高性能な駄作戦車を改良せよ T-55S

T-55は旧ソ連製の戦後第一世代MBT(メインバトルタンク、主力戦車)です。

この〇世代MBTというのは現在3世代まであり、本邦の10式を皮切りに3.5世代MBTが台頭しています。


つまりMBTとしては最初期の戦車であり、現在では旧式化著しいタイプの戦車ともいえます。

100mm砲、50km/hの機動力、重戦車に負けない装甲とバランスのいい戦車であり、当時は最強の戦車と呼ばれていました。また多数生産され、多くの紛争に投入されてきました。


最強と言われていましたが、車内が狭くて装填が大変、100mm砲は西側戦車の90mm砲と同程度の威力、光学装置や遠距離での命中精度の悪さといったスペックに出にくい部分が弱く、西側戦車との戦闘では苦戦を強いられました。

また、操縦手もギアチェンジに苦戦することがあったようです。


特に現場にとっていい戦車とは言えない本車でしたが、腐っても高性能戦車ではあり、また多数生産されたことから各国では改良型が多く作られました。

スロベニアのT-55Sもその一つで、T-55の弱点をなるべく潰した改良型となっています。


主砲を西側の105mm砲に換装し、熱による変形を抑えるためのサーマルスリーブを装着。

これにより貫通力は33cm程度から40cm程度へアップしていると思われます。


急速に陳腐化した装甲には、イスラエルのラファエル社製ERA(爆発反応装甲)を装着し、21cm相当であった装甲を「対HEATで」61~81cm相当へ上げました。

エンジン出力は80馬力(コンパクトカー一台分)向上させ、加速性を改善。


電子機器類では弾道安定コンピュータと二軸式スタビライザーの照準器で命中率を大きく向上させています。

また、車長が見つけた目標を口頭のやり取り無しで射手に照準させられるライドオンターゲット機能と、レーザー警告機と連動した発煙弾発射機の追加によって攻撃力、生存性も上がっています。


多くの性能向上を果たしたT-55Sは、ロシア軍主力のT-72戦車の側背面装甲を貫徹し、T-72戦車の攻撃を防ぐ可能性を持ち、他部隊の援護下や幸運な場合、短時間であればT-72と対等に戦えるだけの戦闘力を持っています。


しかし元々が旧式であり、装填の難しさについては改善されておらず、二線級戦車の域を出ません。

また大きく向上した防御力も、ERAという使い捨ての装甲に頼り、それでいながら第三世代MBT以下、しかも対戦車戦闘で多く使われるAPFSDSには未対応というのが現状です。

(対APFSDSだと装甲厚は22~24cm程度)


こうしたことから、正面切っての撃ち合いもまったくできないわけではないですが、歩兵集団や歩兵陣地、装甲車などを、それらに比べれば圧倒的な攻撃力と防御力で殲滅することが主な任務になると思われます。

軽量な戦車なので、主力部隊の後詰としては良いでしょう。

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