「ご、ごごご強姦?!」

穂乃果は大学へは電車で通学しているらしい。

しかし、朝早い授業は取ってないらしく、比較的駅は遠くても問題ないのだという。

俺は引っ越すならば車で通勤するだけだから、遠すぎなければ問題ない。


そして、現在。


「わぁ!思ってたより庭が広い!外観もオシャレ!」


駅から遠いし、会社もちょっと遠いが、かなり広い土地の新築見学へやってきていた。

田舎で回りは何もなく、最寄りのスーパーでも車で10分ほどかかる。

コンビニもスーパー行くのと差ほど変わらない。

近所さんも離れており、よほど騒がなければ騒音問題にもなり得ない。


そういった条件もあり、紹介されている物件は広すぎるにしては安いとのこと。

5LDKの2階建て、120坪くらいらしい。


「結婚を考えているのなら、戸建てのほうがいいと思いますよ?」


「実は一昨日から付き合い始めたんですよ」


「え?まじですかい?」


「まじっすね」


おっちゃんと知り合ってそれなりに経つが、これほどまでに驚いているのは初めて見た。

俺と穂乃果を交互に見やり、ニヤッと笑ってきた。


「じゃあ尚更家を買って彼女を手放さないようにしませんとな~」


「それ、軟禁してしまえって聞こえるんですが?」


「そこまでは言ってませんよ。しかし、マイホームを夢見る女性は割をおおいんですよ?そういう意味では別れるっていう選択肢は少なからず無くなるのでは?」


言っていることは的に射ている。

手放したくないという意味では同感できる。

しかし、値段も値段だ。

俺の独断では決め兼ねん。


「わー!中も広いよぉ!朝陽くん!」


「とりあえず、日向さんも見学してみませんか?」


「朝陽君もおいでー!」


「今行くー」


終始、楽しく案内係の人の説明を聞きながら回っていた穂乃果はご満悦のようだった。


◇◆◇◆◇◆◇


この後も見学を3件ほど見て回ったが、穂乃果は最初の物件を気に入ったらしい。

軽く話を聞き、おっちゃんは売りに出さず、俺らの判断に委ねると言ってくれた。

当然、俺らが買わないと判断すればすぐにでも売りに出されるだろう。

かなりの待遇だ。


「あんなこと言ってよかったの?」


「穂乃果が気に入ったんだろ?じゃあ、考えてみる余地はあるだろ」


「でも、さすがに新築は私たちには勿体なくない?」


「重いこというかもしんないけど、結婚前提に考えたらありなんだよ。まぁまだ20になったばっかだし、付き合って1週間も経ってないのに家買おうとしてるのは異常だけどな」


俺は笑って車を運転していると、隣で元気だった穂乃果は下を向いている。


「結婚……」


「どーした?」


「そうだよね、結婚しないと家買っても仕方ないよね……」


「まぁ結婚もしないで家買うのはただのバカだからな」


もしくは、両親のために買ってやるくらいだろう。


「結婚するまでというか、子供が欲しいというならアパートを借りるより新築でもなんでも、戸建て買ったほうがいいだろ。アパートだと結局狭く感じるだろうし、戸建てなんて一回買ってしまえば、手放す理由なんてないしな」


運転しながら、ほぼ無意識で喋っている。

この時の俺はかなり激重だろうと、あとで気づくことになる。


付き合って3日で結婚、子供、新築戸建てなんて単語を並べて喋っているのだから。


結局、穂乃果の様子がおかしいまま、解散することになった。

なんでも、気持ちの整理がしたいとのこと。

俺はなんか変なこと言ってしまったのだろうか?




「あ、俺やっべぇことばっかり言ってたじゃん!!!」



お風呂に入って、冷静になった途端、車の中で言った台詞がフラッシュバックし、急に恥ずかしくなった。


「一言謝っとくか」


LIMEを開き、穂乃果に

『今日、変なことばっかり言ったな、ごめん』

『忘れてくれ』

と送信しといた。


中々既読はつかない。




◇◆◇◆◇◆◇




私は湯舟に浸かりながらぼーっとしていた。


「結婚、子供……、朝陽君からそういう言葉を聞けるなんて思ってなかったなぁ」


高校の時から片思いを募らせた女だ。

少しはそういう妄想もしたし、付き合った今、そういう気持ちはとっても強い。

できればすぐにでも子供は欲しいし、結婚もしたい。


しかし、男性からすれば、結婚は墓場だということも聞いたことある。

これで無理に攻めて嫌われるのは論外。

結局、私は思考を纏められずにいた。


一旦お風呂から上がり、身支度を整え、あとは寝るだけ。


「ん~、とりあえず、朱莉あかりに相談してみよ」


高校からの親友で唯一私の好きな人を知ってた人だ。

まだ付き合った報告をしてなかったことに気づき、急いでスマホを手に取り、朱莉に連絡を入れた。


『朝陽くんと付き合ったんだけど、相談したいことあるんだよね~』


既読が一瞬で付き、電話が速攻で届いた。


「もしもし?」


『どういうこと?!話の展開がわかんないんだけど!!』


「土曜に高校の同窓会あったの知ってるでしょ?」


『ええ、彼氏とデートあるから行かなかったけど、そこで進展あったの?』


「そうなの、終わり際にね……」


朱莉に事の経緯を付き合ったところから今日のことまで説明すると、一呼吸おいて朱莉が爆発した。


『はぁ?同棲を前提にアパート見に行って、新築紹介された挙句保留?!しかも、結婚とか子供とかいってたの?!あの、日向が?!』


「まぁ子供とか結婚は新築買うってなった場合の話だとおもうけど……」


『いやいや、あんた的には全然ありじゃないの!むしろ、手放さないようにしないと後悔しかしないわよ?夜這いでも、強姦でもしちゃいなさいよ』


「ご、ごごご強姦?!」


『なにを今さら動揺してんのよ……。あんだけ拗らせておいて……。はぁ、親友の恋が実ったのはいいけど、進展が早すぎて驚きを隠せないわ……。というか、20歳で新築買う余裕があるってことでしょ?ローンだとしても、世の男性的には最良物件じゃない!』


言われてみればその通りだ。

朝陽君は不動産の斎藤さんとも仲が良さげだったし、車も新車っぽかった。

それなりに稼いでるのかな?

でも、それって結局私じゃなくてもいいってことだよね?

もっと家庭的で美人な人なんていっぱいいるとおもうし……。


『おーい、なに人のこと無視して思い耽ってるんだ~。どうせ、私じゃなくても~とか思ってんでしょ?』


「……なんでわかるの?」


『あんたと親友やってんだからそれくらいわかるわよ…。しかも、それが日向のことなんだから余計にね。まぁ高校のときから地味にモテてたもんね、日向の野郎』


そうだ、朝陽君はモテてた。

そんときから女子の中で必ず良夫になると言われていたくらいには。


物静かだが、スポーツも勉強もできていたし、たまに見せる笑顔と優しさに何人かの女子は堕とされていた。

私は、一目惚れだが、結局はスポーツをやっているときの輝きがかっこよく見えて、好きになったのかもしれない。


『とにかく、次のデートを早々に決めなさい。そん時はしっかり勝負下着つけて、少しエロさを表に出しなさい。まずはそこからね』


「じゃ、じゃあ、今度買い物行こ?アドバイスがほしい…」


『はぁ、わかったわ。とりあえず、今日中に次のデートに誘っとくこと!買い物は明日決めましょ?』


「わかった!ありがと、朱莉!」


『どういたしまして、それにしても、あの穂乃果がついに告ったとはびっくりしたわ~』


「もぉ!好きだったんだからいいでしょ!切るよ!おやすみ!」


『はいはい、おやすみなさい』


通話を切り、LIMEを開くと、朝陽君から連絡が届いていた。


「あああ!1時間前?!やっばい、急いで誤解をとかないとぉぉ!!」


急いで返信の文を考える私。

そのときの私はとっても楽しんでいた。



『結婚したいし、子供も欲しいよね!』



場を誤魔化すために返信したつもりだったが、結局朝陽を惑わすことになるとは思ってなかった。





~~~~~~




長くなった。

女性の会話は多くて、長くなった。いいよね?


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