『ワンッ!ワンッ!』

こちらは一応2話目です。

前の話を確認してからお読みください。


~~~~~~~~~~~~~~


家に帰ってきてすぐ、2匹をゲージ籠から出してあげる。

見慣れない家に興味を示す黒毛の仔に対し、灰色っぽい青毛の仔は興味なさげに俺の足元へすり寄ってきた。


俺は青毛の仔を抱っこし、リビングへ。

穂乃果は黒毛の仔を見張りながら後を追いかける。


「粗相だけは気をつけろよ~」


「大丈夫!掃除する準備は万端だよ!」


「匂い残ってそこがトイレだと思われないようにな~」


「は~い!」


まだ掌で持ち上げられる大きさなので、空いている右手で餌などが入った袋をリビングへ運ぶ。


「穂乃果、ゲージ組み立てるから2匹見てて?」


「わかった!おいで!」


青毛の仔を穂乃果に預け、車に積んである大きめの段ボールを家に運び、組み立てる。

リビングで飼うことになってるので、既に場所は確保済み。

想定より大きいゲージだが、置けなくはない。


組み立てに1時間くらいかかったが、なんとか完成した。


「朝陽君!名前、名前なにがいい?!」


「ガチ〇ピンとム〇ク」


「あ?」


「初めてそんな怖い穂乃果の声聞いてわ……。冗談だよ、冗談」


「もぉ!冗談はよしてよ~」


「あははは……」


名前に関してはしっかりしないといけないらしい。

身に染みて今体験したわ……。


「うーん、黒毛と青毛でしょ?ブラック~ブル~……。さっぱり思いつかねぇわ……」


なんだよ、犬っぽい名前って……。

ちょっとネットで調べよ。


スマホで犬っぽい名前を調べる。


うーん、厨二っぽいな……。


「できれば朝陽君に決めてほしいな~」


「青毛なんだよな~……」


灰色っぽいが、一応青毛だ。

うーん、一応案は出してみるか。


「ブラックタンの毛色のほうが毛色から取ってノワール。だけど、呼びづらいし犬も覚えにくいから〝ノア〟」


「ノアくん!」


「まぁ安直だが、ブルータンの毛色のほうはちょっと違うが兄弟と性格も真逆っぽいし黒と対の白からブランシュ。以下、同じ理由で〝フラン〟とかどうだ?」


「フランくん!」


犬って母音があ・う・おだと覚えやすいらしい。

あとは短ければより良いっぽい。


穂乃果は気に入ってくれたようで、すでにお互いを交互に呼びながら満足気にしている。

俺が名前を決めて落ち着いていると胡坐している足の上に黒い毛のノアがやってきた。


「おお、どうしたノアよ」


なんかファンタジー系に出てくる某王様感を醸し出してしまった。

ノアを抱き上げると顔を寄せてきて、頬を舐める。


「おお、気に入ったか?」


言葉をわかっているのか、次は唇を舐めてきた。


「朝陽君ばっかりずるい……」


気づけば膝の上にはフランが寝ころんでいた。


「人にも動物にもモテるなんて、なんて罪な男なんだ……」


「むむむっ……!」


なぜか身の危険を感じ、二匹をゲージの中に入れる。

すると、背中に穂乃果が抱き着いてきた。


「フランくん……!」


『ワンッ!』


「フランくん、手強いわ……」


俺越しに穂乃果とふらんの視線がぶつかり合う。

ノアはゲージから出たそうにしていた。


「と、こんな癒されてる場合でもないんだよ!」


今日の穂乃果の中でのメインはペットショップだが、今日のメインの出来事は14時からである。

時刻は既に13時。


色々と準備しなければならない時間だ。


「ピザとかは啓介くんが受け取ってきてくれるんだよね?」


「ああ、お金だけ払っといたからあとは受け取ってきてくれってお願いしてるわ」


「じゃあ、なんかツマミ作っとくね!朝陽君は2匹の面倒みてて?」


「了解」


穂乃果がキッチンで準備をしつつ、チラっとこちらに視線を向けるのは言わずと知れている。

俺は2匹の住処の準備をしつつ、逃げ出さないようにしていた。


「あー、ノア!脱走するな!」


『ワン!』


「吠えてもダメ!」


寝床を2匹に教えてすぐに構ってもらえないと察したのかフランは寝に付いた。

ノアは抵抗するように、脱走を試みる。


「餌あげていいのか?」


「うん、ふやかしてね!」


「わかってる」


まだ子犬なので、ドッグフードのままあげてはいけないらしい。

一度お湯でふやかしてから食べさせないといけないらしい。


「ほら、お前ら、ご飯だぞ!」


2匹分準備すると匂いにつられて真っ先にやってきたフラン。

お前、性格はおっとりなのに結構がめついな?


遅れてノアもやってきて2匹が並んだ。


「お座り!」


『『……』』


「おすわり!」


まぁまだ教えてないからできないよな……。

すこしずつ教えていこうと思う。


というか、こういうのは穂乃果のほうが絶対向いていると思う。


「まぁ待て出来てるからいいか。あげていいよね?」


「いいよ!あー、ちょっと待って!動画!動画撮ってて!」


「了解」


一旦2匹の届かない場所にお椀を置き、スマホで録画の準備をしてから、2匹の前にご飯を差し出す。

食い意地はどちらもあるようで、汚れるのを構わず食べ進めた。


俺は穂乃果に怒られないよう、必死にかわいい角度で動画を撮る。


「かわいい……」


穂乃果もいつの間にかキッチンからこちらに戻ってきており、2匹を見てうっとりしていた。


すると、玄関のチャイムが急に鳴った。


「誰か来た?!ってもうこんな時間?!」


すでに14時になろうとしていた。

インターフォン越しに穂乃果の友人たちが来たのがわかる。


「俺が出るよ」


「うん、お願い!私は準備してるね!」


ゲージの扉を閉め、2匹が脱走しないようにする。

その後、俺は玄関へ向かい、穂乃果の友人を迎え入れる。


「いらっしゃい」


「「「おじゃまします!」」」


3人とも見覚えがあった。

成人式のときに顔を合わせたことがあったので、すんなり中へ案内する。


「朝陽さん!これ、つまらないものですけど!」


「あ、ありがとう。今日は楽しんでってね?」


「「「はいっ!」」」


紙袋を渡されたので、素直に受け取り、仕事で学んだ営業スマイルを浮かべる。

すると、女性3人が少し赤くなった気がしたが、気づかないフリをする。


「あ、みんないらっしゃい!」


「こんにちわ、穂乃果!……主婦みたいだね!」


「ねー、羨ましい……!」


「私の彼氏なんて……」


既に闇のオーラを纏っている人がいるが、こちらも気づかないフリ。

すると、他人が来たことに気づいたのか、ノアが吠えだした。


『ワンッ!ワンッ!』


「「「かわいいっ!」」」


女性3名は鳴き声の聞こえたほうを向く。

そこにいた2匹の犬、ノアとフランへ一気に魅了された。




~~~~~~~~~~~~~~




ペットを買いに行った理由がなんとなくわかる回になりました。

まだ着いてもないのに不憫な男2人ですね……。


描写してませんが、一応保険とかワクチンとかその他諸々は事前にしてもらってますし、後日、検診もある予定です。

その話を書く予定はないですけど、幕間とかで書こうかな?

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