第5話 欲をかくのは人間だもの
翌日、売れたアクセサリーを梱包して送る。
まるでお姫様に送る献上品のように、ちょっと豪華な宝石箱を作って詰めておいた。
やり過ぎたかな?まぁいっか!初回サービスだ!
近くのコンビニで荷物を発送して仕事完了だ。あとは振り込まれるのを待つだけとなる。
今回の利益は三万円だ。ブレスレット一個だけど、ちゃんと素材も頑丈だし、軽く魔法で付与しておいたから高いということはない。
ただデザインがダサいだけだ。
ルンルン気分で帰ってから気付いた。
正確には、月のトータルを皮算用してから気付いた。
あれ?これ収入って定期的に入らなくね?売れるまで月給三万円ってことになるんじゃね?
世の中にはギャンブルのような稼ぎ方が幾つかある。株とか仮想通貨とかそのへん。
もちろんネット通販も安定するまではギャンブルみたいなものだと、今頃になって気付いてしまった。
「こんなことならルナガイアで大商会のおっちゃんに聞いておけばよかった・・・」
異世界では、武器防具や、食糧、回復薬等の消耗品等の関係で大商会の会長と協力関係があった。
あの時に、多少の商売の心得とか軌道に乗るまでのアレコレやら聞いておけば良かったと後悔した。
「こうしちゃいられない!新しいプランを考えなければ!」
そうして悩んで考えた末に、新たな無双プランを思い付いた。
そう、俺は元勇者だ。能力はハイスペック。
ならば、一つの商売に限定する必要はない。持てる力を一つずつ活かしていけばいいのだ。
「そうと決めれば、あとは行動あるのみだ」
またスマホを取り出して、ポチポチと弄り調べる。
よし、見つけた!
「さて、出かけるか」
家を出て向かったのは、近くにあるデパートだ。大手のチェーン店だが、デパートの敷地内にはほぼ必ずある店が目当ての場所だ。
そう、宝くじ売場である。
今回の目当ては宝くじではなく、その場でスクラッチを削って当たったかどうか判る、スクラッチチャレンジだ。
金額が大きくなると、銀行を経由してのお渡しになる。
それでは駄目だ。
だからこそのスクラッチ。
スクラッチならその場で渡してくれるからだ。
「まずは下準備がいるな。運命分岐魔法、『
ここで説明しよう。
運命分岐魔法とは、運に関するステータスを、上昇させたり下降させたり、違う未来に導くように軽く誘導する等の効果がある。
さっき使ったのは、運気が上がる『幸運上昇』だ。
対象は任意に選べ、元々の運の値で上昇値も異なる。
俺は高ステータスなので、豪運に早変わりだ。
失礼。天和、国士無双。W役満だ。とかも余裕でやれる。
「おばちゃん、スクラッチ十枚ちょうだい」
「はいよ。お兄ちゃん、当たるといいねぇ~」
おばちゃんはニコニコしながら、束になったスクラッチの紙をくれた。
それを受け取って、一つ一つ十円玉で削っていく。
よし、当たりだ!
十枚全てを削り終えて、おばちゃんに換金してもらう為にスクラッチを出した。
「あらあら、ハズレは渡さなくてもいいんよ?」
「いや、なんと全部当たったんだよ。全部換金でお願いします!いや~マジで全部当たるなんて驚いたっすよ」
「あれまぁ~。スゴいねお兄ちゃん。良かったねぇ」
おばちゃんの純粋に喜ぶ声が痛い。まるで悪いことをしているようだ。
実際にそうかもしれないけど。
おばちゃんは金額を計算すると、お金を渡してくれた。
その金額は、なんと144,200円。
内訳は、十万一枚、一万四枚、千円四枚、二百円一枚だった。
「金額が多いから、夜道には気を付けるんだよ~」
おばちゃん、それってどういう意味に捉えたらいいの?
おばちゃんに礼を言って、また家路につくのであった。
家に帰って部屋に戻ると、ちょっと疲れているのに気付いた。
やはり未成年というのがネックであった。
大胆に買ったものだが、ヒヤヒヤしながら換金したのだ。
やはり異世界帰りの雰囲気で、大人っぽく見えたのが良かったのだろうか。
おばちゃんが緩かったのも大きかったと思う。
「けど、そう何度も買えないよな。次は何しよっか?」
そうしてまたスマホをポチポチ弄りながら、新たな無双プランを見つけたのであった。
「よし、次はサードプランでいこう」
ちなみにファーストプランから、行き当たりばったりなのはご愛嬌である。
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