第8話 場所
「さすがに暑いな」
俺たちは学園を出て、暑い日差しの照りつける街へと散策に向かった。
「ここが図書館。本土にはない魂言術についての資料も置いてあるんだってさ」
「本はまったく読まねーや」
「少しくらい読もうよ」
「ここは中華料理店。入り口で買える小籠包がとっても美味しいんだよ」
「店員はチャイナドレスか?」
「そこ重要?」
「ここはカフェ。スイーツビュッフェもあって女の子と来るのにオススメだよ」
「俺には縁が無さそうだな」
「ドンマイ」
「ここはプラモデル専門店。女の子と来るのにオススメだよ」
「お前も女に縁が無さそうだな」
「え?なんで?」
そうして凛音と俺は交友を深めながら渡来和島を歩き回った。1時間以上は歩いただろうか。太陽が真上まで迫っている。
「そろそろ帰ろうぜ」
帰る、と言ってもまだ見たこともない渡来和学園の寮を初めて訪れるのだ。散策も楽しいがそちらも楽しみで仕方がない。ちなみに凛音も寮は初めてらしい。
「次で最後だから」
そう言うと凛音は俺の前を迷いなく進んでいく。道の分からない俺は遅れるわけにはいかない。見失わないように凛音の後をしっかりとついていった。
「ここだよ」
角を曲がったところで凛音が足を止める。
「ここは……」
やっと気がついた。俺はこの場所を知っている。
「君が今朝、襲われた場所さ」
どうして凛音は俺をここに連れて来た……?
「僕に教えてくれよ。君の、秘密を!」
凛音は振り返る。その手にはナイフ。
切先は迷いなく俺の喉元を目指していた。
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