無名の功労者 M1117ガーディアン
ガーディアンはハンヴィーやM113といった車両より知名度の低い車両で、名前を聞かれた方は多くないと思います。
それもそのはず、憲兵隊用に生産された車両であり、後方の警戒監視、つまりパトロール任務に使われる車両だからです。いわゆるパラミリ(準軍事)に近い任務向けですね。
最前線を駆けまわり華々しく散る車両よりも知名度で劣るのは仕方ありませんが、2000台以上生産され、性能面では負けず劣らずの優秀な車両です。
というか、ハンヴィーのようなSUVに毛が生えたみたいな車両よりも重装甲であることを買われ、最前線の任務にも従事しています。
まず、見てわかるのは窓の小ささです。さらに装甲はただの鉄板ではなく、戦車にも使われる複合装甲と破片防止用のライナー(タイツをめちゃくちゃ頑丈にしたようなもの)を備えます。
その厚さは戦車に比べれば遠く及ばないものの、銃弾や地雷に耐え、対戦車ロケットランチャーの攻撃を軽減します。
車体は全体的にV字型になっており、これが傾斜装甲の役割を果たします。
銃弾が斜めに当たりやすく、銃弾から見た時の装甲の厚さが実際の装甲の厚さよりも大きくなります。また、場合によっては装甲表面を滑ることも期待できます。
この装甲は簡単に追加でき、損傷したらすぐに取り換えることができます。
大型の地雷に対して耐えられるかは運も絡みますが、耐えた実績があります。
四つのタイヤすべてがパンクしたあと、45kmを走って味方の元に帰った事例もあります。
これは車高の高さとV字の底面が爆風を良く逸らすからです。
また、生物化学核(NBC)兵器にも対応しています。
火力は高く、360°旋回式の銃塔を備えています。
40mmグレネードランチャー又はM2重機関銃を主砲、軽機関銃を副砲とし、特に近距離の歩兵に対して高い火力があります。
20~50mmの装甲を貫通するため、ソ連系の装甲車にも有効です。
タイヤ式の装甲車両なので最高速度も高く、101kmで走ることができます。
15tの重量に260馬力(スポーツカー並み)のエンジンを備え、加速も悪くはありません。
ハンヴィーには劣りますが、それでも12km/hの差でしかありません。
水陸両用で、河川があっても進むことができます。
ガーディアンは地雷防御と人員を乗せるために、火力や装甲の割に大きくて背の高い車両となっています。
横転しやすく遠くからでも目立ちますが、車内が広く、兵士の代わりに様々な機器を搭載することができます。
指揮車両や、より前線に出て目標を指示する火力指示車両、救急車などの派生型があります。
特にM1200アーマードナイト フィストV、通称ナイトと呼ばれる派生型は、レーザーやGPSによる火力誘導ができ、誘導爆弾や砲撃を誤差1mで撃ち込ませることができます。
ここまで来ると完全にミリタリー(軍事)向けであり、後方だけでなく最前線でも信頼されていることが分かります。
提案後に却下された車両や外国の派生型まで含めると15種類以上が存在し、さながら大家族のようです。
米国製兵器は様々な改造を施しやすい(拡張性が高い)ものが多く、ファミリー化されやすい傾向にあります。
どのようなタイプをどれだけ供与するのかは不明ですが、いずれの型でも有効に機能するでしょう。
すでに似た車両としてフランスのVAB装甲車が活躍しており、今のところ目立った欠陥も無く動いています。
ただ、VABは重量の割にタイヤの数が少ないためか泥に弱く、放棄される割合が高いように思えます。
これはガーディアンでも同じ傾向がみられるでしょう。
アメリカは軍事用の装甲車として十分に機能するガーディアンを供与することで、ロシアに対する姿勢をより明確にしました。
装甲車を供与するという姿勢は、ストライカーやM2ブラッドレーのような、より強力な装甲車の供与の布石になり得ます。階段を一つ上がったと見てよいでしょう。
一方で、開戦後からアメリカは「ロシアは急に刺激すると核を使う」という懸念に基づき行動しているように見えます。
ガーディアンを選んだのは、たまたま廃棄予定の保管車両がそこにあったから、という理由だけではないでしょう。
ガーディアンは、普通の装甲車よりも政治的に穏便だから選ばれたという面もあると思います。
元々はパラミリ用です。後方支援車両である、またはそれに近い言い訳を使ってエスカレーションの度合いを下げることができます。実際に米軍では主にそう使っているのですから。
当然そんなことを本気で思っているはずもなく、最前線でも十分に活躍できると踏んでいるでしょう。
ハンヴィーで突っ込んで戦果を挙げるウクライナ軍なら、ガーディアンでも戦果を挙げます。実際に米軍では、そう使ってもいるのですから。
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