第2話 商売のネタを考える



「うっめぇぇえぇぇ!やっば!バーガーもポテトも最っ高だ!」



久しぶりのジャンクフードに心を癒しながら、異世界での食事がクソ不味かったのを思い出す。

あちらには、牛丼もバーガーも無い。甘いものはもっと無い。肉を焼いただけ、煮込んだだけ、あとは酒だけだ。

素材は日本より良かったと思う。焼いただけでも結構美味かったし。なんせモンスターの肉なんてこっちには無いからな。



「ちゃんと調理してやれば、向こうの肉はどんな味がするんだろうな?」



ちなみに俺は料理が出来ない。だから異世界では料理無双なんてものは出来なかったんだ。

けど、料理音痴の俺でも解るぐらいにモンスター肉は美味かったと思う。高ランクになればなるほど美味いと言われていたしな。



「さて、そろそろ先のことを考えようかな」





懐かしい気持ちを感じながら、バーガーのセットを食べ終えた。次にやることは、これからを考えることだ。



「とはいえ、ほぼ一択なんだよなぁ」



俺は大学に落ちていた。これから浪人生として生きるか、就職するかを親からは決めるように言われていた。


そして決められないまま、ズルズルと高校を卒業して、今に至るのであった。



「よし。決めたぞ。ネットで商売を始めよう!そうと決まれば早速帰るとしますか」



店を出て人通りのない路地へと入り、周りの目が無いことを確認したあとに転移魔法を使う。



「場所は家の前でいいか。『転移ワープ』」





高校からは二駅ほど離れた場所にある、閑静な住宅街。そこが俺の実家だ。周りは田舎でもなく、都会でもないそんなところ。


今は昼過ぎだから、まだ親父は帰ってきていないはず。母さんはパートから帰ってきてる頃かな?

ちなみに卒業式には両親が来ていないけど、そこは恥ずかしかったから来なくてもいいと伝えてあった。母さんは来たがっていたけど。



「久しぶりの我が家・・・あ、なんか泣けてきたかも」




転移した先には、懐かしい我が家があった。中流家庭らしい平凡な二階建ての一軒家。うちのジーサマの代から建てられたそうな。昭和の香りが少しするお家だ。



家の鍵を開けて、ドアノブを回して引きながら言う。



「ただいまー」


「あら、おかえりなさい。早かったわね。お昼はもう食べたの?」



久しぶりに見た母さんに涙が溢れ出す。俺がポロポロと泣いていると、母さんはオロオロとして見当違いなことを言い出した。



「やっぱり母さんも卒業式に行ったほうが良かったかな?安也も本当は来てほしかったのよね?ごめんね」


「いや、違うんだ。これは青春の汗だから。涙じゃないから。昼飯は食べたから大丈夫だよ」



変な誤魔化しをしてしまったが、母さんは納得したのか落ち着いたようだ。「卒業には涙よね」とか言っていたが、納得したのだから良しとしよう。

そのまま階段を上がって、自分の部屋に入り、ベッドでゴロンと横になりスマホを取り出す。





ポチポチと通販サイトをいくつか見て、商品の大体の値段やらを確認していく。そしてアイテムボックスの中身を確認してからニヤリと笑う。



「売るならアクセサリー系統か、金貨とか地金かな?それなら大量にあるし、なんなら錬金術でもいけるな」



ルナガイアで培った技術は、剣と魔法だけではない。

各種スキルや、錬金術による魔法薬作製、魔力による彫金なんかも出来るようになったのだ。

もちろんステータスも高いから、オリンピック選手なんて余裕で超えてるし、銃弾なんかも余裕で弾くぐらいタフだ。

核は放射能が怖いから無理。結界は張れるけど、怖くて試せないし、そんな状況になることもないだろう。



アイテムボックスから数種類のアクセサリーを取り出す。

出したアクセサリーを参考にして、100個ほど指輪やピアス等を作製していく。

そして母さんの夕飯の声に気付けば、外はすっかり夜になっていた。




「おかえり親父」


「ただいま息子」



アッサリとした挨拶だけど、家族仲はすこぶる良い。

親父は母さんと既に食卓に着いていた。何故か親父を見ても涙は無かった。男親はそんなもんだろう。



ご飯を食べ終わり、親父は少し真剣な顔をすると俺に問い掛けてきた。



「安也。高校卒業おめでとう。それでお前はこれからどうするか決めたのか?」



もう約束の期限だと言わんばかりに、親父は浪人するか就職するかを聞いてきた。

世間的に見れば、答えを出すのは遅いのかもしれないが、我が家の考え方は違う。

学歴重視でもないけど、変なところに就職するのも考えた上でなら良しとする。

良く言えばフリーダムだ。



だから今の俺の答えは親父が望んでいるものとは違うと思うけど、勝算はあるのだからちゃんと伝えようと思う。



「ある意味、就職だけど。ネットで販売する商売を考えているよ」


「何?どういうことだ?詳しく話なさい」



さっきまで作っていたアクセサリーを、アイテムボックスから何点か取り出してテーブルの上に並べみた。



「これらを作って、販売していこうと思うんだ。このアクセサリーは俺が作った。どう?売れると思う?」



親父は少し驚いたあと、母さんと一緒にアクセサリーを手に取り品定めしていく。



「ちょ、お前、今どこから出したんだ?手品か?まぁいい、母さんと見てみよう。ほら、母さんこれなんてどうだ?お前に似合うぞ?」


「あら、あなた。素敵なネックレスね。あなたにもこのピアスなんてどうかしら?とても似合うわぁ」


「いや、社会人としてピアス穴はちょっと・・・」




親父と母さんはまるで買い物にでも来ているかのように、キャッキャウフフとアクセサリーを身に付けたり、お互いを褒めたりしてイチャイチャしていた。

そうして我が家の夜は更けていった。




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