第3話 言い訳

「すいません遅刻しましたぁ!!!!」


 勢いよく教室に飛び込んだ俺は、息を切らしながら大きな声で謝罪をした。時刻は10時12分。結局1時間以上の遅刻だった。


「入学初日から遅れるとはいい度胸だなぁ!」

「イタっ!」


 このクラスの担任とみられるメガネのモジャモジャ頭が語気を強めながら眉間を何度も指で小突いてきた。初日から体罰とはいい度胸だ。教育委員会に訴えてやる。


「登校中に通り魔に襲われたんですよ!俺は悪くない!」

「今どき通り魔なんてあるわけないだろ」

「ほら見て!制服もボロボロでしょ!?入学初日なのに!」

「まあ、たしかにそうだな……」


 渡来和島への移送船で支給された一張羅がものの数日でおしゃかになったのは痛手だが、なんとかこれで遅刻は許されたようだ。


「でも遅刻は遅刻でーす」


 許されてなかった。


「なんで!?」

「通り魔にあっても間に合うようにもっとゆとりを持って家を出なさい」

「理不尽すぎる!」

「世の中何が起きるか分からないからな」


 さっき通り魔なんてあるわけないって言ってたよなこのモジャメガネ。


「1時間以上早く出たんですよ」

「じゃあ間に合うだろ」

「警察の事情聴取が長かったの!」

「ホントかな~?」


 いちいち腹立つなモジャネ。


「彼の話は本当ですよ」


 その時、俺の背後、つまり廊下から声がした。振り返るとそこにいたのは、俺と同じ制服を着た銀髪碧眼の美少年。


「見てたんですよ。現場で警察の方と話をしているところ」


 クールで近づき難い、というのがそいつの第一印象だった。


「はい、お前も遅刻な」

「そんな!?」

「やーい、お前ビリー」

「僕は君のせいで回り道をするハメに――」

「遅刻は遅刻だろ。ですよね、先生?」

「何が起きてもいいようにしないと」

「理不尽だ!」


 全然クールじゃなかった。

 





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