「……なんで俺となんだ?」

忘年会をやったことはあるだろうか?

年の節目ともあって、参加したほとんどが酔いつぶれ、奇行に走る危険なイベントだ。(偏見)


ペットショップから直帰し、20時くらいに家を出て電車で会社近くの居酒屋にやってきた。

企画した人が参加者名簿をもってやってきた人を確認していく。


ほぼ全社員が揃い、顔を合わせたことのある人からいつも一緒に働く人まで合計30人くらいが集まった。

支部長の挨拶から始まり、乾杯の音頭を矢野さんが担当した。


最初は仕事の愚痴など、軽い会話だったのにも関わらず、速攻で酔った支部長に滝沢が巻き込まれ、カラオケを歌うことになっていた。


しかも、意外なことにアニソンをデュエットしている。

ノリノリな支部長と嫌そうな滝沢のデュエットが聞いている人たちの興奮値を上昇させ、そのあとも続いて歌う人が続出する。


「日向くんは~飲んでますかぁ~?」


「ああ、小鳥遊さん……。随分と酔ってますね……」


「そうなんれふお~。くそジジィに飲まされて~酔っちゃいまひあ~」


ふらっふらな足取りで営業の小鳥遊さん(女)がやってきた。

一応1個上の先輩で受付を担当していることもあって、そこらの女よりは可愛いと思う。


ただ、お酒が好きなのにめっぽう弱く、だる絡みする性格から社員からのウケは悪い。

見た目は整ってるせいで外部のお客さんとかは見惚れるそうで。


「日向くんは彼女出来たみたいじゃないれふか~?」


「そっすね。知ってたんですか?」


水を入れた新しいコップを小鳥遊さんに渡す。

一口で飲み干すが酔いが回りすぎてるせいで効果は薄そうだ。


「そら~しってまふお~!デートしてるとこみちゃいまひたし~!」


「あちゃ~、見られちゃいましたか~……」


「かわいい彼女さんじゃないれふか~!」


「あ、居た!ごめんなさい、日向さん!めんどくさい先輩が絡んじゃって!」


ぺちぺち肩を叩かれていると、背後から再びやってきた女性。

今年入社した新井さん?だったかな。

小柄で小動物のような見た目の彼女だが、結構言葉が雑である。


「もぉ、ももちゃんはもっとせんはいに優しくするべきでふお~?」


「じゃあ飲まないでください!あと、日向さん彼女出来たんですよね!おめでとうございます!」


「ありがとさん。んで、この先輩回収してくれるん?」


「はい!こっちで処理しときます!」


小鳥遊さんの背後に回った新井さんが腋に手を突っ込んで引き摺って元の場所に戻っていった。


「それでは会社であったら詳しい話教えてくださいね?」


「ばいば~い、日向くぅ~ん!」


「先輩はさっさと寝てください!」


「きゃ~、ももちゃんこわい~!」


営業部の人が集まるテーブルまで引き摺られて戻っていった。

さすが、営業部とだけあってか、酔った小鳥遊さんの扱いに慣れているようで、全員ガン無視である。


「だから居なくなったのに気付くの遅れたんだろうな」


「日向ぁ!お前新井さんと何話してたんだよ!俺が支部長に絡まれて苦労してるときによぉ!」


「あ、滝沢か。小鳥遊さんに絡まれてな。新井はその小鳥遊さんを回収に来たんだとよ」


「なるほどな……。お前も災難だったか」


「お前ほどじゃねぇよ」


さっきまで小鳥遊さんがいたところに座り、中途半端に入った瓶ビールをすべて飲み干す。

俺は既にお酒からウーロン茶やコーラに飲みかえていた。


「んで、クリスマスは幼馴染と一緒だったのか?」


「あ?なんで梨花が出てくるんだ?」


「なんでってありゃ完全にクリスマスを一緒に過ごそうとしてたからおめかししてきてたんだぞ?」


「……???……なんで俺となんだ?」


こいつバカだろ。

鈍感ってレベルじゃねぇぞ、こりゃあ……。

酔ってるからか?

酔ってるせいにしてぇよ……。


「まぁ事情があるんだろ……。んじゃあ、クリスマスなにやってたんだ?」


「ああ?ボッチに喧嘩売ってんのか?ネットでリア充撲殺してやるって掲示板で騒いでたわ!」


哀れだ……。

こんなにも想ってくれる人がすぐ近くに居るのに、近すぎて気づいてねぇとか本当に末期だよ……。

そんな顔も知らねぇニートより、幼馴染を大事にしてやれよ……。


「それより、日向こそクリスマスなにしてたんだよ?どうせ夜の大運動会だっただろうけどな!!」


「穂乃果の実家行ってたわ。まぁ運動会は否定しないでおく」


「けっ!末永くお幸せにな!」


滝沢はつまみを適当に食い荒らして、席を立った。

そのあとは先輩後輩が代わる代わるやってきて、軽く話しては去ってを繰り返した。

2~3時間くらいの飲み会も終わりを迎えようとしていた。

穂乃果に連絡を入れて迎えを頼む。


一部では二次会が行われようとしているが、家族持ちはほとんど参加はしない。

というか、誘われない。

俺も彼女と同棲しているのがバレているため、声を掛けてくるやつはいない。


「よ、楽しかったか?」


「矢野さん。面倒なグループにいたっすね」


「日向からすりゃあ、めんどくさいだろうけど、俺は年が近い連中が多いからな。そうでもねぇぜ?」


矢野さんも迎えを待つ組だ。

真由美さんの実家に帰るらしく、あまり酔ってなさそうである。


「あんまり酔ってないっすね?」


「そりゃ、このあとお義父さんと飲む約束あるからな。下手に酔えんよ……」


「それはそれで大変っすね」


「んだ、気を遣うからな……」


「わかるっす……」


俺も穂乃果の両親にはどうしても気を使ったもんだ。

特にお義父さんが競馬で負けて落ち込んでるときはどうやって励ましたものか……。


「っと、真由美が着いたみたいだから先に帰るわ」


「お疲れ様です。よいお年を」


「おう、よいお年を」


最後に挨拶を交わして、矢野さんがお店から出ていった。

俺も穂乃果の位置情報を確認すると近くまで来ているっぽいのでお店を出る。

冷たい夜風が火照っている体にちょうどよい。


「今年も終わるな~」


軽く背筋を伸ばしていると、スマホに通知が入った。

穂乃果が着いたようだ。


辺りを見渡し、穂乃果の車を探す。

ちょっと先の信号で止まっているようで、青になるとお店の前で止まった。


「朝陽くーん」


「おう。ありがとな」


「全然!じゃあかえろっか!」


「安全運転で頼むぞ」


「もちろん、任せて!」


助手席に乗り込んで来た道を帰っていく。

おみやげ話に滝沢のクリスマスの話をしてやった。




「えぇ?それは滝沢君最低すぎない~?」




穂乃果の中での滝沢の評価が10下がった。







~~~~~~~~~





誤字脱字報告ありがとうございます!

その他、コメントもしっかり読まさせていただいてます!

競馬の話がなぜかコメント率いいんですよねぇ……(笑)


さて、最近スターレイルっていうソシャゲにハマってまして、新しいキャラが追加されたわけなんですが、低月給の私に課金できるお金はないので、天井近くて止めておいたガチャ引いたら見事すり抜けました。


どうにかしてお金を作らないといけませんね……。


みなさんもギャンブルと課金だけには注意しましょう。




地方競馬で一発万馬券狙うしかねぇよなぁ?!



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