「エビ天冷凍だけどいい?」

今年も残るは6時間。

18時、のんびりと家で過ごした俺らはこたつに入っていた。


「今年もおわるな~」


「何回目?今日いっぱい聞いたよ?」


「だってよ、もう3か月だぜ?」


穂乃果と付き合ったのが9月の半ばだったため、正確には3か月半だが、面倒なので3か月ということにする。

かなり濃密な月日に一日の消費が激しく早かった気がする。


「来年はもっと楽しくなるよ?」


「年明け早々やることいっぱいあるもんな~」


「うんうん。そういえば聞いたことなかったんだけど、朝陽君の家族構成ってどんな感じなの?」


そういえば言ったことなかったな。

穂乃果が両親共働きの一人娘ってこともあってかなり可愛がられたからな。


「母親と3つ下の弟がいるな」


「お父さんはいないの?」


「俺らが幼いころに不倫して別れたっぽい」


「聞いちゃいけない話だった」


実際は顔も覚えてないんだけどな。

弟なんてまだ物心つく前だからいないも同然だしな。


俺が就職してすぐの頃は家に仕送りを入れようとしていたが、母ちゃんが自分の将来のために貯めときなさいって言われて、送ったお金よりちょっと多い額を返されたものだ。


「弟くんとは仲いいの?」


「いいと思うぜ?たまに連絡取り合ってるしな。今度帰ることも伝えてある」


「お母さんには?」


「一応な。まぁ家買うときにあれこれ説明してるから言わなくても察してるだろ。元々察しのいい人だし。俺らの自由奔放さは母親譲りだしな」


弟は高校2年だが、バイト三昧の生活らしい。

生活が苦しいとか、そういうのではなく、遊べるお金が欲しいからバイトをしているっぽい。

ただ、バイトで遊ぶ時間がないとも嘆いていたっけ。


「俺らと同じ高校通ってるからな。俺らの2年のときの担任と一緒だから結構揶揄われるらしい」


「そうなんだ?というか、バイトいいんだっけ?」


「大丈夫だぞ。バレなければ」


「それは大丈夫とは言わないような気がする……」


こたつから上半身を出し、テーブルの上にあるみかんの皮を剥いて食べる。

穂乃果はこたつから出てキッチンのほうへ向かっていった。


「なに食べる?お蕎麦?」


「なんでもいい……は困るよな~。とりあえず蕎麦でいいんじゃね?」


「エビ天冷凍だけどいい?」


「任せるわ」


「わかった~」


お鍋に水を入れ、温めている間に冷凍のエビ天などを解凍する。

3玉分を一気に茹でている間にスープを作る。


慣れた手つきで蕎麦を茹でる穂乃果。


「寒い~」


「ありがと」


「召し上がれ!」


蕎麦を入れた器を持ってきた穂乃果。

薬味なども準備してくれて、いざ食すだけである。


「年越しそばって年越してから食べるって言われてるけど、実際は年を越すために食べる蕎麦だから先に食べないといけないんだって」


「地域によって分かれるだろうけどな。たしか1年の厄災を断ち切るために食べるんだろ?年内に食べきらないといけない地域もあれば年明け後に食べる縁起物って言う地域もあるらしいしな」


それこそおせちを食べる前に蕎麦を食べ終わってないといけないとか。

色々らしい。


「うちは夕食でお蕎麦だったな~」


「俺んとこは夕飯は普通に食って、寝る前に蕎麦食ってたな」


「太るじゃん!」


「若かりし男に太るという概念はない。つうか、年末年始って寝ないからな」


「ええ~。ってそうだ!寝ないで思い出したんだけど初詣と初日の出見に行く?」


「初日の出は行く予定だったけど、どうする?」


毎年、会社の奴らと見に行ってたしな。

かなり寒いけど、見れた時の清々しさは中々忘れられないものだ。


年の始まりって感じがする。


「見に行きたい!けど、起きれる自信ないから起こして?」


「2時には寝そうだもんな?」


「うん!寝ちゃうよ……」


昨日とか特になにもしてないが、夜更かしチャレンジ!とか言って頑張って起きてようとしたが、1時半に寝落ちしてたからな。

俺も穂乃果が寝たのを確認して、すぐ寝たしな。


「まぁ起こすのはいいとして初詣は?」


「うーん、行きたいけど朝陽君が人混み嫌いっていうなら三が日過ぎたあたり?」


「それか、23時くらいに近くの神社行くか?」


「朝陽君が嫌じゃないならそうしたいな~」


「じゃあそうすっか」


蕎麦も食べ終わったしな。

器を台所に持っていき、水につけておく。


それからこたつでだらける時間が再びやってきた。

紅白歌合戦を聞きながら。



◇◆◇◆◇◆◇



「やっぱ人多いな……」


「考えることはみんな一緒だね?」


「これ、近所だからある程度で済んでるが、有名どこの神社はもっとやべぇんだろ?」


「そうだね、去年は朱莉とその他の友達と年明け迎えたけど、初詣だけで4時間くらい待ったもん」


「無理無理。吐きそう……」


「さすがに寒かったな~」


去年って雪降ってた気がする。

今年はまだ降ってないが、いつ降ってもおかしくない。


「あ、順番回ってきたよ!」


「おう、二拝二拍手一拝だっけ?」


「そうだよ」


15円をお賽銭し、手順に乗っ取ってお参りを進める。


(健康でありますように)


(幸せな家庭が築けますように)


ちょっと長めにお願いごとをして、列から退けていく。

道順的にお守りやおみくじが引けるようになっていた。


「おみくじやろ!」


「いいぞ」


200円を払い、それぞれおみくじを引く。

俺は末吉だった。


「朝陽君なんだった?」


「末吉。穂乃果は?」


「私、吉だった」


内容を見ていくと家庭運と恋愛運は無理せず物事を進めれば不幸はないっぽい。

仕事運が最悪だった。


「げ、怪我の予兆あり。気を引き締めて仕事せよだって」


「えええ、気を付けないといけないじゃん!」


「まぁ深く考えすぎて逆に怪我するようじゃ意味ないから心に留めておくくらいにするわ。とりあえず、結んで来ようぜ?」


「そうだね、でも怪我だけは注意してね?」


「そうだな」


おみくじを結び、お守りを購入して帰路に着く。


帰っている途中、スマホのアラームが鳴った。

23時59分。

年明けまで残り1分を切った。


「なんか運命を感じるわ」


「そうだね、私たちの始まりはここからだもんね」


穂乃果の家に連れてかされたときのことを思い出していた。

まさか、家に連れてこられるとは思ってもいなかったからな。


スマホの時刻が0時になった。


「「あけましておもでとうございます」」


アパートの前で年を越した。






~~~~~~~~





一区切りですね。

コメントも増えてきて、嬉しい限りです!


さて、年明け後の残りイベントは二つです。

ついに穂乃果が朝陽の実家へ。

それと成人式をお送りします。

たぶん4話ほど。


その後に3章行きます。



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