第14話 退屈な人生
桜並木の遊歩道にて。
金髪
ちょうど良いことに、与太郎はホケ~っと別のとこを見ている。こうしている時の彼は、故知らの話を聞こえてない事をボクは知っている。
「ベッカーさんはさ、与太郎の
私が学校に来た理由にもなったこと。隠すのは苦手だ。こうして正面切った会話しかボクはできない。
「えぇ、両家公認です」
表情すら変えず、彼女は言う。
「ふーん、与太郎の事は好きなの?」
正直、許嫁どうこうは興味は無い。
ただ、知りたい事がある。
「はい、大好きです。ずっと前から」
「そう……」
でも、
「彼に、笑っていて欲しいんです」
その一言だけは、許せなかった。
「……そう。ねえ、リリーさん」
彼女は知らないのだろう。
与太郎がどんな気持ちで笑っているか。
「ボクは、君を認めない」
「あっ」
ふと、与太郎の方を見るといつかみたいに幻覚の世界に行きかけて居る事が分かった。だから、彼の顔を覗き込む。
「与太郎」
あの時みたいに、呼び止める。
「はっ」
気付いたのか、顔面蒼白になっている彼。
うつむいた彼を覗き込み、ボクはいつもみたいに生意気に笑いかける。
「まぁた、変な笑い方しそうになってる。無理するなよ」
こわばっていた彼の顔から力が抜けていく。
「……ああ、そうだな」
いつも通りの素っ気ない返事。
もう大丈夫かな?
気付けば、もう自宅の近くまで来てしまった。名残惜しいが仕方無い。
「ボクは家ここだから。じゃ~ね~」
ボクを退屈から出してくれた人へ、手を振った。
*
少し、前の話。
退屈だと思う。
「つまんない……」
幼い頃から、飽きっぽい性格だった様に思う。それは何でかというと、
「すごーい、翔ちゃん。もう中学校の範囲できるようになったんだ」
「簡単だった」
「まだ六歳なのにすごいねぇ」
大抵の事は、すぐに人並み以上に出来るようになってしまうから。でも、悪いことばかりじゃない。
「
「我が家の誇りよ~」
「しかも可愛い!!」
優しい両親と、
「明日から、小学校だけど。車に気をつけるのよ?」
「はーい」
「大丈夫、お姉ちゃんが手を繋いであげるから」
新しい世界が開けると、期待に満ちたのも
「あれ?」
気付いたら、というか。
友達ができなかった。
気付いたのは、小学校の卒業式。
「なんか、生意気でウザいんだよね」
まぁ、そうか。
何回かクラスが一緒だった人が言っていた。
「ヒドいこと平気で言うし……」
そう、かもしれない。
何回か、一緒に遊ぼうと声を掛けてくれた人が言っていた。
「ってかさ。
そう、なんだ……
友達だと思ってた人が、言っていた。
だから。
「おはよう!」
中学では無理して頑張った。
小学校の頃のボクを知る人のいない進学校へ行った。
まぁ、そのおかげで友達みたいな人は何人かできたんだけれど。
「はぁ……」
人と話すと、自分の中で何かがすり減っていくような気がした。
「何でだろ?」
何でも分かると思ってた。
なのに、この疑問だけは消えそうになかった。
無色透明な日々を積み重ねる。
学校が終わって、とぼとぼと一人で帰る。最初は友人たちと帰っていたけど、何だか息苦しくなってやめた。
「ただいま~」
心の安らげる場所は家だけ。
「おかえり~」
「お、帰ったか」
「翔ちゃーん♥」
玄関の扉を開けた瞬間。
スッと心が軽くなった気がした。
「
父の趣味は対戦格闘ゲームで、幼い頃から私も付き合わされてきた。ちなみに父が最弱で、ボクが一番強い。母と姉はいつも引き分けといった感じだ。
「今度はなに?」
父の座るソファに近づき、映像が流れているテレビに視線を移す。
「……は?」
美少女が、下着を振り回していた。
「な、に。これ?」
美少女が自信の下着を振り回し、画面の中を縦横無尽に駆け回る。
「新作『大乱戦☆スカッとブラジャーズ』だそうだ」
「なんて?」
お父さんが下ネタ言うのを初めて聞いた。
「『大乱戦☆スカッとブラジャーズ』だって」
「わぁ……」
このゲームPVを見たこの瞬間。
ボクは廃人ゲーマーになる道を歩み始めたのだ。
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