第27話 和気藹々
「ねえねえ幸田、あれってどうやったの?」
試合が終わった俺たちは他の生徒の試合を見ながら反省会をしていた。いきなりの摸擬戦で驚いたが、こうしてクラスメイトとの距離が縮まるのはありがたくて、凄く良い授業だと思う。
「あれは触れてるって条件をクリアするためにナイフとワイヤーを接続して、投げたのと落ちてるのを交換することで死角から攻撃するって技なんだ」
俺が聞かれたことに答えると、あんこは興味深そうに頷きながら更に質問を重ねる。
「じゃああれは?あたしの刀奪うやつ」
「あれは単純に触れた瞬間に交換するだけ」
「だけって言うけど剣士からするとズルい技だよ」
「ズルいで言えばそっちもズルいだろ。何だあの能力。教えろ」
「ああ、あたしの魂言は【見切り】で刀の攻撃範囲内を動作なしで切れるの」
断られる前提での要求があまりにもあっけなく通ったことに、俺はつい驚いてしまった。
「すんなり教えてくれるんだな」
「あたしも幸田と同じで、すぐに秘密を教える馬鹿ってことだよ」
あんこは屈託のない笑顔でそう言った。俺は本当の魂言を隠しているというのに……。胸がチクリと痛むが目的のためには仕方のないこと。俺はそう自分に言い聞かせた。
「り、凛音君の手からナイフが出てたのはどうして……、ですか」
「敬語はいらないよ、環さん」
「は、はい……!わかりまし……、わか…わかり…った?」
緊張しているのか、しどろもどろになりながら会話をする向日葵。俺のような凡人にもわかるほど、彼女は凛音に心惹かれている。
「ふふふっ。わかった、でいいんだよ」
「うん。わかった、凛音君」
「それで僕の魂言だったね。僕のは【変形】。色んな姿かたちになれるんだ。その過程で体に武器を隠せるようになったから、こうやって――」
言いながら、凛音は手の平からナイフを押し出した。改めて見ると本当に暗殺向きだ。自然に肩に手をかけてナイフを出すだけで任務完了。実にスマートだ。近づくのも擬態、変装と中々に便利である。
「って、お前も教えていいのかよ」
「彼女たちは信用できそうだから」
「嬉しいこと言うね」
「あ、ありがとう……」
「彼女たちはって、俺も信用してるよね?ね?」
「……うん」
「なに!?今の間はなに!?」
「環さんはレーザーを出してたよね」
「話を逸らしやがった!?」
「私の魂言術は大したことないんです。【熱視線】って魂言で、ただ視線に応じてレーザーを照射するだけなので……」
うつむき加減で謙遜する向日葵に対し、凛音は目を見開いて興奮気味に主張した。
「何言ってるんだ!めちゃくちゃカッコいいじゃないかレーザー!」
「そ、そうですか……!?」
「そいつロボットとか好きだからレーザーに憧れてるんだよ」
「いいなあレーザー、羨ましいなあ」
「あ、ありがとうございます。嬉しい……」
「良かったね、向日葵」
「うん!」
なんだか和気藹々としていてすごく心地の良い空間だ。やっぱり学生生活といったらこんな感じの青春っぽいのが一番だな。
これでもし、実はあんこも凜音が好きでした~、とかいうドロドロした三角関係の展開になったら目も当てられない。二人にはずっと仲良くしていてほしい。
まあ、たぶん大丈夫だろ。
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