第99話 総力戦
「これは、各個撃破は難しいかな」
マサムネと別れて別ルートで合宿場を目指している俺は霊眼を使い敵の大まかな配置を見て予定していた各個撃破は難しいと結論を出す。
マサムネから聞いた騎士サイドの作戦はクロウくんが地下室の扉の前を警護して、タロットがマサムネを抑え、残りの全員で俺の足止めをするというものだった。だから、各個撃破して行こうと思った訳だが皆が一箇所に固まっている為それも難しい。
「あの数を相手にするのは流石に骨が折れるな」
現在、俺を迎え撃とうとしているメンバーはフレアさん、ソフィアさん、リリムさん、タロット、クラリッサさん、カルトさん、ルクスくんの七人に加えてリリムさんの眷属が十三体、実質的に二十対一の戦闘を強いられることになる。
そう考えてるとやっぱりリリムさんの霊装は厄介なことこの上ない。だから、本体を先に叩くのが一番だ。ルクスくんもそうだったが霊装によって顕現させたものは盾や眷属に限らず基本的には本体を倒せば消える。
既に影の眷属が出された状態でグラウンドで待機している騎士サイドの面々を建物の上から見下ろしながら俺は静かに居合の姿勢を取る。
「先手必勝、刹那」
上からということもあり普段の刹那とは違い一度落下し壁を蹴る形となったがそれでも俺は狙い違わずリリムさん目掛けて一瞬で間合いを詰める。
「えっ?」
「切り捨てごめん」
これでリリムさんは倒せた上に影の眷属も消えた。そう思ったのも束の間、悪寒を感じた俺はすぐにその場を離れ俺が居た場所にはリリムさんの大鎌が振るわれていた。
「み、皆さん!レイドくんが来ました!」
「おぉ!本当に来てくれた」
「レイドはこの手の誘いには乗ってくれる人だから当然」
リリムさんの出した声により皆にも俺の存在を気付かれてしまった。もし今の一撃でリリムさんを仕留められていたら一度離脱をして再び奇襲という作戦も取れたが今回は最悪の形で開戦となった。
「はぁ、これで二十対一。いや、十九対一になるのか。相変わらず便利な霊装だねリリムさん」
「はい、レイドくんが奇襲を仕掛けるなら私ですから、予め手は打たせてもらいました」
リリムさんの霊装、
そのことから考えられる可能性は一つ、前回の戦闘では見ることのなかった
「私たちのことも忘れないでくださいね
「じゃ、じゃ私も
「遠距離系は少し厄介だな」
少し所じゃない、確かに俺は銃弾程度の速度なら躱すことは出来るが霊装の能力ともなれば話は別だ。七つの弾丸を切り替えて使えるクラリッサさんの
「皆さん、レイドさんに遠距離攻撃は有効です。このまま近づかずに遠距離攻撃に徹してください」
「ソフィアさん、ルクスさん、
「任せて、
「僕の方も展開出来ました」
「
「皆さん、この戦況を維持してください。近接タイプはいつでも動けるように準備を、リリムさんは眷属で自身を守ってください」
「カルトさん、弾道を読まれているので私を担いで移動をお願いします」
「
「ルクス、空中の盾でレイドの四方を囲って。
「ソフィアさん、レイドさんの後ろに半円状の氷の壁をお願いします。
凄いな、荒れ狂う攻撃の波に晒されながら俺はひたすらに感心していた。一度剣舞際で戦ったことがあるフレアさんやクラリッサさんなら兎も角他の全員もかなりの練度で連携が取れている。
それにフレアさんの指揮も以前に比べ相手の嫌なところを付けるようになってるしリリムさんの指示も的確になっている。これなら、面白い戦いが出来そうだ。
「これだけやっても無傷とか、おかしいでしょあの人」
「レイドは強い。それに、まだ上がある」
「同感です。なので、次の手を打ちます」
フレアさんの指示を受けて即座にソフィアさんがグラウンドの中央へと移動する。その間も矢と銃弾の雨は続いていた。
「では、お願いしますソフィアさん」
「ん、任された。」
「あぁ、そういうことか」
ソフィアさんがグラウンドの地面に霊装を突き刺したことで俺は今後に起こる展開を瞬時に予想した。そして理解する、なぜ俺との戦いの舞台にこの広いグラウンドを選んだのか。
「
ソフィアさんの剣から冷気が地面に伝わりグラウンドは一瞬にして壁と柱だらけの氷のフィールドへと変えられてしまう。ある意味で一番厄介な地形操作の能力、地の利を活かすと言う言葉が生まれるくらいには戦闘において重要な地形を仲間の行動に合わせて好き勝手いじくれるそれは脅威以外の何ものでもない。
「
「ここからは近接戦闘を織り交ぜて攻めていきます。遠距離系の攻撃は援護程度でお願いします」
本当に、良い意味で面倒になってきたな。
「
「驚くくらい良い練度をしてるね。だから俺も少しだけ本気で行くよ。覇王斬」
「くっ!」
何度か霊人化を使った影響で俺の霊装の出力も少しだけ上がっている。今のフレアさんを吹き飛ばすのは訳ないことだ。
「
リリムさんの指示を受けた
「任されました。シールドプレス」
影の拘束の次はルクスくんの大盾四枚によるプレスが俺を襲う。なかなかにいやらしい攻撃をしてくれるものだ。そして、ここまで来れば最後の締めが何なのかも容易に想像が付く。
「凍ってねレイド。
上手いな、ただの氷では俺は簡単に壊せてしまえる。そこで影を使い全身を拘束した上で盾でさらに身動きを封じ、影から地面を使って氷を走らせ盾ごと俺を拘束する。これなら壊すのに多少は手間が掛かりそうだ。
「平然とされていますが私の能力をお忘れですか。
氷の中で身動きの取れない俺の肩目掛けてクラリッサさんは透過する弾丸を放つ。クラリッサさんの他にもカルトさんは魔装を纏って臨戦体制に入っているしフレアさんも体勢を立て直していつでも攻撃出来るようにしている。
ロゼリアさんを待つまでの時間稼ぎとしても敵の捕縛としても満点を上げたくなるほどの出来栄えだ。これで並の犯罪者なら彼女らでも拘束出来ることが証明された。
では、並でなければどうだろうか?
初めにその異変に気付いたのはソフィアさんだった。
「皆んな警戒して、拘束が解かれる」
「はっ!あぁ、寒かった」
少し強引ではあったけど拘束は解けた。後は一人一人仕留めて行くだけだ。
「刹」
「そうはさせないよ!」
「へぇ、やっぱり速いね。カルトさん」
まずは影の眷属を排除しようと刹那を放とうとするも凄まじい速度で飛んで来たカルトさんによって防がれてしまう。やっぱり、予備動作の隙は大きいようだ。
「くっ、後ろか」
「リリムさんの霊装ってほんと便利だよね。仲間でいる分には心強いよ」
さらに鍔迫り合いの隙を突かれて
「ここで一気に畳み掛けましょう。
「
「クラリッサさんは僕の盾の上に乗って上空から狙撃をお願い」
「助かります」
これは、手加減してたら本当にやられそうだな。出来ればマサムネの戦いが終わるのを待ってロゼリアさん用に連携の確認をしておきたかったんだけど、この際仕方ないか。
まずは、みんなの体勢を崩そうか。
「絶拳」
攻撃の手が緩んだ少しの隙をついて俺は剣を左手に持ち替え全力の絶拳を地面に向けて放つ。すると、合宿場全体が地震でも起きたかのような振動に襲われて氷のフィールドは一瞬にして崩壊を始めた。
「一気に決めるか。空歩、断解……刹那永遠」
僅か数秒、決着はそれでついた。
「それじゃあ、悪いけどみんな縛らせてもらうね」
空歩による立体機動、断解による霊装の切断、そして刹那永遠による反応出来ない高速抜刀、やっぱり俺の霊装は便利過ぎる。
「さて、マサムネのことでも待つか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます