第2話 女性教師モノとNTR

とりあえず濡れたままというワケにもいかない。

制服から体操服へ着替え、授業に出席。


そろそろ昼休みになろうかというその頃。


与太郎よたろう、教科書三十ページ二行目から読みなさい」


「むにゃ……『女教師は裏垢女子?!~放課後のイケない授業~』……むにゃ」


「コイツ、ありそうなA●のタイトルを寝言で……?」


 思いっきり、居眠りをしていた。


「おい、起きろ! 尻波 与太郎しりは よたろう


 教師は持っていた教科書を丸め、俺をペシペシと叩く


「あでで」


 『スパンキングか~?』と言いそうになるのを必死に我慢して目を覚ます。


「おい、与太郎。新学期からいきなり体操服登校なんて先生を誘惑してるのか?」


「寝起きに聞く第一声じゃぇ」


 唐突なセクハラをかまして来るのは、担任の官野かんの先生。茶髪の長い髪を首の辺りでまとめた綺麗な女性。去年も俺がいたクラスの担任で、理知的な赤眼鏡が特徴的。まぁ、発言が全て台無しにしてるんだが……


「お前は、自分がスケベな身体をしてるのを自覚した方がいい」


「教師からそんな自覚うながされたの俺が初めてだと思うんですよ」


「ハジメテ(意味深)奪っちゃった……ってコト?!」


「最悪のちい●わ構文じゃないですか」


 くしくも官野先生の担当教科は現代文で、今日の内容は『構文について』。学び方がエキセントリック過ぎる。


「じー」


 あとなんか斜め後ろに座ってるベッカーさんからの視線が痛い。授業の終了を告げるチャイムに、助けられた気がした。


「さぁ、今日の分はここまでだ。中間テストはそこまで難しいの出さないから安心していいぞ~」


 先生の一言に、クラス中の俺の仲間バカが歓声を上げる。


「与太郎、ちょっといいか?」


 四時間目が終わり、次は昼休み。購買にでも行こうかと立ち上がった所を呼び止められる。


「何です?」


「まぁ、なんだ……その。学校は楽しいか?」


 優しげに目を細め、先生は聞いてくる。去年もこうして、俺を気にかけてくれていた。


「……はい、まぁ。ほどほどに」


「ふっ、相変わらずだな」


 そう言って苦笑させてしまうのを、毎回申し訳なく感じている。


「ところで……彼女は?」


「へ?」


 先生がうながした視線の先には、


「むー」

 

 どうやら不満を表してらっしゃるベッカーさんがお弁当を持って立っていた。


「もう! 尻波くん!! さっそく浮気ですか?! NTR寝取られですか?!! 脳が破壊されちゃいます~~~!!」


 ベッカーさん、賑やかな人だなぁ~(思考放棄)。何でそんなやかましいのに表情変わってないんだ?


「安心しなさいな、お嬢さん。私は、女もイケるぜ☆」


 割とトンデモない発言をする先生。


「トゥンク♥」


 あ、それ口で言うんですね。ベッカーさん。


「どうです? 脳破壊されました?」


「日常は破壊されたかな」


「ふふっ、はははは!」


 俺たちのアホなやりとりに、先生が爆笑。俺とベッカーさんは顔を見合わせる。


「なんか安心したよ、与太郎。存分に青春を謳歌おうかしなさい」


 そう言って彼女は立ち去っていった。


「な、何だったんだ?」


「ん……」


 先生の爆笑をいぶかしんでいたら、ベッカーさんに体操服のすそを弱々しくつかまれる。


「ど、どうしました?」


「私もよ、与太郎って呼んでいい……ですか?」


 彼女の表情は、相変わらず読み取る事はできない。だから少し逸らして、彼女の耳を見た時に気付く。


 赤くなっている。

 彼女の白い肌では、あまりにも目立ってしまう。


「い、いいよ?」


 なんか、こっちまで恥ずかしくなって変な返事になってしまう。


「じゃ、じゃあ私のことはと!」


 迫り来る彼女を直視できず、顔を逸らし思わず一歩引いてしまう。


「ダメ……ですか?」


 初めて、彼女の表情が動いた気がした。

 不安げで、物悲しいそう。


 そんな顔、させちゃダメだ。


「いいよ。り、リリー」


 俺の顔、赤くなっていないだろうか。

 でもそんな心配よりも、目の前の彼女の悲しそうな顔を見たくなかった。


「はい! 与太郎」


 明るくなったリリーの声で、なぜか俺は安堵あんどする。


「お昼、一緒に食べましょう」


 彼女に手を引かれて、進む先。

 窓から射し込む太陽の光が、俺には少しまぶしかった。

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