第24話 暗殺
「あ、ありがとう、あんこちゃん……!」
前髪で目が隠れた少女、
「向日葵が攻めて私が守る。あたしたちのコンビネーションは最高だよ!」
「うん……!」
仲睦まじい二人の姿に心が洗われるようだ。こうしていつまでも見ていたいがそういうわけにもいかない。俺は次の準備に取り掛かる。
「ナイフ1本無駄にした」
「あとで使うから!」
こちらの相方は文句を言ってくる始末。コンビネーションは向こうに分がありそうで、しかも遠距離攻撃を持つ相手が有利。それでもやり方が無いわけじゃない。
「そろそろ行こうぜ」
「どうやって?」
「そりゃあ……」
俺は軽い身のこなしで商店街の屋根伝いにアーケードの屋根まで上り、少し離れた向日葵とあんこを確認した。
「正々堂々、暗殺だろ」
「了解」
俺が走りだすと同時に凛音が物陰から飛び出し、別の物陰へと移った。俺は上から、凛音が下から接近して叩くという作戦だ。
「向日葵お願い!」
「うん!」
もちろんそう簡単に接近を許してもらえるわけがない。注意を分散した結果、狙われたのは俺の方だった。モテる男は辛いね。
先ほどははっきりと見えなかったが今回は相手を注視する。赤い閃光はどこから出ているか。速さは、射程は、威力は、そして弱点は。どれだけ早く理解し、行動に移せるかが非常に重要である。
「来た」
屋根から見下ろすとよく分かった。赤いぼんやりとした光が灯るあそこから攻撃が来る。それは長い前髪で隠れた向日葵の眼。視線とは、まさしく死線だったのだ。
向日葵の眼から放たれる赤い閃光が真っすぐこちらへ向かってくる前に俺は直進をやめ左方向から回り込む。この判断によって初撃は躱すことができたがこれで終わりではない。レーザーは視線の移動によって瞬時に回避に対応する。それはアーケードの屋根を焼き切りながら俺のすぐ間近まで迫って来た。
「潮時か」
俺はアーケードの透明な屋根を突き破り地面へと着地した。地上を走っているだけでは今の攻撃でゲームオーバーだっただろうが、3次元的な動きを交えて相手に照準を絞らせなかったため無事避けきった。とはいえまだ接近戦ができる距離ではない。何か行動に出ないと次が来る。
「これはどうだ」
俺は2本目のナイフを投げる。先ほどとは違う方向からの攻撃に防御担当のあんこは耐えられるだろうか。しかも今回は1つ難易度を上げる。俺のナイフは向日葵を直接狙わず、あえて右に逸らした。
「失敗?」
そう思ったあんこの隙をつく攻撃。放たれたナイフは、地面に落ちている最初に投げたナイフに跳弾し、あんこの視界の外から向日葵を狙う。ナイフ同士の衝突による金属音でその狙いには気づかれたがもう遅い。あんこが抜刀するより早くナイフは到達する。
はずだった。
再びの金属音。あんこは納刀したまま、間に合わないと思われた攻撃を叩き落としてみせたのだ。
「言ったでしょ。100年早いって」
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