“アクトレス”フィスタ②

 闇ブローカーのマイルズのアジトのビルでは、エルが捕らえられマイルズの前に引き出されていた。


「父を……父を返してくださいっ!」


「会いたいか、父親に? くくっ……良いだろう」


「え?」


「おい、連れてこい」


 マイルズが命令すると、部屋の中にいた手下たちは顔を見合わせ、そして一人が部屋から出ていった。


「ただ、父親がお前のことが分かるかどうか……。」


「どういう意味です?」

 

 建物の中を大きな咆哮ほうこうがこだました。そして床が揺れるほどの足音がすると、ドアを突き破って上半身裸の男が入ってきた。先ほど部屋を出ていった部下が襟をつかまれている。


「う、うるぅぅあーーっ!」


 岩のような筋肉に包まれ、緑色に変色している皮膚の大男は、とても人間とは思えなかった。

 突然入ってきたそんな謎の生物に、エルは驚きのあまり声を出すことさえもを忘れていた。


「うるがぁああああっ!」


 連れてきた手下を軽々と壁に投げつけると、大男は他の手下にも手を出そうとする。


「まったく」


 マイルズが手に持っていたスイッチを押す。


「う、うぎゃああああああ!」


 大男は体を痙攣けいれんさせて倒れた。


「どうだ? 父親に再会した気分は?」


「え?」


「父親だよ父親、お前の目の前でのびている」


「え、うそ……そんな……。」


「新薬の実験台になってもらった。トレーニングなしでゴリラ並みの体になる薬だったんだが、頭もゴリラ並みになってしまってな」


「ひ、ひどい! 父を戻してください! お金は返しますから!」


「買い戻したくば、父親を売った倍の値段を出してもらう。そりゃそうだろう、こっちはお前の父親に投資したんだ」


「実験台にしたくせに!」


「世の中の為になる実験だ。どうだ? もし、お前の体を売るというのなら、父親を買い戻す額に届くが……。」


「でも、そんなことしたら……。」


「なぁに、同じように新薬の治験をやってくれるだけでいい。それが終われば、また親子仲良く暮らせるぞ?」


「……。」


 追い詰められた判断力の鈍っていたエルを、闇ブローカーのマイルズがいやらしい笑顔で見ていた。


「社長」

 そこへ別の手下が入ってきた。


「なんだ? 取引中だぞ」


「それが……体を売りたいという女が来ています。しかも……全身生身ナチュラルです」


「なに? それは、大切な商談になりそうだな。……通せ」


 うながされて入ってきたのはフィスタだった。


(フィスタさんっ? ……でも)


 様子がおかしかった。フィスタの顔は蒼白していた。さっきまであった自信も余裕もなくなっている。


「本当に生身ナチュラルなのか?」


「ええ、金属探知機には何も反応しませんでした。それに……」


 男はフィスタの体をまさぐった。


「ちょ、やめて……ください」


 フィスタは恐怖と羞恥で体をよじっていた。その豹変ひょうへんしている様子に、エルはもしかしたらこの人は別人なのかもしれないとさえ思った。


「へへ、


「その年齢で生身ナチュラルか……。武器も持たずに来たのか?」


「下で待ってる、連れの男は銃を持ってました」


「あの、武器というかお守りが……。」

 フィスタは申し訳なさそうに、ジャケットで隠れている背中から木の棒を取り出した。

 全員が弱々しいフィスタに対して警戒がなかった。そのため彼女が取り出したのが、木製の双節棍ヌンチャクということにも気づかなかった。


「ん?」


 次の瞬間、フィスタの体が鞭のようにしなり、ゴムのように伸び、空気を切り裂く音が部屋に響いた。

 そしてその後には部屋にいた男たちの顎が、側頭部が、手の先が、膝が砕けている光景があった。


「「「「~~~~~~ッ!」」」」


 叫ぶ男たち、双節棍ヌンチャクを振り終わったフィスタの顔は再び余裕と自信に満ちていた。


「……なッ! 貴様!?」

 突然のフィスタの変わりようにマイルズは驚愕きょうがくする。


 まだ動けそうな手下たちにダメ押しで攻撃を続けるフィスタ、次々に双節棍ヌンチャクと蹴りでとどめを刺していく。手下たちには武器を出す時間さえなかった。


「このアマっ」


 手下のひとりが何とか懐から拳銃を取り出した。

 立て続けに手下は発砲するがフィスタには当たらなかった。フィスタは発砲されるよりも0、1秒前に体をそらし、銃弾をかわしながら近づいていく。


「そ、ばっ!?」


 フィスタは突きつけられている銃身を握ると手首を捻って銃を奪い、それと同時に手下の股間に強烈な蹴りを入れた。

 手下は口から泡を吹いて倒れた。


「て、てめぇ!」

 マイルズは自分の机の引き出しを開ける。中には拳銃が入っていた。


「!?」


 フィスタはマイルズに駆け寄ると机を後ろ回し蹴りで蹴り飛ばす。マイルズは机と壁の間に挟まれ「ぐぅ!」と苦悶の声を上げる。

 フィスタは机に突っ伏しているマイルズから拳銃を取り上げる。


「フィスタ知ってる、これブルブル震える大人のおもちゃでしょ?」

 フィスタは銃口を天井に向けると銃を乱発した。

「おっさん、こんなのアナ〇に入れて遊んでるの? 即イキじゃんっ。こんなの使っちゃ、めっ」

 素早い手つきでフィスタは銃を解体した。まるで、空中で銃がほどけているようだった。


「く、くそっ、おい、グラント、寝てねぇでこいつを何とかしろ」

 マイルズが倒れているエルの父親を呼ぶ。


「う……ぐぁ…………ぐ?」

 目を覚ましたエルの父親は状況が呑み込めていないようだった。フィスタやマイルズへきょろきょろと目線を移動させる。


「何、この活字じゃなかったらマーベルに訴えられそうな奴?」

 フィスタが顔をしかめる。


「それが、わたしの父なんですっ」

 エルが言った。


「……良かったね、お母さん似で」


 マイルズは電流が流れるスイッチを掲げグラントに言う。

「おいっ、その女をぶちのめせ。でなきゃあきついお仕置きだぞ!」


 知能が低くなっているグラントだったが、マイルズの持つスイッチの意味は理解していた。

「う、がぁああああ!」

 グラントはフィスタに襲い掛かった。


「ちょ、ちょっとおとっつぁん! あたしたちはあんたを助けに来たんだよ!?」


 しかし、お構いなしにグラントはフィスタに拳を振り上げる。


「まったく!」


 グラントの大ぶりの左右のフックを繰り出しながら攻撃する。


「お父さんやめて!」

 エルは父親に呼びかけるが父には届いていないようだった。


 グラントのパンチを上体を振ってかわすフィスタ、その拳が壁に当たると穴が空いた。隣の部屋が見えるほどの威力だった。


「うへぇ、こんなの壊れちゃうよぉ!」


 エルがフィスタを変な目で見る。


「ごめん、やばくなると、おビッチになっちゃうんだ」


 フィスタはステップワークと上体そらしでパンチを避けると、打ち終わりにグラントの顎に右ストレートと左フックを入れた。しかし、改造手術を受けて筋肉が増強されているグラントには効果が薄いようだった。

(やっぱ無理か……。)

 フィスタはデトロイトスタイル※で構えると、フェイントを交えながらフィンガージャブ※でグラントを攻撃する。

(デトロイトスタイル:ボクシングの技法。半身で構え、右手は顎を守り、前に出ている左手は下げてL字型に曲げる。左手を攻撃のために重点的に使える)

(フィンガージャブ:ジークンドーの技法。牽制のためのジャブを打つ際に、使用する手を握らずに伸ばした指で攻撃する。目と喉を狙う)


「ぐっ、うぐぅっ」


 フィスタの攻撃に怯むグラントだが、決定打にならない。本来は目をえぐらなければならないが、フィスタにはエルの父親であるグラントに対してそれができなかった。

 グラントが目をつむり攻撃を嫌がると、フィスタはグラントの死角に入りこむ。そして、金的に前蹴りを叩きこんだ。


「ぐがぁ!?」


「フィスタさんやり過ぎです!」

 父が金的を蹴られ悶絶したため、エルが戸惑う。


「まだ兄弟が欲しいのっ?」


「そういうことじゃなくって!」


 再び股間に蹴りを入れようとするフィスタだが、腰が引けたグラントには間合いが遠くて届きそうにない。

 再びフィスタはフィンガージャブを繰り出すが、グラントはそれを大きな手で払いのけ、フィスタのジャケットの襟を掴んだ。


「おさわり禁止!」

 フィスタは体を捻じり、グラントのジャケットを掴む手首を小手返し※で抑えた。グラントの体勢がのけぞるように崩れる。

(小手返し:合気道の技法。相手の手首を内側に曲げて関節を決める技法)

 さらにフィスタは体をのけぞっているグラントの腕を取り、体をもとの体勢に戻そうとしているグラントの意識を利用して脇固め※に持ち込む。グラントの体が今度は前のめりになった。

(脇固め:柔道の技法。相手の片腕を自分の脇の間に通し、手首をつかみひねり上げ肩の関節を極める)

 そして脇固めを力技で振りほどこうしているグラントの力を利用し、フィスタはグラントに大外刈り※をかけた。倒れる瞬間、フィスタはグラントの後頭部が床に叩きつけられるよう、掌打のように顎に手を置いていた。

(※大外刈り:柔道の技法。相手のふくらはぎや足首の裏に自分の足をかけ、手を相手の首に回し押し倒す)

 しかし、それでもグラントの勢いは止まらなかった。フィスタは起き上がろうとするグラントの顔を幾度も蹴り飛ばす。


「ちょ、フィ、フィスタさん!」

 自分の父親の顔面を蹴り飛ばし続けるフィスタにエルが困惑する。


「筋肉モリモリマッチョマンの変態を相手にしてんだからこっちも余裕ないよ!」


 フィスタの言う通りだった、下段蹴りを顔面にさんざん入れているにもかかわらず、グラントには効いている様子がない。


「あっ」


 グラントはフィスタの足首を掴んでいた。


「へいっ旦那、踊り子に三回おさわりするととんでもないことになるんだぜっ?」


 グラントはフィスタの足首を掴むと立ち上がり、そしてフィスタを壁に叩きつけた。


「ぐぎゃ!」

 背中を打ち付けられたフィスタは奇妙な声を上げる。


 さらにグラントはフィスタを振り回して壁に叩きつける。側頭部が叩きつけられそうだったが、フィスタは腕でブロックして何とか防いだ。

 とどめとばかりにグラントはフィスタの右の足首を持ったままその体を真上に振り上げる。


「えい!」


 フィスタは高く持ち上げられた瞬間、自由な左足を180度以上に開脚するほどに開いた。

 そして天井を蹴って回転を加え、グラントに掴まれている右の足首を振りほどいた。


「ぐぁ?」

 手からフィスタの足首がすっぽ抜けて呆けるグラント。


 フィスタはグラントの背後に落下すると同時に、後ろから後三角締め※を仕掛けた。

(※後三角締め:柔道・柔術の技法。背後から相手の首と右腕を自分の右脚の裏で挟み込み、右足首を左脚でロックして相手の首を締め上げる)


「もうっ、お店には内緒だからね? ……ふん!」


 フィスタは右足首をロックしている左脚を両手でつかむと、体中の筋肉を使ってグラントの首を締めあげた。


「あ……くぉ……あ……。」

 グラントはフィスタを叩き落そうと、フィスタを背負ったまま体を壁に打ち付ける。だがフィスタは万力のように絡みついて離れない。フィスタも知っていた。これが最後のチャンスだと。

 みるみるグラントの顔色が紫に染まり、白目をむくとグラントは倒れた。


「……ふぅ~。こんだけの相手に傷つけずにやれるのはこれでせいいっぱいだよ」


「あ、ありがとうございます……。」


 マイルズは四つん這いで動き、部下が落とした銃を拾い、そしてフィスタに向かって銃を構えた。

「て、てめぇの、いったいどこが生身ナチュラルだってんだよぉ!」

 

 拳銃を取り出し発砲する。

 フィスタはスライディングで移動して銃弾を避け、マイルズの視界から消えつつ、卍蹴り※でマイルズの下腹部をしたたかに蹴った。

(卍蹴り:躰道たいどうの技法。両手を地面につきながらくり出す回し蹴り)


「おぐぉ!?」


 マイルズは悶絶し、その場で動けなくなっていた。


生身ナチュラルさ……。」


 フィスタはマイルズの前に立ち拳を突き出す。

 そして寸勁すんけい※でマイルズの胸を穿うがった。

(寸勁:中国拳法の技法。脱力した状態からの、足から腰、肩にかけての体の連動により、体の末端に大きな力を生み出す)


──ごぶぅ!?


 マイルズは後方に吹き飛び、窓ガラスを突き破った。


「……子供だって産んでる」

 拳を突き出したままフィスタは言った。


「ん、なんだ?」


 ガラスの割れる音がしたので、外で見張りをしていたマイルズの手下が建物を見上げた。


──あ


グワァシャーンッ!!


 五階から落ちてきたマイルズは車の上に落ち、車の天井がぺしゃんこになった。


「な……ボ、ボス!?」

 自分たちのボスが落ちてきたことに手下たちは動揺する。


 それが合図と受け取ったチャカは、素早く二丁の銃を腰から取り出し、そして狙いさえ定めず、次々とマイルズの手下を狙撃していった。


「ぐっ!」


「ぎゃあ!」


 チャカはでたらめに銃口を向けているようで、しかし正確に銃弾は手下に当たっていた。真後ろにいる敵にさえ、銃口だけを後ろに向けて狙撃する。

 銃が窓から落ちてきてから数秒で、建物の外にいる手下の大半はチャカが始末したが、残りが建物内に逃げて行った。


「チャカ!」

 窓からフィスタが顔を出す。


「やばいぞ、フィスタ! マイルズの手下たちがそっちに向かってる!」


「分かった、挟み撃ちになるんだね!」


「……追い詰められてんだよ」


「……う、うう」


「ん?」


 フィスタが振り向くと、グラントが抱きかかえられて意識を取り戻していた。


「父さん、わたしよっ、分かるっ?」


「あうあうあ……」


「と、父さん……。」

 

 父親は娘のことが分かっているのか曖昧あいまいな状態だった。


「感動の再会のところ申し訳ないけど、こっから逃げないと続きは天国でってことになっちゃうよ……。」


「あ、あ、エル……つかまり……なさい……。」


 父親はエルを背負うと次にフィスタを抱きかかえた。


「ちょ、おっさん何を……?」


 ふたりを抱えると、父親は窓の方に駆けだしていった。


「ま、まってまって……! きゃ~!」


 そして父親は窓から飛び降り、五階下の地面に着地した。薬物で強化された体のおかげで全員が無事だった。


「フィスタ! 無事か!?」


 お姫様抱っこされているフィスタは言った。

「あたしもこういうの意外とイケるじゃん?」


「……問題なさそうだな」


「さぁて、長居は無用だ。とっととトンズラしましょうか」

 フィスタは車に乗り込む。


「……このおっさん、大丈夫なのか?」

 チャカは車に一緒に車に乗りこんできた大男を心配する。


「あうあうあ~」

 一応返事をしたようだった。


「大丈夫そうだね」


 そしてフィスタはアクセル全開で車を出発させた。

 背後からマイルズの部下たちが狙撃してきたが、チャカが窓を開け、身を乗り出して反撃する。


「銃刀法違反もイケそう、車の弾丸が証拠になるのだわ」

 弾丸の嵐の中、フィスタは上機嫌に言った。彼女の横のサイドミラーが銃弾で砕けた。


「ん? おい、まずいぞフィスタ」

 チャカが空を見上げる。

 マイルズの放ったドローンが追ってきていた。


「おっとぉ、前にも来てんじゃん。囲まれてるよぉ~」


 ドローンは銃を搭載しており、チャカが体を乗り出そうとすると即座に発砲してきた。


「くそっ、こう囲まれちまったら、狙った瞬間別のところから攻撃が来るぞ」


「じゃあ一度に狙えれば大丈夫?」


「それができるなら苦労は……。」


「ぶんぶんぶぅう~んっ」

 そう言って、フィスタはハンドルをかくかくと切り始めた。


「マジかよ……」

 

「ダメならプランBがあるけど、あまりお勧めしないね……どうする?」


「んなもん最初からねぇくせに……仕方ねぇ、やぁれよ」

 チャカはドアに手をかける。


 フィスタはギアを上げアクセルを全開で踏むと、ハンドルを大きく切って車をその場でスピンさせた。

 チャカはドアを開けると、身を乗り出して銃を構えた。そして車のスピンに合わせて、車を囲んでいたドローンたちを次々に狙撃で撃ち落としていく。


「やった~、やるぅ、さすがドラゴンフライの異名は伊達じゃないね。あんなじゃあ役者不足ってもんだよ」


 しかし、フィスタの荒い運転についていけなかったチャカは車から身を乗り出したまま「えろえろえろ~」とげろを吐いた。


「……最後が締まんないだよ、いっつも」


「うぶっ……フィスタよぉ、どうせつまんねぇ内容って分かってはいるんが、念のために聞いておこう。プランBってのはどういうのだったんだ?」


「車が横回転だったのが縦回転になります」


「……死ぬじゃねぇか」


「だから言ったでしょ、お勧めしないって」


 朝日が昇る頃、フィスタは親子を街から離れた場所に降ろした。


「何か困ったことがあったらまた来なよ、報酬次第、あたしの気分次第だけどね」


「うううるるる……」

 グラントが穏やかな目で唸る。


「まぁ、その、操られてるからって悪かったね、色んなところ蹴ったりしたりして……。」


 グラントが股間を押さえ「うぅ」とうなった。


「大丈夫だよ、つぶれるほどに強くは蹴ってないから。それに、片キンの方がアレが強いっていうからさ」


「フィスタ」

 チャカが言った。


「足で触っただけだけどすっごい大きくてさ、あんなので中に出されたら四つ子ができるわ」

 フィスタが小声で言う。


「やめろ」


「ま、こんなお父ちゃんがそばにいれば、娘に悪い虫はつかないか。怪我の功名だね」


「ありがとうございます。このご恩は必ず……」


「余計なことは考えなくていいんだぜ、嬢ちゃん。これはフェアなビジネスだ、貸し借りはなしってことよ」

 チャカは車に乗り込んだ。


「あらかっこいい。あんたが男ならキスしてやるところだね」


「へへへっ、……男だよ?」


「じゃあね、お嬢ちゃん」

 フィスタも車に乗りこむ。


「あのっ」

 エルが言う。


「なんだい?」


「フィスタさん、わたしもあなたみたいに強くなれますか? あんな……機械みたいに精確に動いたり……。」


「やめときな、ぜったいに」


「……え?」


 そうして車は動き出した。


 バックミラーに映る親子の姿を見ながらチャカは言う。

か、良い目をしてるぜ」


「あたしは人間だよ」


「分かってるさ」


 ふたりの乗る車は、朝日に向かって走って行った。

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