第15話 報復

「ハァ……ハァ……、た、助けて……」

「もう諦めろ」

「だ、だから……ハァ……ハァ……僕は……」

「まだお仕置きが必要だな」

「待って!これ以上はもう――」

「駄目だ」


 段ボールで溢れる寮の一室に、凛音の言葉にならない叫びが響き渡る。俺はその叫びに掻き消されないよう凛音の耳元で声をかける。


「いい加減認めたらどうだ」

「も……もう認めたっ…からっ……!」

「信用できない」

「ゆっ…るじ……でぇ……」


 残念だったな凛音。てめーは俺を怒らせた。これは路地裏で刺そうとした件とチンピラの巣窟にブチ込んだ件の報復だ。


 というのは建前で、実際は凛音のリアクションがあまりにも良いもので楽しくなってしまったのだ。実に愉快。


「げんかいっ、限界なんだっ!」


 這うようにして逃れる凛音を捕まえることは造作もないことだった。俺が両腕で体を引き寄せると、抵抗することもできずに凛音が力無く目の前に転がる。


「おねがい……、おねがいだからぁっ!!」


 顔を紅潮させて涙を流しながら懇願するその声に、俺が応えることはなかった。


 怯えた目で情に訴えかけ、静止を求めて言葉を紡ぎ、弱々しく首を横に振る凛音に迫り、俺は両手で腰を掴んで引き寄せた。


「行くぞ」

「あっ…あっ……」




「こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ」

「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃいひひひひひひひうぇへへへへへへへおふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉ」






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