「私のこと好き?」

時刻は3時を回った。

未だに俺は帰れてない……。


「一目惚れだよっ?!仕方ないじゃん!理由なんてないよぉぉ!」


人生で初めて告白されて、三時間が経過した。

断る理由もなく、交際を承諾。

それからが大変だった。


嬉しさと恥ずかしさが込み上げてきたのか、ビールを飲み始めた氷野はかなりアルコールに弱かった。

たった3口で出来上がった氷野は俺の膝の上に移動してきて背中を預けるように体を倒し、俺を好きになった理由を語り始めた。


さすがに俺の足が悲鳴をあげている。


「うんうん、もう3回聞いたよ?」


「足りないよぉ!」


「さすがに恥ずかしいし……」


本当は恥ずかしいを通り越している。

最初こそ恥ずかしかったが、2周目から様子がおかしいことに気づいた。

氷野はお酒飲んだら忘れるタイプなのだろうか?

もし、覚えていたとしたらかなり恥ずかしい思いをすることだろう。


「最初は頑張って声かけようとしたんだよ?でも、恥ずかしいじゃん!だから自分磨きして好きになってもらえるように努力したんだよ!?そしたら、朝陽君以外からいっぱい告白されるし……。本命はまったく意識してくれてなかったし!」


息継ぎついでに3缶目に突入している缶ビールを空にし、最後の1缶を手に取る。

俺は途中で無断に冷蔵庫の中からお茶をもってきてちまちま飲んでいた。

ちなみに、俺の酔いは完全に醒めている。


「高2は一緒のクラスになれたから修学旅行楽しみにしてたのに、高橋君は男子だけで行動するとか言って断られるし!結局、高2は全く話さなかったし!」


「わ、悪かったって……」


「ぷはぁ〜!まぁいいけどね!女子達からはその日以降生暖かい目で見られるようになったし!敵じゃないことは証明できたもんね〜!」


実際、好きだった男子が氷野に言い寄っていくのを見るのは苦痛だろうからな。

氷野が別に好きな人が居て、その人に夢中だから告白を断っているというのは他の女子からしても安心出来るのだろう。


たしか修学旅行の班決めで氷野に声を掛けられていたが、啓介にメンバーを委ねていたので、啓介に聞いてくれと告げた気がする。

啓介も後々後悔していたが。


「だから、高橋君に朝陽君を強制的に参加させるように脅したの!」


堂々と胸を張る。


「あー、普段強制しない啓介が珍しく強制してきたわけか。でも、それくらいなら啓介から俺の連絡先教えてもらったほうがよくなかったか?」


「ダメダメ!卒業してから2年も経ったんだよ!初恋を拗らせた女子が初恋の人の顔を全然見てないの!今日久々に顔見てやっぱり好きって自覚できたもん!結局最後まで緊張で声かけられないし、周りをどうでもいい男どもに囲まれるし……。高橋君が二次会の参加希望を取ってるときにようやく隙が出来たから頑張って声かけたの!」


「おぉ…えらいえらい…?」


「えへへ、頭撫でられるの好き~~」


自然と伸びた手で頭を撫でる。

酔っている氷野は満更でもなさそうに、表情を緩めた。


「朝陽君は私のこと好き?」


「んー、まだ付き合ったっていう自覚ないからなぁ……。好きかどうかは正直まだわかんないかも」


「ん、素直だから許す!これからいっぱい好きにさせてあげるっ!」


「お手柔らかにお願いします」


「うん!じゃあ、ベッド行こ?」


「は?」


酔った女は突拍子で変なことを言うって会社の先輩が言っていたが、その意味をよく知った気がする。

180度膝の上で回転した氷野は真剣な眼差しだった。


「付き合った男女がベッドですることは一つだけだよ!体の相性も付き合うのに大切!大丈夫、どんな朝陽君でも私は受け入れるよ!」


「わかった。氷野、とりあえず寝ろ」


「えへへ、一緒に寝よぉぉ」


「わかったわかった。じゃあベッド行こうな~」


真剣な眼差しから一転。

かなり眠そうな目つきに変わったのでベッドへ移動し、寝かしつかせることにシフトチェンジ。


氷野を抱きかかえ、1LDKにしては広い隣の部屋へ移動した。

部屋は暗いが廊下の光で見える氷野の自室はリビングの家具と差は感じられないが、私物が視界に映る。

軽く部屋を見渡し、ベッドのほうへ向かう。


たった数歩程度だが、相当興奮していたのだろう。

すぐに寝息を立てた氷野をベッドへ横にし、布団を掛ける。


「おやすみ」


「おやすみぃぃ……」


時刻は既に3時半。

寝ても起きれる自信がないため、ベッド端に腰を下ろし、氷野の顔を覗き込む。


「やっぱかわいいよな…、あんまり実感わかねぇけど」


告白されたのも承諾したのも酔う前だからしっかり恋人になったのだろう。

しかし、人生であまり女性と関わりを持たなかった俺は何をもって付き合っているのか混乱している。

腰を上げ、床に座り、ベッドに背中を預ける。

スマホを手に取り、恋人っぽいことと検索して仕事の時間まで暇つぶしに徹底した。





~~~~~~~




氷野ひの穂乃果ほのか、19歳、12月21日生まれ。

高校の時は黒髪、ミディアムヘアー。

現在はブラウンに染めており、髪型は変わってない。

157cm、体重は秘密♪

スリーサイズも秘密♪(片手に収まるちょうどいいサイズの美乳)


高校1年で別クラスと合同の体育でバレーをしている朝陽を見て一目惚れ。

あまりオシャレとかに興味なかったが、その日を境に、校内でも1、2を争う美少女へ変化を遂げた。


高校を卒業後、理容師を目指し、美容系の短大へ進学。

かなり酒に弱く、男子と絶対に飲みに行かないようにと釘を刺されている。


※18歳成人でお酒は自己責任っていう設定です

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