第4話 西沢とのランチタイム
翌朝、昼までにある程度のアクセサリーを作った。
ついでに女子ウケするか西沢に見てもらおう。
そして待ち合わせのカフェに三十分前に到着。店内をチラッと覗いて見る。
しかしまだ西沢は来ていないようで、店内にはそこそこの人がランチを楽しんでいた。
店の前で十五分程待ってると、道の向こう側から西沢がやってきた。
「おはよう木村くん。ごめんね、待たせちゃった?」
「いや、今来たとこだよ」
フフフ。こんなこともあろうかと脳内で既にシュミレーション済みさ!
回答も完璧だったようで、二人でカフェ的な店内へと入る。
二人席のテーブルに座ってお互いランチセットを頼んだ。
「私はAセットで」
「俺は日替わりランチでお願いします」
ランチがくるまでの沈黙が重い。
何を喋ればいいんだ?
そう思ってモヤモヤしていると、西沢から会話を振ってくれた。
「あの日カラオケに木村くん来るって聞いたの。だから行ったんだ。そしたら居ないからRainだけでも聞かなきゃって思って」
「そ、そうなんだ」
「でね、木村くんに聞きたいことがあったんだ」
「う、うん。何でも聞いてほしい。何が聞きたいの?」
ドキドキしながら西沢が話すのを待ってると、ランチが先にきてしまった。
とりあえず食べてから話そうってことで、ランチを二人とも黙々と食べた。
厳密には西沢は美味しいとか、これ甘いねとか言ってたので、俺だけ黙々だ。
「美味しかったね。で、話の続きなんだけど、木村くんって今は何してるの?」
これは俺の進路を聞いてるのだろうか?別に隠すことじゃないし、正直に話してしまおうか。
「今は商売を始めようとしてるよ。大学も就職もなんか違うかなって思ってさ」
西沢は少し驚いた顔をしていた。
そんなに意外だったろうか?俺、あんまり頭良くないんだぞ?大学も地元の中堅どころ落ちたからな?ちょっとショックだったりするけど。
落ちたのは黙っていよう。
「そうなんだぁ~意外とアグレッシブなんだね。商売って何をやるの?」
「ネット通販で自作のアクセサリーを売ろうと思ってさ。ほら、これなんだけどちょっと感想とか貰えると嬉しいかな」
アイテムボックスから、朝からせっせと作ったアクセサリーを数点出してテーブルに並べて見せる。
西沢はまたもや驚いたようで、幾つか手に取っては、わぁ~とかスゴい~とか言ってる。
錬金術で無双予定だから、簡単に量産できるんだけどね。
「あれ?今どこから出したの?それってマジックか何かかな?それよりこれ全部手作りなの?色々と特技があったんだね、スゴいね!」
「良かったら幾つかプレゼントするから使ってみてよ。んで、周りの感想というかレビューが聞きたい」
「え!?これ、貰ってもいいの?結構、いや、かなり高そうなんだけど?いくらぐらいするの?」
「いや、コストはそんなにかかってないんだよ。中学生から大学生くらいまでの女の子が狙いだからね。高くても一万円いかないぐらいだよ」
実際に本当に安く仕上げた。
最初に作った異世界デザインのものは高く設定して売りに出してるんだけど、多分あんまり売れないだろう。
母さんぐらいの年齢の人が多少評価するぐらいだろうし。
そこで考えを変えて、若い女の子向けに数千円~一万円ぐらいで大量に作って、安く売ることにしたんだ。
ちなみに材料は、アイテムボックスに大量にある異世界産の鉱物や魔物素材だから、コストは実質無料だ。
錬金術様々である。
「木村くんありがとう。大学の友達とかに見せてみるね。レビューはRainで送っておくね」
そうして西沢がアレコレ悩んで選んだのが、ネックレスとブレスレットとアンクレットと指輪。
結構持ってくんだね。
西沢は嬉しそうにしていたから、まぁ良かったとしよう。
俺も可愛い女の子と接点を持てたし、アクセサリーの評価も聞いてくれるしと良いこと尽くめだ。
「また次も会ってもらえるかな?今度は一緒にどこか遊びに行かない?」
「え?あ、あぁ。いいよ、また都合のいい日にでも行こうぜ」
「うん。絶対だよ?また連絡するね」
そうして最後はたわいもない話をして、西沢と別れた。
日も高く、街の治安も悪くないので、送られることなく彼女は帰っていった。
・・・俺も帰るか。
家に着くと、Rainの通知がきていた。マナーモードにするとホント気付かねぇなと思いながら見てみると、西沢からだった。
『これホントに嬉しい!』
『このデザイン可愛いよね』
『(指輪を嵌めた手の写真)』
西沢のテンションは高いらしく、写真に撮ってはバシバシ送ってきた。
ネックレスの写真の時に映った胸の谷間にドキッとしながら、俺はその画像をそっと保存した。
もしかして俺に気があるんだろうか?
両親と晩御飯を食べてから、部屋でゴロゴロしながらスマホをポチる。
なんか知らないメールがきてると思いながら開くと、アクセサリーが売れてた・・・なんと高いほうが。
「うおぉぉぉぉ!ひゃっほぉうー!」
部屋に響き渡る雄叫びをあげながら、喜びをダンスで表現する!
こんなときはモンキーダンスしかないだろ!
部屋で感謝のモンキーダンスを踊っていると、「うるさいぞ!安也!」と言って入ってきた親父が、俺を見てそっとドアを閉じやがった。解せぬ。
「なにはともあれ、最初の一歩だな。ここから俺の無双は始まるんだ!クククッ・・・!」
その日は嬉しさのあまり、追加で異世界デザインと、若い女の子向けデザインを大量に作って寝た。
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