「いつも妻と娘がお世話になってます」
穂乃果と楓が家に帰ってきた。
最初の一週間は誰かしらが穂乃果の手伝い兼新生児を抱っこしに来たりしていた。
俺はあの後、仕事があるからと渋々出張先に戻った。
かなり不本意だが、仕事を投げ捨てる訳にも行かない。
どれだけ急いで仕事を終わらせようにも、3日間という期間は変わりはしなかった。
結局、出張を終え、家で穂乃果と楓の帰りを待つしか出来なかった。
「楓〜、オムツ交換するぞ〜」
そして、週末のお昼過ぎ。
色々と新生児のお世話に慣れてきた俺は、穂乃果の邪魔にならない程度にパパを実行した。
オムツやお風呂、ミルクを飲ませる等は出来る。
だけど、なんで泣いているのかがたまに分からない。
それと男の俺は母乳は出せないから仕方ないよね。
夜泣きに気付いても先に穂乃果が起きてるし、母性本能って凄いを通り越して驚愕しているくらいだ。
「よし。眠らせながら散歩行くか〜」
「「わふっ!」」
「もうちょっと待って〜!」
お昼の片付けを行い、今は化粧をしている穂乃果。
最近のマイブームで、昼食後に愛犬のノアとフラン、娘の楓を寝かし付けるための散歩をするのにハマっているらしい。
家でのんびりしていると太りそう〜って言ってたしな。
妊娠後のお腹を早々に引き締めたいとも言っていた。
「よしっ!ノア〜、フラン〜、リードつけていくよ!」
普段は抱っこ紐で楓、両手に愛犬のフル装備。
今日は俺が楓を抱っこし、愛犬は穂乃果がリードするらしい。
家を出て、田舎道を歩く。
毎日通退勤の時に通っている道でも、歩きと車じゃ全然違う。
やけに遠く感じる。
「ふ〜ん♪ふふ〜ん♪ふんっ♪」
今にもスキップしそうな穂乃果。
主の機嫌の良さに歩くスピードが早くなる愛犬達。
時より道端に寄って臭いを嗅いだり、用を足したり。
フンを片付ける時だけ、しかめっ面になりながら回収する穂乃果を俺は笑ってしまった。
「笑うなっ!」
「いや、だって今にもスキップしそうだったのにいきなりしかめっ面になるんだもの。笑ったわ〜」
「だって、臭いものは臭いんだよ!ほらっ!」
「ちょっ!くさっ!はよ、密封せい!」
消臭袋に入った糞を俺に近づけるな!
臭すぎてびっくりしたわ!
俺らが遊んでいる間に愛犬達は自分の糞があった所の臭いを嗅いでいる。
「よし、コンビニまでいこっ!」
「結構遠くない?」
「コンビニの近くに最近ドッグランが出来たから遊ばせてるんだ〜」
「そーなんだ?」
「そーなの!しかも、楓ね〜、人気者なの!」
この近場にドッグランなんて出来てたんだな。
近所の人達が集まりそうだし、それなりに通ってるなら顔見知りも多いだろうしな。
「休憩がてら、遊ばせてると丁度いいんだ〜」
「まぁ、地味に遠いから俺ら的には疲れるしね」
「そうそう!ノアとフランは元気すぎて大変なんだよ〜」
歩きながら話しているが故に、歩くスピードも若干ゆっくりになっている。
おかげでで普段とペースが違う愛犬たちは急かすように先行し、たまに穂乃果が引っ張られている。
そんなこんなで歩くこと30分くらい。
目的地であるドッグランの近くのコンビニへ到着。
穂乃果と愛犬二匹は先にドッグランへ行くらしい。
俺は飲み物を買いにコンビニへ。
最近最寄りのコンビニということもあり、バイトの女子大生と顔見知りであるが故に、ビックリされた。
「え、赤ちゃん?!ってことは結婚してたんですか?!」
「そーっすよ。娘の楓です。寝てますけど」
俺と穂乃果の分の飲み物と少し小腹が空いたから菓子パンを一つ、レジに置く。
今日は休日のお昼過ぎということもあり、多少忙しそうだが、バイトの子が寝ている楓を覗き込んでくる。
「抱っこしたかった〜」
「機会があったら抱っこさせますよ」
そう言って、レジに戻ったバイトの子が仕事を始める。
「そういえば、たまに楓ちゃんを抱っこしてくる美人な人が来てましたね〜。奥さん、綺麗ですね!レジ袋入ります?」
「いる。女子大生から見ても綺麗だろ?」
「まだ女子高生って言われたら信じちゃいますよ〜。レジ袋代含めて582円です〜」
「バーコードで。娘も同じくらい美人に育ってくれればいいけどな」
「はい、完了です!こちら商品です〜。大丈夫ですよ!お兄さんもイケメンですから!」
「心にも無いことを。サンキューな」
「本当に思ってますよ〜!この後は?」
「近くにあるドッグランに。ありがとな〜」
「いえいえ〜、またのお越しをお待ちしてます〜」
世間話も客が並んできたので早々に切り上げてコンビニを出る。
信号跨いだ向こう側にあるので、ドッグランはすぐ目の前である。
近づけば犬の吠える声が聞こえてくる。
中にはゆっくり休むスペースがあり、そこに穂乃果とその他利用客が座って談笑していた。
「あ、朝陽くん!こっちこっち〜!」
「あら〜!話には聞いていたけど穂乃果ちゃんの旦那さんイケメンだこと!」
「うちの旦那と交換して欲しいわ〜」
「えへへ〜。自慢の夫ですから!」
すっごい場違い感が凄い。
穂乃果に楓を渡して空いていた隣の席に座る。
穂乃果と利用客達は俺の話で盛り上がっていた。
「いつも妻と娘がお世話になってます」
「寧ろ、私たちの方が癒されてるからお世話になってるほうよ〜」
「そうそう!楓ちゃん抱っこさせてもらった時は癒されたわ〜」
「新生児を抱っこしたいって人は多いらしいよ?」
「そうなんですね。でも、気持ち分かるかもしれないっすね」
それから軽く話が弾み、途中で買ってきたパンを食べた。
その後、女性の井戸端会議に変わってきたので、俺はドッグランの広場の方へ。
中ではあの場から逃げてきたであろう男の飼い主達が犬と戯れていた。
「逃げてこれたかい?」
「なんとか……」
「話すと長いからね〜」
俺の存在に気づいた飼い主たちは近寄ってきて話を始める。
男どもみんな、あの場に居られるわけもないよな〜。
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