第22話 摸擬戦

「試合開始」


 先生の緊張感のない合図とともに修練場の地形が変化し、わずか数秒で商店街が完成した。ホログラムかと思い手を伸ばすと、しっかりと質量のある外壁に指先が触れた。


「うおー、スゲー!」

「凄いだろこれ。この修練場は世界のトンデモ技術がこれでもかってほど詰まってるからな」


 驚く生徒に先生は自慢げに応える。戦闘訓練などに利用する多目的フィールド生成システム。設定を変えることでどんな状況でも再現できるという。


 さらに制服に内蔵されたセンサーを元に、一定以上の攻撃を一度だけ自動で防御する訓練用自己防衛システム。修練場内でのみ作動するこれを用いて実践さながらの模擬戦を可能とした。いったいどれだけの金がかかってるんだ。想像もできない。


 とにかくやることは1つ。攻撃を当てて制服の防衛システムを作動させる。それだけだ。


「行くぞ凛音」

「うん!」


 先手必勝。俺は凛音から借りたナイフを片手に勢いよく対戦相手に突っ込む。


 つもりだった。


「【熱視線ヒートゲイズ】……!」


 か細い声。しかしながら強い意志を持った声と同時に、赤い閃光が頬をかすめた。


「熱っ!!!!」

「財、大丈夫!?」


 慌てて物陰に身を隠す。頬についた傷跡は熱を帯びており痛みは引かない。攻撃の前に聞こえた彼女の言葉。あれは間違いなく魂言、つまり魂言術による攻撃だ。しかし、あれは紛れもなく――


「レーザー光線だ……!」

「レーザー!?」

 

 これはまずい。非常にまずい。どのくらいまずいって、ふんどし一丁で富士登山に向かうくらいまずい。


「やばいぞ凛音」

「そうだね……」


 俺の意図が伝わったのか凛音も神妙な面持ちで相手の様子を伺っている。


「レーザービーム超カッコいい!!」


 羨望の眼差しだった。

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