第一章・幕間〜俺と彼女と矢野夫婦+α〜
「約18万でした……」
おまけ。連投です。前話が本編です。
とある日曜日。
俺と穂乃果は矢野夫婦と競馬場へ来ていた。
矢野夫婦の子供は真由美さんの実家に預けてきたらしい。
なんでも、孫の面倒を見たいとのこと。
「え、真由美さんと旦那さんって競馬場で知り合ったんですか?!」
「そうなのよ~。旦那が馬券外れてムキになったかなんかで、ヤケクソ気味に大学生になった私たちのグループをナンパしてきたのよ」
「へぇ、あの矢野さんがねぇ~」
「んだよ、俺だって独身だったんだ。ナンパくらいするわ。考えても見ろよ、隣で若くて美人な女達が競馬やってんだぜ?ナンパの一つくらいするだろ」
「いや、競馬場でナンパはしないと思うっすけど……」
だが、実際ナンパして真由美さんを捕まえたのだとしたらラッキーだったんだろうな。
馬券外した運が嫁を当てたんだからむしろ、プラスだろ。
「でも、それと出会いってなんかつながるんですか?」
「あー、たしかに。俺も気になるわ……って始まるぞ」
「おお、初馬券当てる!!!」
一旦始まるレースに集中する。
俺と矢野さん……厄介だから隆司さんっていうわ。
初めての休みに競馬場で会社のやつらと来た時に俺もドはまりしては、定期的に隆司さんと遊びに来ている。
元々、矢野夫婦が競馬好きということもあり、隆司さんが競馬場へ行くというのであれば、真由美さんは育児は任せろとのこと。
しかし、実は真由美さんのほうが競馬はガチである。
軍資金だけは渡しており、LIMEで指示して馬券を買わしているらしい。
そして、こうして語っている間にもレースは進んでいる。
まだ第3レースなため、俺はガチガチの馬券である。
に対して、矢野夫婦。
お互い、事前に買い方を決めているのか、パドックを見て議論し合って購入している。
穂乃果?
人気とかわかんないから好きな馬に賭けさせた。
最低人気を選ぶとは思わなかったけど。
『残り200mを切った!先頭は17番!粘る粘る!4番が迫るも17番逃げ切った!見事に逃げ切りました、17番!鞍上してやったり!最低人気が粘りを見せ勝ちをもぎ取りました!』
「「ぬおああああ!!ふっざけんなよぉぉぉ!!!」」
矢野夫婦発狂である。
俺はあんまり掛けてないのであまり痛手ではないが……。
「ねぇねぇ、17番勝ったの?これ当たってる?」
「あ、ああ、当たってるわ……」
「「ああ?!」」
「ちょ、矢野夫婦?怖いっすよ?」
穂乃果が買った馬券が当たっていた。
しかも、単勝複勝各1000円ずつ。
「よく1000円ずつ買えたな?」
「よくわかんなくて……。とりあえず、朝陽君に渡された軍資金から出したからもしかしたら朝陽君のお陰かもね!」
「「健気すぎる……!そしてビギナーズラックやべぇぇ……」」
「まぁ確定オッズ出るまでまってようぜ?」
てことで、数分間はモニターをみて待機することに。
ちなみに矢野夫婦は速攻で次のレースのパドックを見に行った。
俺は次はスルーする予定なので、穂乃果に付き添いだ。
「お、オッズ出たな」
「どうやってみるの?」
「あー、単勝が……149倍?!複勝30倍って!」
「えっと、1000円の149倍と30倍?ってことは?」
軽く脳内で計算して、穂乃果が震える手で馬券を見直した。
「約15万と3万?!」
「17万9000だな……」
「競馬って恐ろしいね……」
「これぞ、競馬の恐ろしいとこだな……」
とりあえず、換金しにいくことに。
勝ち馬馬券を持って、払い戻しを行う。
17万9000円が穂乃果の財布の中へ入っていった。
「こんな大金初めて持ったよ!」
「だろうな。俺も初めて高額当選したときは手が震えたわ……」
「次のレースはスルー?」
「俺はスルーだな」
「じゃあ私も見ておくだけにしよう」
矢野夫婦にさっきの場所にいることを連絡し、元の場所へ戻る。
まだ始まってそんなに時間が経ってないため、比較的人も少ない。
「穂乃果ちゃん!いくらだった?!」
「約18万でした……」
小言で真由美さんに伝えると、目を見開いて、口を押えていた。
「じゅ、18万?!じゃ、じゃあ次の返し馬……えっと、騎手が乗って目の前走るからこれだ!って思った馬がいたら教えて?!」
「わ、わかりました……」
「よし、パパ!いつでも買えるように待機してて!」
「よっしゃ任せとけ!」
といわけで、返し馬の時間まで穂乃果と真由美さんが話している。
さっきのコイバナの続きをしているが、それ以上に競馬にガチな真由美さん。
返し馬が始まった瞬間に、話題は競馬へ変わった。
「パっとみ、5番の馬がキレイでした!あとは12番が走りそうだなって……」
「5番と12番ね……。6番人気と3番人気か……。ワイド一点だね!」
素早く、スマホで連絡を入れる真由美さん。
それが終われば、また会話に戻る。
「パドックはどうだったんですか?」
「12番は雰囲気よかったから勝ち負けできるレベルだと思った。けど、やっぱり1番人気がダントツね。圧勝してもおかしくないと思うわ」
「一番人気って何番ですか?」
「えっと3番ね」
「あの顔に白いマークがついてるのですか?」
「そうそう、穂乃果ちゃんからみてどう思う?」
「えっと……ノーコメントで……」
「ええ……私らの頭なんだけどぉぉ……」
「頭?」
よくわからない単語に首を傾げる穂乃果。
落ち込んでいる真由美さんの代わりに俺が説明する。
「ああ、えっと1着固定ってことだな」
「なるほど?じゃあもし2着とかだったらどうなるの?」
「その瞬間ごみクズだな」
「ひえええ……」
「やめて、レース始まる前からごみクズとかいうのやめて……」
「「すいません……」」
始まる前から悲壮感丸出しの真由美さんに只々謝ることしかできなかった。
結論からいうと、穂乃果の直観が当たり、見事ワイドを的中させていた。
だが、本命の一番人気は5着にすら入れず、収支はマイナスだったらしい。
◇◆◇◆◇◆◇
結局この日は矢野夫婦が二人で-10万。
競馬専用の貯金があるとはいえかなりの痛手だろうな。
ただ、穂乃果の直観を信じたため、思ったほどマイナスにならずに済んだと安堵していた。
対して、俺はプラス2万ほど。
一回だけ三連単が当たったため、収支としてはプラスだった。
そして穂乃果。
5レース買って、全勝。
+32万の大勝利である。
「今日は私が奢りましょう!!」
「「穂乃果様仏様ぁぁぁ!!」」
「この夫婦本当に大丈夫なのか……」
だが、二人の趣味が一致しているのは良いことだと思った。
こうして、育児の息抜きとして夫婦仲良く競馬できるのは羨ましいとちょっとだけ思った。
「わたしたちも結婚しても共通のなにかをやりたいね?」
「それな。矢野夫婦みてると羨ましく思うわ」
「うん!じゃあご飯いこっか?」
「だな」
穂乃果のおごりで焼肉へ行った。
ただ遠慮はするので、食べ放題のチェーン店である。
「負けたけど肉うめぇぇ……」
「負けたけど食べて忘れたいぃぃ……」
相変わらずな矢野夫婦だった。
~~~~~~~~
ずっと書きたかった。
矢野夫婦の出会いは競馬場で。
この話はいずれ伏線となって出てきます。
忘れてなければ!!!
以下、補足。
・ワイド
選んだ2頭が1~3着以内であれば、的中する馬券の買い方。
・三連単
1,2,3着を選んだ馬が固定で来ないと的中しない。
・頭
1着を1頭固定で買うこと。
当たれば少ない通りで的中するが、博打に近い。
・パドック
レース前に楕円形のステージで出場場が周回している。
プロクラスになれば、パドックで周回している馬で良し悪しを見分けられるようになる。
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