第13話 根拠

「ち、違いますよっ……!?」

「……」


 急な敬語に上擦った声。凛音は誰がどう見ても嘘をついていた。もはや冷静ではないのだろう。男性の姿をしていながらも、俺の視線が胸元へと移るとすぐに腕を組んで隠した。


「今更隠し通せるわけがないだろ」

「だから知らないって」


 無駄な抵抗を見せる凛音に認めさせるには、納得するだけの根拠が必要らしい。仕方ない。俺の天才的な推理を聞かせてやるとするか。


「思い返せば今日の会話で何度か違和感があった。それこそがお前が女である証拠」

「違和感だって……?」


 信じられないといった表情で俺を見る凛音。


「前提として、お前が男だったら女にはモテない」

「なんでさ」

「女とプラモデル専門店に行こうとする男がモテるわけないだろう」

「そんな……」


 そこ別に驚くところじゃないだろう。


「にも関わらずお前は女子に人気のスポットにやたら詳しかった。このことからお前はプラモデル好きの女子と仮定できる」

「女子にやたら詳しい男子かもしれないだろ!」


 そう来ると思ったぜ。


「それはありえないんだよ、凛音。だってお前は言ってたじゃないか」

「何を言ってたっていうんだよ!僕がヘマをするわけがない!」


 いや、そのセリフがもはやヘマなんだが……。


「いいか凛音……、チャイナドレスが好きじゃない男なんていないんだよ」

「なん……だって……」

「お前はどうでもいいような事言ってたけどな、店員がチャイナドレスかどうかは最重要なんだよ、男の子にとってはよぉ!」

「そんな……」


 それと、廊下で勃起して動けない俺に気付かなかったから、という最大の理由は言わないでおこう。




 

 

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