第3話 精力弁当と盛られた媚薬
美少女にお呼ばれした昼食。
俺はと言えば、急いで買ってきた菓子パンが一つ。
「「いただきます」」
教室にて、机を向かい合わせての食事。
女子との食事自体経験が無い。緊張するのは許して欲しい。
「菓子パン一つとは……誘ってるんですか?」
「モゴッ!!!」
早くも食い切ってしまった菓子パンを吹き出しそうになり、必死に
「なぜ……どうして」
一体どういう思考回路してんだよ……
「いや、あえて量を食べないことで口移しプレイをご所望なのかと」
「俺は雛鳥じゃないぞぉ」
昔、家の軒先にあったツバメの巣を思い出した。
「え、童貞じゃないんですか?(悲)」
どうして(以下略)。
「童貞だけど?(怒)」
なぜ俺も正直に答えちゃうんだろう……
「童貞なら雛鳥みたいなものでしょう?!」
はい、来ました。リリーさんのキレ芸!!
「それはそうだな」
あまりの勢いに納得しちゃったぜ☆。
「ところで、すごいお弁当だね」
目の前に広げられたリリーのお弁当。
手前からガーリックライス、牡蠣フライ、ニラの炒め物。
うん……
「精がつくモノを意識してみました」
「そっか~(思考放棄)」
こうもハッキリ言われちゃ反応に困るぜ!!
「食べますか?」
曇り無き
「いや、他人に恵んで貰うのは武士の恥なんで」
「おうちは整骨院とお聞きしましたが?」
「お、知らないの? 男の子はみんな心に
「あぁ、だから刀(意味深)を振り回すのがお好きなんですね!!」
なんかすごい下品な勘違いをされてる気がするが、多分気のせいだろう。なんとか、お弁当を恵んで貰うのは回避。もきゅもきゅと頬張っていく彼女をしばし見つめる。
「あ、お茶がありまして。カップがありますから、一杯どうです?」
食事に一息をつけたリリーが、鞄から水筒を取り出したずねてきた。まぁ、立て続けに断るのもなんか悪い気がするし……
「じゃ、一杯だけ」
スッと、どこからとも無く紙コップを出して水筒からお茶を注いでくれるリリー。
「へ~、キレイな色だね」
差し出された液体は透き通った赤色。ほのかに香ってくるのは果実特有の爽やかなモノ。
「どうぞ」
一息に飲み干すと
「おいしい」
「それは良かった!」
彼女の表情は変わらないが、何だか雰囲気が華やいだ気がした。
「材料にりんご、ザクロ、イチジクとか使ってまして」
「ほう、だから果実感が強かったのか」
ていうか、このお茶。もしかして自作か? だとしたらすごいな。リリーはもしかして料理とか好きなんだろうか。
「全部、古くは媚薬の原料とされてた果物なんですよ」
「カハッ!!」
変な
ブレねえな、この子。
「自分でバラしていくスタイルなんすね」
「誠実な人間でありたくて」
これまたキリッとした顔で言いなさる……
「あ、そうだ」
あまりにも色々と急展開が過ぎて忘れてた疑問を思い出す。
「リリーって、去年この学校にいたっけ?」
別に自分は顔が広いってワケじゃないが、とある事情であらかた同学年の人間は覚えてる。どうにもその中に、リリーが居た記憶は無かった。
「居ませんでしたよ。私は、父の仕事の都合で今年から編入してきたんです」
「そういうことか~」
名前、容姿からからして海外から来たことは明らか。一体どうやってこんなお嬢さんの父親と俺の父さんは意気投合したんだろう……
「ちなみに、どこかの国のハーフだったり?」
「純血のドイツですよ。えっと……あのう」
言い出しにくそうにするリリー。
俺はと言えば、彼女の押しの強さに『海外由来かぁ』と勝手に納得していた。
「ん?」
「こういった自己紹介、いちおう朝の
「……」
そん時、寝てたわ。
「ごめん、寝てた☆」
「私が言うのもアレですけど……授業はちゃんと受けないと」
「はぁぁい!!!!!!!」
正論言われるとつい出ちゃうんだよな、
「んお?」
ふと、ポッケに入れたスマホが震えたことに気づき、画面を見る。
「FA●ZAからセールのお知らせですか?」
「学校でエロサイトの通知受け取れるほど猛者ではないかな」
通知には、見慣れた人物の名前が表示されている。内容は『練習、付き合え』と簡素なモノ。
「『了解』っと」
返信は、早いに限るってもんだ。
*
同時刻。
場面は変わり、ある家の一室にて。
「ふふっ、相変わらず返信早いな」
スマホの画面を見ながら、どこか上機嫌な声が一つ。
「早く、アイツの来る時間にならないかな」
この部屋でたった一つ、カーテンの開いた窓から物憂げ外を見つめる人物がいた。
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