誰にでも挨拶をする朝陽君と班決め公開告白
元々素材は悪くないと思っている。
ただモテたいと思わなかったので変に思われない程度のファッションだっただけ。
服は安物に拘ったし、美容室なんてあんまり行かない。
シャンプーなどもお母さんと同じものを使っていた。
当時の私はどうしてこんなに無頓着だったのだろうか。
多少なりとも男子にはモテていた自覚もあった。
お母さん譲りの容姿のおかげもあって無頓着でも見栄えはよかったし。
だからこそ、予想していなかった。
垢ぬけた私が、こんなにモテるなんて……。
「好きです!付き合ってください!」
「……ごめんなさい、私好きな人がいるので」
今週何回目の告白だろうか。
階段の踊り場から逃げるように教室へ向かう。
廊下を歩くだけで男子の視線を受ける。
億劫とした気持ちで教室へ。
「よぅ氷野。また告白か?」
「日向君……。おはよう」
「おう、おはようさん。朝から大変だな~」
廊下側の一番前の席に座っている日向くん。
だれにでも挨拶をするし、多少の会話はしてくれる。
このときばかりは緊張で少しばかり無碍な態度になってしまう。
「昨日は館林に告られたんだろ~?」
「去年同じクラスだったときはまったく眼中になかったというのにね」
「ふぅん。誰が氷野を変えたんだろうな~」
頬肘を付き、笑って話す。
そんな日向君を見て、なんとも言えない表情を浮かべているであろう私。
(日向君のせいだよぉぉ!)
内心は乱れまくっていた。
続々と登校してくるクラスメイト。
みんな日向君に挨拶をしていく。
軽く手を振って返す日向君。
「やっほ!穂乃果も朝陽君もおっは~!」
「おはようさん」
「おはよう、彩」
私の背後から抱き着き、覗き込んでくる。
私の相談相手で一番の親友の菊池彩。
いつもニヤニヤしながら抱き着いてくるのはやめてほしい。
「なになに~?告白~?」
「ち、違うよっ!」
「そうそう、朝から告白されてたんだ」
「な…!ち、違うよ!告白なんてしてないよ!」
「「ぷっ……」」
二人はなんでわらっているのだろうか。
まったく理解できないが、恥ずかしいからいたずらだったらやめてほしい……。
「なんで二人して笑うのよ!」
「穂乃果、かわいいよ~」
「同感だ」
「もぉぉ!」
朝の一幕。
ちょっとだけ幸福感を味わえる私はちょろいのだろうか?
:
:
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↓
半年くらいが経った。
私の恋愛は未だに進展はない……。
「なんで意識してもらえないのかな……」
「うーん、さすがにわかんないな~」
放課後、彩とカフェへ来ていた。
理由は近々話し合いになる修学旅行の班決めの件で。
色々なイベントがあったが、進展したことといえば苗字呼びから名前呼びになったくらい。
しかも、特に何でもない日に朝陽君から言われたことだった。
なんでも、日向って呼ばれ慣れてないらしい。
「……修学旅行でいっそ告白してみようかな」
「じゃあその前に一緒の班にならないとね~」
「朝陽君に彩から声かけてみてくれない?」
「自分でいいなよ……」
無理無理!
だって、好きだから一緒の班になりたいって言っているようなものじゃん!
修学旅行の班決めは4~6人。
男女混合とは決まっておらず、同性だけでも問題ない。
だからこそ、異性と班を組むときに女子から声を掛けるという行為はいわば告白に近い。
だから今日は相談をしに彩にパンケーキを奢っているのだ。
「どうせ、いつもどおり男子に囲まれて身動き取れなくなるんだから、先に掛けときなよ~」
「うぅ……。緊張で無理だよぉ……」
「じゃあ啓介にでも声かけたら?あの二人絶対一緒だから」
「そうなの?」
「うん、この前班決めの話しているの聞こえてきたかr……。あぁ~……」
「え、なになに?!なんで悟ったような声出たの?!」
彩にドンマイって声を掛けられた。
マジで何なのよ!!
「男子6人で組むって言ってたような気がする……」
「え……」
「まぁダメ元で声かけてみなよ。急がないと本当に班決まっちゃうよ?」
「あ、彩もついてきてよ……」
「一緒の班になるのはいいけど、声かけるときは一人で行きなよ~」
結局この日は彩に言いくるめられて、明日聞いてみることになった。
家に帰って、気持ちの準備……なんてできるわけもなく。
気づいたら登校していた。
そして、腹が立つことに少し歩けば男子から班は決まってるのか、同じ班にならないかと声を掛けられる。
下心隠してからせめて聞いてきてほしい。
ようやく到着した教室の前。
何度席替えしてもここが特等席と言わんばかりに廊下側の一番前の席になってしまう呪いを受けている朝陽君がいるはず。
一度深呼吸をしてから扉を開ける。
開けた途端、朝陽君と見慣れない女子が話していた。
いつも通りの挨拶かと思ったが様子が違うことに気づいた。
「あ、朝陽君!班決まってるの?」
「んあ~。啓介と組むのは決まってるけど、他は知らないから啓介に聞いてみて」
「そ、そっか……。わかった、聞いてみるね?」
「おう、わるいな~」
恐らく去年朝陽君と同じクラスだった子だと思う。
目の前で一種の公開告白の現場に遭遇してしまった。
声をかけた女子は泣きそうな表情になりながら私の横を素通りする。
「お、おはよう、朝陽君」
「おはようさん。なんか元気ねぇけど?……あぁ、朝から班決めの誘いばっかで疲れたか~?」
「そんなところ。朝陽君も班決め誘われてるね~」
すっごく声を掛けづらい。
あの女子みたいになるんじゃないかって思うと声が出ない。
正直逃げ出したい。
「ちらっと聞こえたけど班ってどうなってるの?」
「啓介に一任してるわ。なんでも男たちだけで気を遣わないで遊びたいらしい」
「そうなんだ?私も……朝陽君と組みたかったな~って思ったんだ~」
「そうなのか?あ、わかった男避けだな!そう考えれば俺と啓介だったら角が立たないもんな~」
誰とでも仲のいい啓介くんは親しみやすい。
困ったときは朝陽君に相談すればなんとかなるという風潮まで出来上がっているほど二人への信頼感は学年全体で高い。
相談というていで告白をする女子もいるが、気づいているのかいないのか、全部失敗に終わっているらしい。
女子の中の評価では朝陽君はかなり高い。
「でも、どうせなら同性で組めばいいんじゃないか?」
「それがほとんどが決まっちゃってるっぽいのよね~」
もちろん嘘だ。
ほとんどの女子は誘われ待ちである。
好意のある男子から誘われるのを待って、決まっちゃったら残ったメンバーで組むのだろう。
「ふぅん。まぁ啓介に聞いてみてくれ。俺の一存では決めらんねぇしな」
「まぁそうだよね~。わかった聞いてみるね~」
クラスメイトからの視線を感じる。
朝陽君の気遣いもあって告白っぽくはならなかった。
知ってて言ったのか、はたまた、本当になにも知らないのか。
私は一旦席に戻って気を持ち直す。
啓介君を説得するほうへ考えを変える。
すると、前に座っていた女子に声を掛けられた。
「氷野ちゃんでも失敗するんだね」
「朝陽君はガード堅いからね……」
「実質告白してたようなものだもんね~」
「……やっぱりそう思われる?」
「そう思うよ~。そういう風習だもん」
「振られちゃったかな~」
「たぶん、日向君は女子から誘う意味をわかってないから大丈夫だと思うよ?」
だといいんだけど……。
とにかく啓介君が登校したら聞いてみないとね。
男子で組むっぽいからダメっぽかったです……。
「ど、どんまい……」
女子からの視線が暖かい……。
彩の励ましが辛い……。
結局余りものになった私と彩は知らない男子2人と組むことになってしまった。
「はぁぁ……」
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そして成人後の同窓会まで拗らせたんですね。
一応、本編で触れている高校時代のお話。
次は朝陽視点を1話ほど。
ifルートの話とか書きたいよね~~
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