「カップル席で!」
さて、日曜日になったわけですが。
わたくし、日向朝陽。
「寝坊しちまった……」
時刻は12時を回ったところ。
集合時間は12時半。
残り30分もないわけですが、なにも準備が終わってないわけで……。
「身支度だけなら30分くらいで終わるが、結局遅刻なんだよなぁ……」
事前に準備していた服装に着替えながら、穂乃果へ電話を掛ける。
しかし、中々繋がらず、終いには11時半くらいには準備が終わったと連絡すら来ている。
「とりあえず、急ぐしかねぇな……」
顔を洗い、歯を磨く。
ワックスで髪を整え、ひげを剃る。
ほぼ準備は昨日のうちに終わっているため、あとは家を出るだけというところで、スマホに着信が届く。
『おはよう、朝陽君!どうしたの?もう着いた?』
「おはよう。何と言いますか……、寝坊してしまいまして……。とりあえず、今から向かうから20分くらいで着く!」
『あ、わかった!待ってるね!昨日お仕事大変だったみたいだもんね?』
昨日は突発的な事案で仕事が日を跨いで残業をしていた。
元々昨日は早めに切り上げる予定が、下請けのミスで俺らに火の粉が降りかかり、俺らで下請けのミスをフォローする羽目になった。
しかも、やらかしたミスがデカすぎて、結局一から進めることになり、頑張っても深夜まで続いてしまったというわけで。
正直、めちゃくちゃ眠い……。
「言い訳になるが、そうなんだよ……。とりあえず、もうちょっと待ってて!」
『ゆっくりでいいよ~?事故には気を付けてね?』
「わかった!着いたらまた連絡するわ」
心広い彼女でよかったと安堵すると同時に、罪悪感にも苛まれた。
男の準備はそれほど時間はかからないので、あとは家を出るだけである。
車に乗り込み、財布の中身を確認。
事前に卸しておいた現金、そして最近契約したカードをもってることを確認し、車を発進させた。
特に寄り道もしなければ10分くらいで到着するが、時刻は日曜のお昼真っただ中。
道路はかなり渋滞しており、中々先に進みそうにない。
「あちゃー、やっぱ渋滞するよなぁ……」
スマホを手に取り、穂乃果へLIMEを入れる。
『渋滞で遅れそう』
すると、すぐに既読が付き、
『じゃあ最寄りのコンビニで待ってようか?』
「コンビニだったら裏道で行けたよな……」
『OK、じゃあ悪いけどコンビニ集合でいい?』
『了解!のスタンプ』
丁度、裏道へ抜ける道路があるので、進路を変え、人通りの少ない道とはいえ死角が多い場所だ。
慎重に運転をして、コンビニへ向かった。
◇◆◇◆◇◆◇
5分ほど運転し、コンビニへ到着した。
すでに穂乃果が待っており、車を駐車してから、ちょい急ぎ目に穂乃果の下へ向かう。
「わるい、寝坊した!」
「ううん、大丈夫!眠くない?」
「寝坊して、時間見たら一瞬で目が冴えたわ……」
「そういうことあるよね!」
「とりあえず、飲み物だけ買ってっていい?なんかいるなら買ってくるよ?」
「ううん、大丈夫!買い物しておいで」
というわけで、急いでお茶を買いにコンビニへ。
コーヒーじゃない理由は匂いが残りやすいからである。
みんなもデートのときは気を付けような。
「じゃあ行くか」
「うん、レッツデート!」
「っと、その前に……」
俺は穂乃果のコーデをさらっと見る。
黒いジャンパースカート?に腕が透けてる生地の白いシャツ、シンプルなブレスレットとヒールで清楚な感じに纏まりつつ、随所に大人っぽさを醸し出してる。
童貞を殺すニットよりも童貞を殺しにきてるんか?ってくらい穂乃果自身のスタイルのよさが感じられる。
さて、なんて答えるべきか……。
シンプルに答えるのが正解か?
「今日の穂乃果は随所に大人っぽさが感じられていいな!清楚感が残ってるのも穂乃果の魅力の一つかな?」
やっべ、めっちゃ恥ずかしい!
穂乃果も顔真っ赤にしてんじゃん!
同士討ちかよ!
「……ありがと。その、朝陽君もかっこいいよ?」
「そうか?男なんてあんまり服装に違いなんてそう変わんないからな!まぁ穂乃果がそういうならそうなんだろうな」
「そうだよ!朝陽君はかっこいい!」
「ありがと、んじゃ、デート始めますか!」
「うん、楽しもうね!」
コンビニから車へ移動し、目的地へ向かった。
◇◆◇◆◇◆◇
最初はショッピングモールで食事と映画を見る予定だ。
なんでも、穂乃果が見たい映画があるとのことで、やってきた所存。
食事は食べやすいうどんになった。
「シンプルにおいしいよね」
「安いしな。俺も仕事んときはデリバリーだけど、結構買うんだよな~」
「へぇ?いま、お持ち帰りもできるんだ?」
「そうなんだよ、割と食べやすいから後輩とかに頼んで買ってきてもらうんだわ」
と、ちょっと世間話をしたりして、時間を潰す。
穂乃果が食べ終わるのを待って、少し休憩し、映画館へ向かう。
「それで、なんの映画見たいんだ?」
「えっとね、コメディ系なんだけど……。あ、これ!山に登ったら神になった件!ってやつ!」
「あー、ネット小説から有名になったやつか。にしても、意外だな?てっきり恋愛ものだと思ってたわ」
「朝陽君見ててあんまりおもしろくないかなーって思って!丁度漫画を大学の友達に勧められて面白かったから気になってたの!」
山に登ったら神になった件!っていうのは最近流行りのアニメである。
登山が趣味のおっさんが、神に拉致られ、無理矢理神の代理となったおっさんが異世界に召喚され、仲間とともに孤島を王国に成長させる物語である。
山に詳しいおっさんが知識チートをしようとするも、現地人はすでに心得があって、結局おっさんの見せ場が少ないというコメディよりのバトルもの。
「たしか、空から侵略してくる鳥類と海からやってきた魚人が手を組んで開拓が進んだ孤島を攻め落とそうとしてくるから命がけでおっさん一人で戦うんだっけか?」
「そうそう!めっちゃ面白そうじゃん!」
このおっちゃん、現地人に強い人いるのに神の代行だからって理由で戦闘向かわせられるんだよな。
割と笑って読んだ記憶ある。
「じゃあ、それにするか」
チケットを買いに列へ並ぶ。
丁度恋愛人気ドラマが映画化したということもあり、ほとんどが若い女性かカップルである。
席で迷っているのか、中々進まないが、山神の話をしていれば割とすぐ順番が回ってきた。
「山に登ったら神になった件のチケット2枚購入したいんですけど」
「はい、承りました。お席はいかがなさいますか?」
ちょっと意外そうな表情をオモテに出したが、すぐに営業スマイルに戻り、タブレットを差し出してきた。
それをみて、割と空いてるんだな、と思った。
「席どうする?」
「どうしよっか?」
と、悩んでいると店員さんが声を掛けてくる。
「一応、カップルでしたらカップル席だとお安くなりますが、いかがなさいますか?」
「カップル席で!」
穂乃果が即答で答えた。
俺も異論はない。
「ありがとうございます。それでは、チケット代、お席代で2200円。お支払いはいかがなさいますか?」
「じゃあ一括でお願いします」
「いいの?」
「映画代くらいはな。あ、カードで」
クレジットカードで支払いを行い、チケットを受け取って列から抜ける。
ポップコーンと飲み物を買いに売店へ並び、放映時間まで席に座って待つことに。
「そういえば、昨日、矢野さん一家と会ったんだよ!」
「え?まじ?俺が苦労してる合間にそんな偶然があるのか?」
「あ、そういえばたしかに旦那さんも一緒に居たかも!」
ナンパされてるとこに助けてもらっただと?
俺よりも彼氏っぽいことしてんなぁ……。
まぁ真由美さんに引っ張られていったんだろうけどな……。
「真由美さんすっごい美人だった!」
「だよな、矢野さんにはもったいねぇよな?」
「そう?お似合いだとおもったけど?」
「まぁお似合いではあるだろうな。既に尻に敷かれてるしな」
まぁ俺も家庭持てばいずれはそうなるんだろうけどな。
それが穂乃果だったらどれだけ幸せだろうか。
「あ、そろそろ上映時間じゃない?」
「うし、じゃあ行くか」
「うん!楽しみだね!」
一旦思考を捨て、映画を楽しむことにした。
~~~~~~~
前編ですね。
ちょっと寝坊っていうハプニングは勝手に挟まってきました。
予定外です!!!
作者が思ってた以上に反響して嬉しいです。
これからも応援のほどよろしくお願いします!
できれば、レビューとハート押してくれると嬉しいです(ボソッ)
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