第3話 デザインセンス
「やったぜ!プレゼン大成功!」
俺の作ったアクセサリーに満足した二人に、それぞれ欲しいものをあげた。
母さんにはネックレスとピアスとブレスレット。
親父にはアンクレット。普段はスーツで見えないのに、着けてなんになるんだと聞いた。
「可愛い息子からのプレゼントだからな。身に付けておきたいんだよ。言わせんな、恥ずかしい」
中年親父のデレはきついが、喜んでくれたなら幸いだ。
母さんもパート先や、ご近所さんに自慢するらしい。
「自慢じゃないわよ?宣伝よ、宣伝。可愛い息子が作ってくれたんだもの。母さん見せびらかしてくるわね~」
翌日の朝、二人はウキウキ気分で仕事に行った。
今日から俺も社会人だ。何もしなければニートだけど、元勇者の自宅警備員なら最高のセキュリティを誇るだろう。しないけど。
二人を見送り、部屋に戻ってスマホを弄ってると、いくつか通知がきていた。卒業式からずっとマナーモードにしてたので気付かなかったわ。
どうせいつもの奴からだろうと、連絡アプリのRain《レイン》を開いた。
『これから打ち上げいかね?』
『クラスの皆でカラオケ行くことになってんだけど』
『おーい』
こいつの名前は、
皆からはタクって呼ばれている。
Rainを読み進めていくと、どうやらクラスの皆で卒業パーティーみたいなもんをやってたらしい。
何それ、じゃあ学校出る前に教えろよと言いたい。
さらにいくつかある通知を読み進めていくと、気になるメッセージを見つけた。
『お前のRain、西沢に教えといたからなー』
「え?なんで西沢?」
どうやら流れとしては、クラスの皆は卒業しても連絡とりあおーね的な感じで、各々連絡先を交換してったらしい。
といっても全員がするわけじゃない。仲が良かったり、気になる相手と交換したりするやつだ。
だからこそ西沢が俺の連絡先を聞いてきたのか疑問になる。
西沢七海はクラスでも一番に可愛い女の子だ。
校内で一番とか全国レベルとかじゃないけど、それでもそこら辺の女子よりは断然可愛い。
ちなみに俺との接点は無い。三年生の間に何回か挨拶とか、クラスの連絡事で少し話した程度だ。
「もしかして・・・ラノベ的な展開か?惚れられてるとかか?いや、まさかな」
勇者時代でもモテなかった俺に春は全く来ていない。そら普通の顔だからな。ルナガイアの人々は美男美女ばかりだったよ。
「まぁそれはないとして、西沢からも連絡きてるのかな?お、これか?」
知らないアカウントだけど、『ナナミン』ってなってるから西沢だと思う。
意を決して恐る恐る開いてみた。
『こんにちは。西沢です』
『赤石くんから連絡先を聞きました』
『突然ごめんね?』
『卒業したあとだけど、仲良くしたいなーと思って』
『カラオケに来なかったから、もう会えないんだーて思うとね』
こ、これはどういう意味なんだ?
少し読み進めたままで固まった俺はもしかして春が来たのか?と思い読み進める。
『今度会わない?』
その一文に込められたパワーに圧倒された。
これは脈アリや。神様ありがとうございます。次のお賽銭期待しといて下さい。
今日やらなければならないことを忘れて返信することに全力を出した。
『じゃあ、お互い都合のあう時にでも』
この一文を返すのに、結局深夜まで悩んだ。
翌朝、目覚めてからすぐにスマホを確認する。
通知がきてる!
早速開いた俺は落胆した。
『既読無視すんなよ』
『西沢からなんか連絡きたか?』
『おーい』
アホのタクからだった。
なんもねぇわ!と送り返して、朝飯を食べてから部屋に戻ると、ピコーン!と通知音がなった。
慌ててスマホを開くと、『西沢と思った?残念、俺でしたw』とタクからだった。
スマホを投げたい衝動を抑えながら、そのままネット通販の仕方を学ぶためにアレコレ調べていく。
早く金を稼ぐ手段は確立しておかなくてはならないからな。
夕方になり、母さんからの声でご飯の時間だと気付く。
「ちょっと集中しすぎてたな。出品もできたし、あとは結果待ちかな?たくさん売れるといいなぁ~」
フフフ。現代ネット通販で錬金術無双か。悪くない。
俺はニマニマと顔をにやけさせながら、晩御飯を食べに行くのであった。
「母さん、アクセサリーの評価はどうだった?」
晩御飯を食べたあとに、母さんに今日の自慢の結果を聞いてみた。
親父のはどうせ見せてないだろうから聞かない。
「うーん、悪くはなかったわよ?ただ、デザインが古かったのかしら?若い子にはウケが良くなかったのよ」
「え!?そ、そうなんだ。へぇ~デザインが古いねぇ・・・」
しまった!よく考えてみたら、異世界のアクセサリーを参考にしたら駄目だ!
良くてもデザインは中世にありそうな古めかしい野暮ったいイメージだし。
あとは厨二病が好きそうな、髑髏とか竜を模したものしかない。
「お母さんは落ち着いていて好きなんだけれど、そういうのってターゲティング?とかして作ったりするものなんじゃないかしら?」
「おぉ!母さんはターゲティングとかわかるんだな。さすがは我が愛妻だよ」
「いやだわ、あなた。たまたまテレビで言ってた受け売りよ?」
この夫婦のことは置いといて、確かに女の子には古くさいイメージがあると思う。悪く言うならダサい。
よし、諦めずに参考にするデザインを探して作ってみるか。
「母さんありがとう。充分に参考になったよ」
そうして自分の部屋へと戻り、またスマホをポチポチと弄ってデザインを調べていった。
『ピコーン!』
うおっ!寝落ちしてたわ。
なんか通知音鳴った気がするけど、もしかしてタクか?
時間を見ると、もう真夜中。
「こんな非常識な時間に連絡してきやがって。・・・ったく」
Rainを開くと、ナナミンからだった。
「ちょうど起きようと思ってたんだよな!どれどれ、なんてきたかな?」
『夜遅くにごめんね?』
『昨日、木村くんから連絡きた時間に合わせたんだけど』
『大丈夫だった?』
もう開いているから全てに既読がついていく。やばば!へ、返信しなきゃ!
『全然大丈夫』
『俺はいつでもいいよ』
『そーなんだぁ』
『じゃあ明日のお昼に一緒にランチ行かない?』
この子ぐいぐいくるな。リア充だったっけ?もう昔のこと過ぎて忘れちまったよ。
ちなみに異世界では三年過ごしている。時間経過はなかったけど、クラスメイトの性格なんてさすがに覚えてない。
アホのタクは別だけど。
トントン拍子に話は進み、明日の昼に一緒にランチすることになった。
返信し過ぎると嫌われるかもだから、時間と場所だけ送っておこう。
アレコレやりとりをして、ちょうど二人の住む場所から近いカフェ的な店に決まった。
フフフ。明日が楽しみだ。
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