「私の彼氏かわいい!」

美稲と綾香と合流し、成人式へ向かった。

久々に会う顔ばかりで懐かしく思う。


久方ぶりに会う担任は老けており、年相応の苦労が感じ取れる。


長ったらしい成人式の挨拶が終わり、中3のメンツで貸し切りにしていた飲食店へ。

一旦帰宅し、各々が動きやすい恰好に着替えを済ませてパーティーは開催された。


「成人を祝して乾杯!」


『かんぱーい!』


クラス体表として啓介が音頭を取る。

約30名もの人が一斉にジョッキを上げた。


「のむぞー!」


戻ってきた啓介がいの一番にビールを飲み干す。


「ぷはぁ…!」


「飲みすぎんなよ?」


「んだよ、ここでは無礼講じゃ!飲め飲め!」


続けて純也もおかわりを注文した。


「ようやく20だぜ?」


「卒業してからあっという間だよね~?」


「そうだね。純也と美稲は幸せそうだし、啓介もなぜか幸せそうだし。朝陽はどうなの?」


ウーロン茶を片手に綾香が聞いてくる。

が、答えたのは俺ではなく、啓介だった。


「こいつ、高校の時のマドンナを捕まえたんだぜ?」


「「ええ?あの朝陽が?」」


「おうともよ。ほら、写真みせてやるよ!」


純也にも見せた写真を美稲と綾香にも見せていた。

止める暇もなく、自分の彼女のように紹介するのはいかがなものかと。


「え、美稲より美人じゃない?」


「それは私に失礼だよ!でも、事実だからよし!」


自信過剰気味の美稲は自分に自信をもっている。

下手な人より美人なつもりだし、美人になろうと努力もしている。


だが、そんな美稲でさえ、穂乃果は美人だとおもうのだろう。

彼氏の俺は鼻が高いよ。


「えー。会ってみたい!」


「さすがにそれは無理なんじゃない?」


美稲と綾香が一斉に俺の方を向いてくる。

一瞬断ろうと考えたが、穂乃果とこのあとに会う約束をしている。

一応、聞いてみることにした。


「聞いてみるわ」


「でも、純也と美稲はこのあとデートだったんじゃないの?」


「は~?純くんより朝陽の彼女さんのほうが気になります!」


「まぁ俺も美稲に同感だわ。断られたなら仕方ないからデートしような?」


「うん!今日も寝かせないぞー!」


「俺もだって!」


自然な形でいちゃつき始める純也と美稲。

綾香はため息を漏らし、近くにあった食事を口に入れた。


「なんで、俺の周りはイチャイチャばっかりしてんだよ……」


と、啓介の愚痴がもれる。

それには綾香も頷いていた。


「だね。純也と美稲は当然として。あの朝陽がいちゃついてるとことか最高に想像できないわね」


苦労組が愚痴の言い合い、カップルのいちゃつく光景を横目に連絡をしていた俺はコーラで喉を潤し、結論を述べる。


「穂乃果も何人か連れていきたいから連れてきてもいいってさ。まぁ啓介のことは知ってるからだろうけど」


「まじ?!じゃあ、行く!」


「そうね、気になるから私も行くわ」


「行くしかねぇよな!」


「行かないって選択肢はねぇけど……。氷野さん側は何人くらい来るの?」


「あっちも穂乃果入れた5人だって。全員女子じゃないかな?」


送られてきた写メを見せると一層参加する気を増す啓介。


「行くしかないっしょ!」


「「さいってい……」」


「俺だって彼女欲しいんだよぉぉ……!」


綾香も年上の彼氏はいるらしい。

結局、この場でフリーなのは啓介だけである。




◇◆◇◆◇◆◇




クラスでの打ち上げも終わり、個々での飲みに変わった。

俺ら5人は俺の運転で駅近の居酒屋へやってきた。

広い個室のある居酒屋で、10人くらいなら余裕で入る。


成人式の時期ということもあり、証明できるものがあれば簡単に個室を予約できた。


「あ、朝陽君!」


個室に入るとすでに到着していた穂乃果グループ。

女子5人ということもあって外に声が漏れていたが、穂乃果が一番最初に気づくとは思わなかった。


「よ。どうだった?」


「話長くて途中から大変だったんだよ~」


帯がきつくてトイレに行きたくてもいけない。

歩くのにも歩幅に限界があるから先に進めない。

座ってるのがきついなど。


中々に大変だったらしい。


「えええ、実物みるともっとやばいね?」


「ええ。アイドル級よ……」


「さすがに予想外だわ」


「だろ?朝陽って昔っから美人にはモテてたからな……」


各々着席し、穂乃果の友達と喋っていた。

世間話から大学の話など。

綾香は知り合いがいたらしく、割と世間は狭い。


「穂乃果は高校にいってから変わったよね~」


「そうそう!素材はよかったのにオシャレ興味ないせいで台無しだったもんね~」


「好きな人が出来ると人って変わるものね~」


と、穂乃果の中学の友達が言う。

それに頷く純也と啓介。


「朝陽の中学ん時はまったく女っ気なかったもんな。まぁ高校行ってからも変わんねぇけど」


「それな。そのクセ無駄にモテるから無自覚で敵作ってたしね」


「俺もその一人だけどね?まぁ?親友だからしっかりフォローしてやってたけどな!」


「そういう恩着せがましいとこがモテないんだぞ……?」


二人の口論が始まった。

外野の女子も囃し立てる。


「にぎやかだね」


「うるさいくらいだわ……」


「でもこういうのもいいよね」


「まぁ嫌いではないな」


貴重な男子のじゃれ合いを観測している女子達を観察しながら、俺は酒を飲み、穂乃果が酌をしてくれる。

ある程度、みんなで飲み、1時間半の食べ放題のラストオーダー。


デザートで締め、店を出た。

一応、俺と純也の社会人組で割り勘。

結構な値がしたが、ここはやせ我慢。


事前に母さんなどから渡されたお金で足りたのが御の字であった。




◇◆◇◆◇◆◇




各々がタクシーや電車で帰る中、俺と穂乃果は穂乃果に運転してもらって帰ってきた。


「ん~楽しかった~!」


「疲れたわ……」


「おつかれ!お茶飲む?」


「いただくわ」


暖房とこたつを起動させ、冷えた身体を温める。

お茶とみかんを食べながら、久々にあった人との会話で盛り上がったことを話し合う。


「朝陽君って異性に話しかけられた?」


「まぁ程々にな。連絡先交換してとも言われたが断っといた」


「……なんか複雑」


「どうしてた?」


「朝陽くんがモテるのは嬉しいことだけど!だけど、やっぱり盗られる可能性も0じゃなかったわけでしょ?」


穂乃果は穂乃果ではやり気になってたらしい。

まぁ俺だって、穂乃果が他の男に言い寄られてたら複雑な気持ちだしな。


ましてや、知らない男と歩いてたら殴り飛ばしに行きそうだし。


「そんなこといったら、穂乃果だって声を掛けられたらしいじゃん。俺だって有耶無耶するぞ?」


「嫉妬……!なに、私が他の男の子に靡くと思ってるの?!やだ、私の彼氏かわいい!」


ちょっと穂乃果の言動にイラっとした。

穂乃果を床に張り倒し、上から被さる。


「んだよ、悪いか?……よし、じゃあ他の人に見せられない体にしてやるよ」


「きゃっ、襲われちゃうわ……」


「とか言いつつ、服脱ぎ始めるのなんで?」


器用に右手で服を脱ぎ始めた。

左手は俺のズボンのベルトへ。


「使用済みにされちゃうわ……」


「いや、むしろ食い尽くそうとしてくるのは穂乃果だろうに……」


「うるさい口はこう!」


キスで口を塞いでくる。

あとは流れに沿ってやることをやるだけ。

成人式の夜は普段より乱れた夜になりそうだ。





~~~~~~~~~~~~~




次回からは3章ということで、いろいろと進展します。

一気に話進むよ!


終わりまでもうちょっとだね!

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