「最強 」の血統 レオパルト2 後編
このページでは、レオパルト2の各国派生型、その中でもウクライナに供与されそうなものを解説していきます。
まずは簡単に行きましょう。供与予定(2023/1/30)かつほぼ改造されていないレオパルト2を、確定不確定問わず列挙します。
ポーランドのレオパルト2A5、ポーランドの2A6、ノルウェーのレオパルト2A4NO、ポルトガルのレオパルト2A6、スペインの2A4、オランダのレオパルト2A5、フィンランドのレオパルト2A5
これらは全くと言っていいほど改造されていません。オランダのレオパルト2なんかはリース品で、完全に本国仕様です。
小さな変更点や、ノルウェーのように自国生産しているなどの違いはありますが、特筆すべき事項は無いでしょう。
2A4、2A5、2A6の違いについては前ページ(https://kakuyomu.jp/works/16817330649510939769/episodes/16817330652500615087)をご覧下さい。
一方、国ごとに大きな改良を施されたレオパルト2は、デンマークのレオパルト2A5DK、カナダのレオパルト2A4M CAN、ポーランドのレオパルト2PL、スウェーデンのStrv.122の4種類です。
※この先、装甲厚や貫通力の数字が出てきますが、多くが機密情報であり推測に基づくものです。分かりやすさ・読みやすさを重視して細かい数字でも断言していますが、推測が正しいという仮定の下で行っています。
レオパルト2A5DK
デンマークの名を冠した2A5DKは、レオパルト2A5+とも呼ばれる改良型です。
元々、デンマークは2A4を保有していました。これを2A5相当に改修しています。
2A5相当と言っても、2A6から55口径砲を抜いて44口径砲のままにしたという話で、装甲は2A4時代と比べてかなり強化されています。
2A6相当ということで本国仕様の2A5よりも装甲は強化されており、またエアコンが装備されているため快適性も高いです。
装甲がどれだけ強化されたのかは、Strv.122と共に解説します(強化内容が同じ)。
また、重量は増加しています。
レオパルト2A4M CAN
カナダの名を冠した2A4M CANは、元々オランダ陸軍が余剰品(用途廃止品)として放出したレオパルト2A4です。
これを買い取ったカナダ陸軍は、レオパルト2A7+と同じ追加装甲を装着させました。
この追加装甲はモジュール装甲と言い、付け替えが容易になっているので破損してもすぐに替えることが出来ます。
これにより、数cm~十数cm程度装甲厚がアップしていると思われます。
レオパルト2PL
レオパルト2PLはポーランドの2A4の改修型で、新砲弾と分厚い装甲を備えています。
元が古いために弱点部も多い戦車ですが、大量の追加装甲によって対APFSDSで120cmとも130cmとも言われる防御力を実現しました。
(ただし、公式には2A5を超える程度と表記されており、80〜100cmの間に収まる程度かもしれません)
恐らく対HEATは2m近い厚さになっており、あらゆる砲弾・ミサイルを弾きます。
しかし照準器の部分には追加装甲がなく、防楯の部分も薄く、さらに車体は素のレオパルト2A4のため、砲塔の最大装甲厚に比べてすきの多い戦車でもあります。
使用できる砲弾はDM63となり、距離2kmで65cmの貫通力を有します。
また、ロシア戦車によく付いている爆発反応装甲(ERA)を作動させない仕組みを持ち、コンタークト1、コンタークト5を無力化します。(つまりほとんどのロシア戦車を貫通する)
ただし、より新しいレリークトは作動してしまいます。それでも貫通するとされていますが、事実だとしても貫通力が低下することによる威力の低下や、本来の貫通力を発揮できない可能性が高まるといった影響は考えるべきでしょう。
他にもDM11が使えるため、歩兵、軽装甲車、戦闘ヘリなどへの戦闘能力が上がっています。
Strv.122
Strv.122(ストリッツヴァグン エートゥンダシュグトゥーア)はレオパルト2A5をベースに防御力を強化したスウェーデンの戦車です。
スウェーデンの次期主力戦車トライアルではM1A2エイブラムス、レオパルト2A5、ルクレール試作型が参加しましたが、レオパルト2A5が総合的に優秀であり、採用を果たしています。
砲塔、車体ともに防御力が増しており、それぞれ平均して2〜3cmと5cmほど厚みが増しています。
また、Strv.122は側面や上面の防御力も向上させており、ある程度の角度をつけていれば側面に入ってきた戦車砲弾を弾くことができます。
これにより、砲塔正面の左半分を平均すると対APFSDSで82cm程度、対HEATで165cm程度にもなります。
上面装甲は砲弾の空中炸裂などに対応する目的で付けられ、運が良ければジャベリンのような上から落ちてくる対戦車ミサイルや自爆ドローンにも対抗できます。
かつ、レオパルト2PLのような大きな弱点部は少なく、非常に防御力の高い戦車に仕上がっています。
ただし、車体正面下部の防御力は低く、ここを貫通されると手痛い一撃を食らうことになります。
大抵の戦車の弱点と言えばそうですが、現代的ないくつかの戦車は対策に力を入れており、また旧ソ連系兵器を取り入れている国家は爆発反応装甲を貼り付けるなどしているので、Strv.122の弱い部分と言えます。
Strv.122の装甲強化はデンマークの2A5DKでも実施されており、元の車体も同じなのでほぼ同じ防御力を持つと言えます。
毎度のようにどれがどれだけ供与されるかは、未だによく分かっていません。
そして、いくら独自改修を重ねても、あくまでこれらは戦車でありそれ以上でも以下でもありません。
圧倒的に遠距離から飛行場や重要施設を破壊することはできませんし、多数の歩兵を中に乗せて軽快に走り回ることもできません。
ドローンを撃ち落とすことは終始難しいままで、隠れた対戦車兵器によって破壊されます。
レオパルト2は車体に弾薬庫があり、生存性に大きなケチが付いています。
大半の戦車と同じと言えばそれまでですが「最強」という前評判に踊らされれば、酷い残骸を見て落胆する羽目になるでしょう。
最強は、無敵ではないのです。
だが陸戦において王者となり得るのは戦車である。
コラムで解説した通りです。どのレオパルト2も、戦車です。
火力、防御力、機動力を高レベルにそなえた兵器であり、どの陸上兵器よりも高い衝撃力を誇り、その力を以て敵の戦線を食い破り、戦果を拡張し、敵を後退させ、取り返しにやってきた敵を粉砕します。
やることは変わりません。敵の防御を殴りつけて突破する。そのための兵器です。
そのように運用され、そのように活躍するために、レオパルト2は防御力を磨き上げてきた戦車です。
防御重視の衝撃力は、ウクライナの地でいかなる力を発揮するでしょうか。
供与は2023年の3月末とも5月とも言われていますが、そこからウクライナ軍がどのように動くでしょうか。
待ちましょう。見ていてください。
強者として存在する戦車がどのように戦うか、ほぼリアルタイムで観測できる時代に、我々はいるのですから。
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