「お、おい泣くなよ……」
穂乃果と合流し、再びデパートへやってきた。
「予算ってどれくらいで考えてた?」
「遠慮する必要ないぞ?って言ってもさすがに遠慮するよな?」
「買ってもらう側だもん、気にしちゃうよ!」
「だよな。素直に言うと2~3万だな」
「結構な額だね……。てっきり1万くらいだと思ってた」
最初は俺もそのくらいだと思ってたが、女物って見てみると軽く万超えてくるんだよな……。
まぁ、今ご時世ゲームソフト買うだけで1万ちかく消えてくからな。
聞けば多く感じる額だが、実際買い物をしようとしたら丁度いいくらいだ。
「なににしよっかな~」
最初は無難にアパレルショップから。
冬になり、雪がいつ降ってもおかしくない程寒くなってきている。
もう少しでクリスマスということもあり、辺り一面がクリスマスカラーばっかりである。
「この服、ちょっとエッチじゃない?」
「冬なのにそういうニット買うやついるのか?」
「クリスマス近いんだからいるんじゃない?やっぱり本命を堕とすならこれくらいしないとねっ!」
「じゃあ、すでに完堕ちしてる俺には必要ないな」
「そういうこと簡単に言えちゃうのズルくない?」
結局気になっただけに留まったちょっとエッチなニットを戻し、店内を見て歩く。
時より止まって、気になった服をチェックするがすぐに元の場所に戻す。
欲しいものは見当たらず、店から出た。
デパート内を見て歩き、アクセサリー店のショーケースをジッとみて、立ち止まる。
「やっぱり、探したんだけどどうしても欲しいのあるからそっちでもいい?」
「なんでその欲しいものにしないんだ?」
「なんといいますか……、恥ずかしくて……」
両手を後ろで組み、モジモジしている。
頬を赤く染め、照れているのが見て取れる。
「恥ずかしい?なんだろ、ペア系のなんか?」
「そのペア系のリングかな~……なんてね?!……重いよね?」
「あー、実は同じことを思ったんだがな?」
話が長くなりそうなので、近くにあるコーヒー店で休憩することに。
飲み物だけ注文し、穂乃果と合流する前に実は矢野夫婦に助言を聞いたこと。
そして二人の馴れ初めを話した。
「まゆさんらしいね……」
「そう思うよな?だから、重くはないんじゃねぇか?」
「その話を聞くと私もまゆさんと同じなのかも……」
「なんでだ?」
「今半同棲みたいな感じになってるでしょ?逆を言えば家に来ないときもあってどうしても不安になるんだよね……。私の中では朝陽くんが居るのが当たり前になってて、一緒に居れば、物理的に距離が近づけるんだよ。でも、お仕事とかで家に来ない日ってどうしても、私たちの間にあるのって付き合ってるっていう気持ちだけだから……」
少しずつ声が小さくなっていく。
正直なところ、俺はそんなこと思ったこともなかった。
というか、仕事が忙しすぎて考える暇もなかった。
いや、言い訳だな……。
「だから、なにか私たちが付き合ってるっていう証拠が欲しかったんだよね……。でも、やっぱり私からそれを言うのは病んでると思われそうで……」
誕プレを正直一緒に見に行くのは迷ったらしい。
どうしても、今の気持ちが強くなるから。
だが、俺が決められないと言ったから気を遣わせたみたいだ。
「じゃあ買うか。ペアリング」
「……いいの?」
「ダメってことはないだろ。不安にさせたのは俺の過ちだし、確かに俺も穂乃果と付き合ってるっていう物的証拠は欲しい。同期に自慢するんだ」
「朝陽君らしいね……。ありがと……」
下げてた顔を上げて、笑う穂乃果。
しかし、無理して笑っている。
その証拠に涙が頬を伝う。
「お、おい泣くなよ……」
「無理だよ……。嬉しいんだもん……」
嗚咽を必死に殺しながら、冷えたコーヒーを飲む。
砂糖もなにも入れてなかったような気がするが、今はそれすらも気にする余裕はなさそうだ。
◇◆◇◆◇◆◇
「これ、可愛い!」
「当店ですと、こちらがおすすめですよ?」
「シンプルだけどキレイですね!このデザインってなんですか?」
「これは二つあわせると……」
「ハートだ!」
店員さんと穂乃果がほほえましそうにペアリングを見ていた。
俺はとなりで頷くだけのロボットになっている。
すると、背後から別の店員さんに声を掛けられる。
「お客様、お少しだけお時間頂けますでしょうか?」
「穂乃果行ってきていいか?」
「うん!私は探してるね?」
「わかった。なるべくすぐ戻ってくる」
そうして、少し遠い席に案内され、声を掛けてきた店員さんがとあるカタログを提示してくる。
「こちら、婚約指輪のカタログなんですが……」
「もしかして、わかっちゃいます?」
「正直、わたくし達からするとわかりやすいと思われます。山下さん……対応している店員が彼女さんの対応している間にと思いまして」
俺にだけ聞こえる声量。
視線を穂乃果のほうに向けるが、今はペアリングを一生懸命見ている。
「なるほど……。しかし、俺ら付き合って3か月くらいですよ?」
「今時それほど珍しくありません。婚約自体は結構早めに終わらせるカップルは結構存在します。ただ、そこから結婚となると時間が掛かったりするようですが……」
「勉強になります。それで、婚約指輪ってどんなのが多いんですか?」
「たとえば、こちらなどはいかがですか?」
カタログから何点がおすすめを教えてもらい、現品見本があるものは実際に触らせてもらった。
そのほとんどがダイヤの装飾品ばっかりだ。
値段もかなり張る品物ばかり。
俺は後日一人で来ることを伝え、穂乃果の下へ戻った。
指輪のサイズだけ記録しててもらえるようにお願いしておいた。
◇◆◇◆◇◆◇
「楽しみだね、ペアリング!」
「ああ、結構シンプルなんだな、ペアリングって」
「シンプルなほうがいいよ。お風呂とか水を使う作業以外は私ずっと身に着けるつもりだもん!えへへ、明日が楽しみすぎて今晩寝れなそう!」
リングの裏にお互いのイニシャルを刻印してもらうオプションもつけた。
刻印ありでも、なしでも結局明日になるというなら入れてもらったほうがいいだろうという結論だ。
会計は穂乃果のいないとこで済ませる。
一旦席を外し、先ほどの店員さんにお願いした。
予算はすこしオーバーしたが、穂乃果の満足気な表情をみれば予算なんてどうでもよくなる。
なんなら、今度来るときは婚約指輪の相談だ。
婚約指輪に比べたらペアリングなんて安すぎるくらいである。
「夜は寝てくれよ?」
「寝かせないぞぉ?」
「なんだ、誘ってるのか?」
「えへへ、どっちでしょうか?」
手をつなぎながら、デパート内を見て歩く。
途中で、俺が気になったものがあり、店の中へ。
「このコート穂乃果に似合いそう」
「え?でもこれって……」
「寒くなるし、着てもらうか」
「えぇ?!」
「じゃあ会計してくるわ」
「え、朝陽君?!まってよ!!」
穂乃果の静止を無視し、気になったコートを会計へ。
値段が高すぎてびっくりした。
カードで一括で払う。
「ここブランド店なのに……」
知らなかったとはいえ、値段をみればわかるってもんだ。
まぁ値段見なかった俺が悪いんだけどね?
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