下ネタピエロは笑わせたい!!~ド下ネタヒロインズとコメディ全振りな日々~
春菊 甘藍
一章 笑えない君へ
第1話 新学期と恋人(?)
ふざけた名前以外は、ごく一般的な高校二年生。実家の整骨院を継ぐべく、部活もせず家の手伝いをしている親孝行者だ。名前通りとはいかず、尻派ではなく、胸派らしい。どうでもいいことだ。
「おう、与太郎。行く前にちょっと話がある」
学校に向かおうとした玄関で、めずらしく父親に呼び止められた。
「何? 父さん。学校行く前だから、手短に」
「今日、お前は彼女ができるぞ」
また、いつもの冗談だろうか。半年くらい前からずっと、こうやってニヤニヤしながら言ってくる。
「あっそ、まぁいいや。行って来ます」
「おう、いってら~」
今日はクラス替え初日。
いつもの通学路には、この一年で見慣れた学校の制服が見える。
「今日から二年か……」
初々しい様子で登校してるのは新入生だろうか。少しダボい制服に微笑ましくなる。
「んお?」
いつも通る橋の中腹まで来た時だった。ふと川の方に目をやると、何かがどんぶらこと流れてる。
「あれは……なっ!?」
流されていたのは段ボール箱。中には三毛色の……
「猫だ!!」
手荷物は放り投げ、橋の手すりによじ登る。
「とうっ!」
すぐさま箱まで到達するとビート板のように押して、
「大丈夫か?!」
橋の上から見た時、猫は動いてなかった。嫌な予感を胸に、のぞき込んだ箱の中には……
「……ぬいぐるみかよ!!」
叩き付けそうになり、思い直してそっと胸に抱いた。そのまま、登校を再開。
「ハァ」
周囲の視線が痛い。
まぁ、それもそうか。
びしょ濡れのぬいぐるみ持った男なんて、二度見せずにはいられない。ぬいぐるみは心の中で『ごめんよ』と詫びながら
しずくをまき散らしながら、学校に到着。そのまま教室に着き、何の感慨も無くドアを開けた。
「おはようございます」
一人の美少女がいた。
肩の辺りまである金髪。少しつり上がった目、その中の瞳は群青色で。引き結ばれた唇。高い身長がゆえか、スタイルも非常によろしい。
「
ビビって、
「ヶ、こ……」
急に彼女の声が小さくなる。
「え? こ??」
今思えば、ここで聞き返すべきではなかったと思う。
「子供は……何人欲しいですか?」
「何の話ィ?!」
人生で一番大きい声が出た。
「わぁ」
「何あれ」
クラスメイトから新学期始まって早々、好奇の目で見られてる。
「失礼。少し段階を飛ばしすぎましたね」
「少しどころじゃないんよ。もはや瞬間移動のレベルなんよ」
静かにしゃべる印象が強い人。表情だけが、凍り付いたように動かない。
言ってるコトだけが馬鹿みたいに過激だけどね!!
「
「惜しいな。婚約もまだ済ませてないぞ」
「だったらすればいいことでしょう?!」
「どこでキレてんだよ?!」
前言撤回、ちょっとやかましいです。
「私は、リリー・ベッカー。興味のある体位は『乱れ牡丹』です!」
「後半の情報は要らなかったかなぁ?!
何ともやかましく勢いに任せた自己紹介。だが、名乗られたなら名乗り返すほかあるまいて。
「ふんっ!」
表情は変わらない。
でも彼女は、手を差し出してきた。
「おうよ!」
なぜか交わされる固い握手。一瞬で彼女の意図をくんだ自分を褒めたい。教室は拍手で包まれてた。
「ところでやけに濡れてますが、もしかして性的に興奮なされてます?」
「自分で言うのも何だが、川に飛び込んだだけだよ」
「なるほど、川に飛び込みイカ臭さを落とそうとされたのですね」
「誤解が過ぎるぅ!!」
教室中の女子から、『コイツ、マジか』って目を向けられてるぅ。ダメっ、見ないでぇ!!
下ネタにまみれた話題を何とか方向転換させねば。というかこの子がなぜいきなりプロポーズまがいの事をしてきたのかが分からない。
「ベッカーさん、えっと……さっきの子供うんぬんとかって何ですか? ドッキリ?」
まぁ、新年度だ。ノリの良い人たち(陽キャ)でそういう事もするのかもしれない。
「ひどい! 私の気持ちをそんな風に!」
彼女の表情は変わらない。
なんか声だけそれっぽく悲しげに聞こえる。
「わー泣かした」
「さいてー」
女子からの視線が痛い!!
「与太郎、それはアウトだ」
「見損なったぞ、与太郎」
男連中からも批判の嵐!!
「あうあうあうあ、ごめん。ごめんて! 疑って悪かったよぉ」
「では、私の気持ちは受け取ってくれますか?」
急に突きつけられるは、究極の選択。
彼女の顔をといえば、相変わらず無表情。
「
「信じろ、与太郎」
「断ったら殺す」
男たちの友情に混じって、女子からは確かな殺意のこもったお言葉。
「う、ウス。
少し、彼女の蒼い目を見開いたのが分かった。
よ、喜んでる?
「あ……」
そして、思い当たることが一つ。
「あのぅ、ベッカーさん。もしかして、俺の父親の
「はい。半年前、居酒屋で与太郎くんのお父様と私の父が意気投合いたしまして。私たち、
「父さぁぁ~~~~ん!!!!!」
人生で出た一番大きな声は、早くも更新された……
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