進化を続けるベテラン ボフォースL70

ボフォースL70は、スウェーデンのボフォース・ディフェンス社が開発した対空砲システムです。1940年代に開発され、現在でも多くの国々で運用されています。


ボフォースL70は、自動装填機構を備えた40mm口径の高射砲と、それを制御する射撃指揮装置から構成されています。

砲弾は連続して装填され、高い射撃速度を実現することができます。また、射撃指揮装置によって、追尾レーダーを利用して目標を自動追尾することができます。


ボフォースL70は、対空防御任務において、高い命中率と信頼性を発揮しています。

また、軽量かつコンパクトな設計によって、搭載・運用も比較的容易であり、様々な車両や艦船に搭載されることができます。


これが、ボフォースL70の概要となります。

1940年代?と思われる方もいらっしゃるでしょう。


年代で言えば、ゼロ戦と大きくは変わりません。

プロペラ機を相手にするための機関砲であり、現代のミサイルやジェット戦闘機には中々厳しい戦いを強いられるでしょう。


ともすると博物館行きの骨董品がなぜ送られたのか、なぜ送れる状態になっていたのか。

不思議に思いませんか?


L70は直径40mmの砲弾を使うことで、高い単発火力を実現しています。

戦闘機などは一発でも致命傷となります。


一方で連射能力は低く、分間330発が限界です。

現代の機関砲は400〜3000発のものが多く、高速で複雑な動きをする目標にはそもそも当たりにくいという問題があります。


-5°から90°まで砲身の角度を取ることができます。つまり直上の目標にも射撃できるということであり、優秀と言えます。

全周旋回できるので、障害物さえなければありとあらゆる方向の敵と戦えます。


必要人数は4〜6人。うち2人は、弾を補給する係です、


機関砲は土台を含めると4.8tもあり、そのままでは移動が困難です。

トラックなどに載せれば機動力は大きく改善しますが、サスペンションが動いて揺れるため精度は下がります。


装甲車などに搭載したモデルもありますが、ウクライナに供与されたのはL70のみなので解説を省きます。


射程は12kmほどですが、無誘導のため命中率は低く、命中を期待できるのは3km以内でしょう。

これは目標の速度や移動方向などで前後します。


しかし、先に書かれたようにレーダーで追尾する改良型(というか単にL70にレーダーをくっつけた)のL70 BFOIが存在します。

Jバンドレーダーを使っており、悪天候に弱いものの精度の高いレーダーであることが示唆されます。


L70 REMOではレーダーと連動して爆発位置を砲弾に指定し、敵の近くで爆発させることができます。

この改良により、命中率を向上させています。


ウクライナに供与されたL70は、性能的にはL70 REMOの次の段階にあるものです。

赤外線カメラとレーザー距離計を備え、PFHE Mk.2という砲弾を使用することが出来ます。


PFHE Mk.2は砲弾が微弱なレーダー波を発しており、レーダー波の反射の大きさで目標の近くにあるかどうかを判別します。

反射が急激に増大すれば、砲弾が目標の近くにあるということなので、そこで爆発すれば爆風と破片でダメージを与えることができます。


射撃後200m進むと安全装置が解除され、500m以上進んだ地点でレーダー波の放出を開始します。

爆発時には2000個の破片が生成され、それら全てがマッハ3〜4の速度で飛び出します。


航空機に対しては6m以上離れていても感知し、爆発します。

巡航ミサイルに対しては4.5m、そしてドローンのような小さくて低高度の目標にも、3m以内を砲弾が通り過ぎれば爆発して破片をばら撒きます。


対ドローン。これがL70が期待される理由です。

ミサイルは金がかかりすぎ、対ドローン銃は射程が短い。レーザーやマイクロ波兵器は開発中か、数が少なすぎる。


では砲弾で、というのが現状であり、L70はその需要に即した兵器です。

これが直撃のみで落とす兵器であれば、捨てられていたでしょう。しかしPFHE Mk.2により、強力な対空兵器へと生まれ変わっています。


ウクライナは、巡航ミサイルや自爆ドローン攻撃に晒されています。

それらを数発で撃ち落とせると言われるこの砲弾は、強力な防空助っ人です。


ドローンのような低速な相手なら、毎分300発でも十分でしょう。

現に、Skynexという最新の機関砲システムはドローン対策を主眼にしており、毎分250発しか撃てません。


現在はシャヘド136のような自爆ドローンを相手にすることが目的で配置されていると思いますが、前線付近に持っていっても戦えるとは思います。

ただ、射程が短いことには注意するべきでしょう。柔軟な運用には、何かしらの車両に搭載することが必要となります。


ボフォースL70は、対空としても使えますが装甲車を相手にすることもできます。

AP弾は100mの距離で、斜めの装甲板を50mm貫通できるので、数百メートル先からロシアの装甲車の大半は貫通できます。


細かい貫通力は分かりませんが、AP弾よりも間違いなく貫通力を増しているAPFSDS弾であれば、距離1kmで射撃してもダメージを与えられるはずです。

実際にウクライナ軍がどのように運用していくかは分かりませんが、シンプル故に最新の戦術に対応でき、自衛能力もバッチリなL70は多くの場で活躍できるはずです。


ご老体には悪いですが、今一度戦場で暴れてもらうことにしましょう。

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