子に座るように促される。

ちなみに近藤は別の部屋に運ばれた。

刑事さんは重々しい態度で話を始めた。



「最初に聞いておきたいのは、何故君は仮面を被っているんだ?あと、気を抜けば君が霞んで見失いそうになるんだが?」



やばっ・・・忘れてた。

かといって魔道具を外すワケにもいかないので答えるとしよう。



「すみません。ワケあって正体は明かせないんです。なのでこのまま聴取?なり、話をさせて下さい」



「いやいや、そうはイカンだろ。さすがに身分を明かせない者に、はいそうですかという訳にはいかん」



刑事さんの言うことは、確かに一理ある。

しかし身分は明かせない。

未成年だしなぁ、うーん。

なんか面倒臭くなってきたな。



そういえば、ルナガイアでも高ランクの魔物素材を持ち込んだら、毎回ギルドマスターに呼ばれていた気がする。

あの時も、勇者だと明かさないと帰してくれなかったなぁ。



「君の身元を誰かに口外したりしない。守秘義務があるんだ。報復等は怖れなくてもいいから、安心してほしい。だから仮面を外して顔を見せてくれないか?」



俺が黙りこくってると、刑事さんが色々と語ってくる。

周りの警察官も刑事さんの雰囲気と合わせて、徐々に立ち位置を近付けてきた。

・・・うん、逃げよう。



「ただ犯罪捜査に協力したかっただけなんです。懸賞金とかは別に目当てではなかったんですよ?ホントですからね。でわ、失礼します」



俺は立ち上がり、刑事さんの前で敬礼をする。そのままこっそり転移魔法を唱えて逃げた。





「なっ!・・・消えたっ!?馬鹿な!おい、すぐに署内を探せ!」



周りの警察官達は慌てて駆け出していった。

一人部屋に残された刑事は、唖然とした顔で先ほど敬礼をした若者らしき仮面の男が居た場所を見つめたまま椅子に座っていた。



「なんだったんだ?・・・クソッ!」






お家に到着!いや~いけると思ったんだけどな。やっぱギルドと警察は違うんだな。

あの感覚で行動したのが間違いだったか。反省。



「結局、骨折り損のってやつかぁ。ま、諦めて次の無双プランを考えよう。やれることは多いからな」



次は何をしようかな?地道にアクセサリーを宣伝して信頼と実績を積んでいくしかないのだろうか?

高卒の初任給で三万円と考えると、親に食わせてもらってるのと変わらない。



アレコレ悩んでウンウン唸ってる俺の横で、スマホがブルブル震えていた。




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