先輩の奥さんのテンションが高すぎる

矢野視点。


俺は日向のことを入社前から知っている。

初めて顔を合わせたのは日向が高3の職場体験の時だ。

初めて教育係となり、仕事の内容等を説明し、4人程の職場体験生に各一人ずつ社員を宛がう。


俺はそんときに日向と組んだ。

見た目は細っこい坊主だと思ったが、中々に飲み込みが早く、手際もよかった。

他の生徒は四苦八苦していたようだが、日向は余裕あるのか、暇になったら同級生にコツを教えたりしており、聞いている俺もわかりやすいと感じた。


3日間ほどの職場体験だったが、終わってみれば呆気なかった。

初日こそ苦戦していた高校生だったが、2日目はみんな簡単な仕事はできるようになっていた。

職場体験を終えた俺は業務内容などを纏め、支部長に提出した。


「この日向って高校生、入社させたいくらいっすわ。即戦力っすよ」


「なんだ、矢野が褒めるなんて珍しいな」


「本当に高校生か?って思うほどに手際も教え方も上手かったっすよ」


なんて話を酒の場でしていたら、社長にまで話がいったようで。


「日向朝陽っす、よろしくお願いします」


3月半ば、高校を卒業して、就職してきた日向が会社に顔を出してきた。

事前に会社での説明、社寮の登録等で入社してきた日向は支部長に連れられ、事務所で次の日の準備をしていた作業員全員の前で軽い挨拶を行い、奥の部屋へ連れてかれた。


「あ、矢野!お前もついてこい!」


「うっす!」


半年前だが、印象強かった日向だ。

俺は嬉しくなった。


あわよくば、俺のパートナーとして働いてもらいてぇな、と思いながら。


◇◆◇◆◇◆◇


時は経ち、約2年ほど経過した。

今日の業務をノルマ以上に終わらせ、矢野家にお邪魔することになった。


「矢野さん家、久々っすわ」


「まあ結衣ゆいが生まれてからドタバタしてたからな~」


矢野さんに今日の夜に相談あるので、お酒でも飲みながらどうっすかと聞いたところ、まさか矢野さんの奥さんから家で飲んだら?と提案され、矢野さんが大丈夫というのでお願いした。

矢野さんの奥さんとは年齢も近いためそれなりに仲が良いほうである。


「つうか、真由美まゆみも聞いていい話なのか?家に着いてから聞くことじゃねぇけど」


「むしろ、丁度いいかもしんないっすね。真由美さんの意見も聞きたいくらいっす」


「じゃあ、とりあえず、あがれよ」


「お邪魔します」


ドアを開き、矢野さんの後に続いて入っていくと、リビングから真由美さんがやってきた。


「日向君いらっしゃい!」


「真由美さん、ご出産おめでとうございます。これ、少ないですがなんかの役に立ててください」


唐突だったが、コンビニによってもらってこっそり準備したご祝儀を真由美さんに渡す。

矢野さんはいつの間にって顔をしている。


「あら、ありがとね?とりあえず、あがってあがって!子供たちも待ってるわ!」


玄関からリビングに案内されて、準備されていた座布団へ座ると、よちよちと歩いて長男の雅人まさと君がやってきた。


「おお、雅人!元気だったか?」


「だあー!」


「そうか、そうか!パパに虐められてないか?」


「おい、1歳児になんちゅうこと聞いてんだよ!ちゃんと可愛がってるわ!」


「だー、だあ!」


雅人くんとじゃれて遊んでいると、真由美さんが赤ん坊を抱いてやってきた。


「日向君、長女の結衣ですよ」


生まれてまもない赤ちゃん。

首が座ってないので、丁寧に抱き上げる。

小さく、強く抱きしめれば壊れてしまいそうである。


「結衣ちゃーん」


聞こえてはないだろうが、うっすらと瞼が開いた。


「かわいいっすね」


「だろう!自慢の娘だからな!」


「親ばかって思われるけど本当に可愛いわよ」


「それが普通ですよ」


「そうね、ありがと。晩酌の準備するから結衣を抱いててもらっていい?疲れたら旦那に渡してもらって構わないから」


「はい、ありがとうございます」


それから続々と準備される夕飯。

からあげにサラダ等、缶ビールも準備された。


「いただきます」


「召し上げれ!」


缶ビールで矢野さんと乾杯をして、からあげをつまみながら世間話をする。

途中、結衣ちゃんが泣いたので授乳のために真由美さんは隣の部屋に移動した。


「んで、相談ってなんだよ?」


「穂乃果…、彼女のことっすね」


「なるほど~?進展あったのかよ?」


「まぁ程々には」


先日の物件見学デートの話を掻い摘んで話す。

度々話を止めて質問攻めしてくる矢野さんだが、割と真剣に聞いてくれてる。


「いや、今の若いのはすげーな」


「俺も自分の行動力にはびっくりしたっす」


「隣の部屋で聞いてたわ!なんていう興味深い話をしてるのよ!」


「雅人と結衣は?」


「寝かせたわ。それより、日向君に彼女ができたのよね?!見してみなさい!」


授乳と寝かしつけを終えた真由美さんが盗み聞きしていたのか、食い気味で俺に寄ってきた。

スマホで撮った写真を矢野夫婦に見せると、真由美さんは大興奮状態に陥った。


「あらあらあら!かわいいじゃない!良い子捕まえたわね!同級生?っぽいわね!」


「お、おい、真由美。興奮しすぎだろ……」


「なーにいってんのよ!弟のような日向くんに彼女が出来たのよ!いつ子供作るの?結婚は?!」


「い、いやそこまではまだ……」


「そうよね、今の子って結婚意識低いっていうものね。でも、話を聞く限り、押せば落ちるわ。むしろ、既成事実でも作ってあげればいいんじゃないかしら?私的にはそこまでしてあげるべきだと思うわ!結構拗らせてそうよね…。だとすれば、次のデートで攻めてくるはずだから……ボソボソ」


「あー、真由美が狂ったわ……。悪いな、暴走しちまって」


「いえ、真由美さんの意見はたまに的を射てますから」


それからマシンガンのような質問攻めに合った。

真由美さんは結構真剣に答えてくれて、それなりに満足のいく回答が聞けた気がする。


明日も仕事があるため、早めに切り上げて、解散する運びになった。


「真由美さん、ありがとうございました」


「いいのよ~、今度は彼女さんも連れてきてね?ごちそうを作るわ!」


「穂乃果に聞いておきます。お邪魔しました」


「じゃあ明日な~」


矢野家から離れ、歩いて駅へ向かう。

充実した時間だったが、疲れもすごい。


「まさか、真由美さんがあんな興奮するとは…」


だが、おかげでいい話が聞けた。

今週末のために明日も頑張るとしますか。



◇◆◇◆◇◆◇



寮に着いてから、親に電話を掛けた。


『あら、朝陽から電話かけてくるなんて珍しいじゃない』


「そうか?そうだな。実は相談があってな?」


彼女が出来た過程からもしかしたら家を買うかもしれないから連帯責任者になってくれないか?と相談する。


『は?』


やっぱりそういう反応するよな。

さすが親子だわ。






~~~~~~




相談事に関してはデート回のときに行動で示す予定!(あくまで予定!)

12時に更新できなかったから18時で許して?

0時はいつも通りあげます。


ラブコメ部門の日間で30位でびっくりしました。(9/23)

応援してくださってるみなさまありがとうございます!


雑魚雑魚作者ですが、今後ともよろしくお願いします。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る