「お姉ちゃんが1位確定だね!」

お昼に穂乃果と母さんが作った雑煮を食った。

いつの間にか普通に話すようになっており、気づいたらキッチンに立っていた。


俺は弟をゲームでボコし、満足である。


「なんで俺は勝てねぇんだよ……」


「ガキにはまだ負けんわ」


「3つしか違わねぇだろ!」


「高2はガキだよ、ガキ。大人になってみろよ」


全てに対して弟にマウントをとれるので、いまのうちに調子に乗っておく。


篤志あつしくんは朝陽くんに似てるよね?」


「顔は似てるな。性格は真逆だが」


俺は陰キャ寄りだが、弟は陽キャだからな。

顔は似てるので、モテてるのか知らんが。


穂乃果はいつの間にか俺の隣でくつろいでいた。


「兄ちゃん達は自然な形でいちゃつくんだな……」


「え?あ、全然意識してなかった……」


ほぼ密着しているくらい俺に寄って座っている。

お互いそれが当たり前になりつつあったので、ほぼ無意識だった。


「いいことよ。実家と同じくらいくつろいでもらってる証拠じゃない」


テーブルの上を片付けるために母さんが立ち上がる。

気づいた穂乃果も立ち上がろうとすると、母さんに止められる。


「すこし休んでなさいよ。気疲れしてるでしょ?」


「そうでもないですけど……」


「いいえ、疲れてるわ。姑に会うのは自分が思っているほど疲れるわ……」


「わかりました、ありがとうございます……」


少し遠い目をした母さんの圧に押されて、渋々座りなおした穂乃果。

母さんがお椀を下げて、お茶菓子をもってきた。


「そういえば、篤志。お年玉いる?」


「いる!」


「いらなさそうだな」


「いるっつっただろ!」


「お母さんはあげないわよ?」


「なんで?!」


事前に準備していたお年玉を篤志に渡す。

母さんは本当に準備してなかったみたいで、お札そのまま渡していた。


「おおお、兄ちゃん1万とか太っ腹じゃん!」


「貸しだからな?金利10%でいいぞ」


「金利?」


「お前、まじでバカだったんだな……」


テストで学ぶものはそれなりに覚えているくせに、こういう世間的な話になると一気にバカになるな。


穂乃果もクスクスと笑っている。


適当にくつろいで過ごしているとチャイムが鳴り響いた。


「俺行ってくるわ」


「よろしくね~」


母さんと穂乃果が世間話をしていたので、かわりに俺がいくことに。

廊下に出ると冷気が俺を襲ってくる。


「はいはーい」


玄関を開けると見知った顔がいた。


「あけおめ、朝陽の車あったから寄ってみたわ」


「おっす。あけおめ。どっかいってたのか?」


やってきた客人は啓介だ。

中学前くらいに近くに引っ越してきて、中学からずっと一緒にいた親友だ。

俺の車があったら挨拶程度に寄ったらしい。


「コンビニに魔法のカード買いにな。いつまで実家いるんだ?」


「3日に帰る予定だけど」


「ふぅん……。氷野さんも実家帰ってるのか?」


「穂乃果か?今居るぞ?」


リビングにいる穂乃果に声を掛ける。

パタパタと走ってリビングからこちらを覗き込む。


「あ、高橋くんだ。あけましておめでとうございます!」


「あ、あけましておめでとうございます……。まさか朝陽の家に居るとは……」


「なんで緊張してんだよ?」


すると、啓介が俺の肩を引っ張って耳打ちしてくる。


「だって、氷野さんがいたんだぞ!緊張するだろ!」


「いや、この前体育館であっただろ……」


「あんときは氷野さんは女子と一緒だから喋ってないんだよ!」


喋ってないんだっけ?

そういや、喋ってなかったような気がする……?


「高橋君はお家近いの?」


「はい!4軒先の向かいの家です!」


穂乃果が俺の隣までやってきた。

俺も啓介に開放された。


「幼馴染ってやつ?」


「いや、啓介は中学前に引っ越してきたんだよ」


「そうなんだ?なにももってないけどどこか行くところ?」


「コンビニでちょっとした支払いを済ませてきたところです!」


嘘つけ。

ゲームに課金しようとしてただけだろう。

大学通ってるから特別にお年玉もらって、調子乗って課金するんだろ?


「偉いね!」


「……そうでもないですよ」


「そうだな」


「余計なこと言うなよ!じゃあ俺はこれで!今度飲み行こうぜ」


「あいよ。予定空いたら連絡するわ」


「うい!じゃあ氷野さん、朝陽をよろしくお願いします!」


「任せて!」


そういって去っていった。

寒いのでさっさと扉を閉めて、リビングに戻る。


「ちょっと喋っただけなのに寒いんだけど……」


「啓介先輩?」


「ああ。俺の車あったから寄ったらしい」


「なるほど~。兄ちゃん、暇だからゲームしようぜ」


「いいぞ。せめて対戦系以外にしようぜ」


「じゃあ鉄道すごろくしようぜ」


ゲーム機を起動させ、メモリーカードを差し替える。

コントローラーを4つ準備した。


「母さんと義姉ちゃんもやろうぜ」


「いいわよ」


「義姉ちゃん?!……いいよ、やったことないけど一緒に遊ぶよ!」


弟に姉と呼ばれて一気に覚醒した。

まぁ、母さんも穂乃果に義母さんって呼ばれたときは嬉しそうな顔になってたしな。


「よし、運ゲーだからビリはないと思う!」


「あー、篤志。先にいっとくわ。穂乃果は運だけはめちゃくちゃいいぞ?」


「え?」


「ふふん!お姉ちゃんが1位確定だね!」


「じゃあお母さんは2位でも目指そうかしら」


「じゃあ必然的に俺が3位だな」


「なんで俺が強制的に4位確定なんだよ!運ゲーだぞ!絶対に1位になってやる!」


コントローラーの設定を終え、各プレイヤー名を設定。

穂乃果が初見のため説明をしつつ、進行していった。



2時間くらいみっちりプレイした結果。



1位 ホノカ  23兆円

2位 カアサン 14兆円

3位 アサヒ  13兆円

4位 アツシ  -6億円



「おかしい!絶対おかしいって!チートだ!」


「どんだけ不運なんだよ……」


「篤志、お祓い行っとく?」


「お母さん、頼んでいいか?」


「探しとくわ」


「ふふ……」


終始篤志の不運で常に貧乏な神が取り付いていた。

何度か、借金を返せていたが、次のターンには借金を抱えていたくらいだ。


むしろ、-6億で済んだならいいほうだ。


「このゲーム一生やらない!」


「まぁここまで差を付けられるとしゃーないわな……」


さすがに弟に同情してしまう。


「あら、もうこんな時間?夕飯作らないといけないわね」


「あ、手伝いますよ!」


「じゃあお願いしようかしら。なにかあったかしら?」


母さんと穂乃果が立ち上がり、キッチンへ。

俺は夕飯ができるまで、弟と協力できるゲームでまったり遊んでいた。



「なんで俺ばっかり狙われるんだよ!」



結局、弟の発狂は響き続ける……。





~~~~~~~~~





弟の名前初出しです。

運動神経と運要素以外では朝陽以上です。

イケメンですし、勉強もできます。

ただ、篤志には1人仲がいい女子がいて……。


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