登場人物の設定について
どのような人物を登場させるのかということを考えるのは意外と難しい。
主要キャラクターとして登場させる場合はそれなりの個性を出さなければならないからだ。
ファンタジーであればどんな能力を持っているのか、またどのような成長をさせるのかといった、先の展開の関わり方まで事前にある程度考えていく必要がある。
これまでの経験で、登場人物を先にある程度決めておかなければ後から考えるのが億劫になってしまい、続きを書くのをやめてしまうことにつながるということを知った。
登場人物を最初に考えない場合、頭の中のストーリーを具現化するために必要になる人物をその場その場で考えることになることが多い。
このとき、とりあえずその場面に誰かを登場させる必要が発生したという理由から、その場しのぎで、設定することは後回しでキャラクターの境遇や人格の作り込みをせずに配置してしまう。
その一連の行為は、実際のところその人物に明確なイメージを持って登場させたわけではないことに書いている間は気が付かないのである。
そのようなキャラクターは全て個性を持たない案山子に等しい。
頭の中で案山子を並べながら、言わせたいセリフや言わせているだけだ。
それだと、先の展開を考えるときに、思考される世界には案山子しか住んでいないので、どのような展開にしようかというアイデアも思い浮かばない。
何も登場人物の設定を考えずに物語を進める場合、大体5人登場させたところで物語を進めるのが難しくなるように感じる。
使い捨ての設定になるとしても、喋らせるモブについてはある程度考えておかなければ、物語を動かしづらい。
今は黒に染まるというタイトルの物語の登場人物の設定を考えている段階だが、一人の人物を考えるのも楽ではなかった。
例えば、悪鬼のシュウテンだが、彼は鬼族の忌み子として幽閉され、抜け出したところを追われているという立場だが、それだけでは設定として不足している部分が多い。
鬼族という属性が明確に定まっていないこともキャラクター性に不安定さを与えている。
鬼族はどんな特徴を持った種族で、どのような風習、どのような思想を持つのが一般的かということを決めていないためだろう。
集団としての鬼族とはどのようなものなのか。それを決めずに、物語に組み込むことはできない。
これはシュウテンのバックボーンを決めるために必要な要素だ。
アイデンティティというのは周囲との関わりの中で確立されるものだ。
シュウテンはどのような環境で育ったのか。その解像度を高めれば、シュウテンの個性が作者にとって理解しやすいものになるだろう。
ただ、全ての鬼族に設定を与えるのは不可能であるから、集団としての鬼族の設定が必要となるのだ。
その上で、鬼族としてシュウテンとのかかわりが深い人物や、モブ鬼族の代表例として登場させる人物など、10人から20人程度の鬼族を設定するのが望ましい。
物語が進むにつれてネームドキャラクターというのは増えていくものだが、そうではないキャラクターの描写を何もしないわけにはいかない。
たとえ鬼族編の間しか登場させる予定のない人物であっても、鬼族編の間は動かさなければならない人物である。
それならば、使い捨ての設定であるとしてもキャラクター造形を明確にしておくことで書きやすさを向上させることができるはずだ。
人間の関係というのは両親が必ず父と母の2人存在し、祖父母が4人、あるいは叔父か叔母がいて、それから兄弟がいるか、あるいはいないかといったのが基本的な構成だろう。
少なくとも6人、多くて10人前後の人物との関りが必ず存在するのである。
そこから友人や師といった第三者との関りがあり、他にも関りがない周囲の人間がいる。
10人に加えて友人や師が4人前後とすれば残り6人程度がモブの役割だろうか。
いずれにせよ20人程度は少なくとも考えておかなければならないのである。
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