(幕間)
無限の奈落
もがいても叫んでも何も起こらない闇の中で、イルマラートは諦念のまどろみの中にいた。
自分が手にかけた異形の最期にうなされる。
あれは勇者だった。自分の前にここを訪れ、〈魔王〉を討ち取った勇者。その〈魔王〉もおそらく、かつての勇者の成れの果てだ。
いったいいつから続いているのか。だれが、なんのために始めたのか。そもそも、これに意味はあるのか? 星が巡るように、天地の始まりから連綿とくりかえされる無限の循環? あるいは、因果応報の悪意ある具現──?
あの異形のうつろに濁った目。あとから思えば、あれは正気を失った者の目だった。
──あんなふうに終わりたくはない。
自分が自分でなくなるのは、死よりも恐ろしい。
自死を考えて舌を噛んでみたが、傷はまたたくまに癒えた。飢えも渇きもない。次の勇者が訪れるまで、死ぬことも許されない永遠の虚無。
いまや、扉が開かれることだけが唯一の希望だった。
願わくは、自分の心が壊れるよりも先に──。
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