いきなりマイホームは早い気がするんだが…

まったりとした時間を過ごし、23時の終電で一度帰宅した。

アドレナリンが切れて、どっと眠気が襲ってくる。

家に着くなり、目覚ましを10時にセットし、ベッドへダイブ。


目が覚めたのは9時過ぎた頃だった。

12時前に穂乃果を迎えに行く約束をしているため、それまでに身支度を整える。

七分丈の白いTシャツにジーンズといったシンプルな服装。

あまり使用してない、スマホと連動させているスマートウォッチを飾りに装着。


髪型は軽くワックスで調整し、準備完了。

時刻はまだ早いが、車へ乗り込む。

20歳になって衝動買いした新車のセダン。

先月届いたばかりで、ほぼ新車の状態を保てている。


「あれ、どっか行くん?」


車に乗って、いざ出発しようとした所で、隣の駐車場の同期君に捕まった。


「彼女んとこ」


「ふぅん……。デートか?」


「物件見に行くんだわ。滝沢たきざわはアパート決まったのか?」


「忘れった」


「早く探せよ?」


「んなことより、同棲か?けっ、羨ましいこって!」


どうかお幸せになー!と叫びながら、アパートの方へ戻っていった。

何だかんだ、良い奴なんだよなぁ、と思いながら、車を走らせた。


何回か運転してはいるが、やっぱりマイカーは良い。

会社のと違い、静かだし、なんと言っても軽い!


カーナビに指示されるように穂乃果のアパートの近くにあるコンビニへ寄っていく。

いつも通りATMへ直行し、いつもより余分にお金を下ろす。

コーヒーとおにぎりを買いにレジへ行くと、顔見知った店員が、ニヤニヤしながら声を掛けてきた。


「デートっすか?」


「なんで分かるんすか?」


「そりゃ、仕事モードの姿と違って服装整ってますから。ゴム、買います?」


「ゴム?」


「避妊用のやつっすよ。一応買っといたほうがいいんじゃないっすか?」


店内には人は居ない。

話の意図が掴めてきた俺は少し悩んだ後、一応買っとくことにした。


「楽しんできて下さい」


「ありがとな」


「いえいえ、今度話聞かせてくださいよ?」


「やなこった!」


会計を済ませ、レジ袋をもって店を後にする。

背後からありがとうございましたーとやる気の無さげな声が聞こえてきた。


◇◆◇◆◇


時刻は11時半。

LIMEでいつでもいいよー、と連絡が入ったので、すぐに着きそうと折り返す。


コンビニから穂乃果のアパートまで五分ほど。

家の前に車を停めて、ナンバーと車の色を伝えると、こちらを見つけたのか、手を振って上品に歩いてくる。


白いブラウスに、ベージュのタイトスカート、ヒールにショルダーバッグと清楚なコーデ。


「お迎えありがとう!」


「どういたしまして、似合ってるな、そのコーデ」


「シンプルになり過ぎたかな?」


「いや、秋っぽい色合いだし、清楚感が感じられて俺好みの服装だな」


思ったことを口にしただけ。

だが、穂乃果には効果抜群だったようで。


「そ、そうだったらよかったけど……」


顔を真っ赤にしていた。


「とりあえず、飯か?不動産のおじさんには1時過ぎるくらいにいくと伝えてあるから」


「もぉ!デリカシーに欠けるよ!好きな人に褒められて嬉しい気持ちでいっぱいだったのに!」


「いつでも褒めてやるぞ?」


「そーじゃないのぉ!でも、ありがと!じゃあ、ご飯いこっか?」


車で少しイチャついてから、近場のファミレスへ。

所詮20歳の若造だ。

下手な高級店より、そこらのファミレスのほうが趣きがあってデートっぽさを感じられる。

二人でパスタを食べ、俺はドリアも一緒に食べる。

食後にデザートを食べて、軽く雑談でもすれば、1時近くになっていた。


「私出すよ?」


バッグから財布を取り出す穂乃果。

しかし、ここは男、日向朝陽!

さすがに払いたい。お金だけは余ってるから!


「初デートだし俺に出させてよ?」


「え?」


「かっこつけさせて?」


「じゃあお言葉に甘えちゃおうかな…」


よぉし!彼女に出させるクズ彼氏のレッテルは回避したぞ!

せめて割り勘じゃないとすーぐにクズのレッテルつけられるからな!(偏見)


というわけで、2千円くらいの支払いを終え、やってきました不動産。

結局某有名不動産サイトを何件か覗いたが、これだ!というアパート等がなく、知り合いの不動産屋のおっちゃんに電話したところ、明日なら都合がいいとのことで、急遽予定を入れさせてもらった次第です。


「おお、きたか」


「こんにちわ~」


「社寮の件も含めて話は知っているからな。して、隣にいる別嬪さんは彼女かね?」


「そっす、自慢の彼女っす」


「こんにちわ、氷野穂乃果っていいます」


「氷野さんね、私は不動産の斎藤だ。今日はゆっくり見学してな~」


「ありがとうございます」


きれいなお辞儀をした穂乃果におっちゃんは満足そうに頷き、席へ案内された。

何件か既に準備しててくれたらしく、軽く目を通す。

その間に別の人がやってきて、おっちゃんはそっちの対応するから少し待っててくれと告げ、その場を後にした。


「うーん、やっぱり2LDKくらいはあったほうがいいよね?」


「俺的には1LDKでもいいけどな?広ければ」


「問題は駐車場だよね……」


部屋を借りるにしても、田舎である我らの住居地。

ほとんどの人が車を所持しているため、駐車場の空きがほとんどない。


「ともなれば、貸家とか?」


「でも、高いし、庭ちっちゃいから車くらいしか置けなくなっちゃうよ?」


と、あーでもない、こーでもないと話していると、斎藤のおっちゃんが戻ってきた。


「いいとこあったか?」


「いや、結局駐車場問題が解決しなくってな」


「なるほどな~。じゃあ、一つ提案なんだがな」


「「提案?」」


手に持っていた書類を俺らの前に広げる。

そこには新築建設予定と完成日程が記されていた。


「どうせなら家買ってみないか?」


斎藤のおっちゃんは満面の笑みで俺らのことを見ていた。





~~~~~~~~~




・車はマ〇ダのアテ〇ザの赤だと思っといてください。

氷野はホ〇ダの〇-BOXかな~。


・同期の滝沢

車オタクでアニメオタク。休日はどっかに行っていることが多い。

絶賛マッチングアプリで出会い厨になっている。


・不動産の斎藤

57歳のおっちゃん。会社の仕事の相談で知り合った。

社寮から引っ越す際の物件斡旋などで地味に儲けている。



ここまで読んでいただきありがとうございます!

テンポよく進めているつもりだけど、不満とかあったら教えてください。


今日の一言

タイトスカートって膝上までもやつを想像しますけど、すねくらいのやつもタイトスカートなんですね。







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