どれか一つでもまごつけば、と言う意味では原潜数隻で南シナ海を制圧できるというのは間違いではないかもしれません。が、言葉そのままの意味で言っているのであればとんだほら吹きです。もしくは20年前の常識にとらわれているとしか思えません。 原潜の索敵範囲、射程(巡航ミサイル除く)、移動速度はたかが知れており、数隻で制圧するには南シナ海は広すぎます。かつ、南シナ海は大陸棚なので原潜が不得意とする戦場です。浅海域で音を正確に拾い、隠れ、魚雷を避けることがいかに難しいか(Command: Modern Operationsというシミュゲーム実況を見ると分かりますが、潜水艦は通信・速度両面で連携が難しいので、海上艦艇がいなければ各個撃破されるだけとなります) たった一つの兵器ですべてが決着することはまずありえません。いくつもの兵器を組み合わせることで有効となる兵器がほとんどです。原潜もその一つです。
編集済
いつも兵器の強みと弱みを含めた詳細な解説をしていただきありがとうございます。
ウクライナとは余り関係のない質問ですが、中国台湾関係の緊張感が高まっていますが、実際に戦争になった場合に戦局はどのように推移していくと思われますか?アメリカ不利との報道をよく耳にしますが、エドワード・ルトワックは原水数台で南シナ海を制圧可能。中国の戦力脅威論は米軍の予算を増やしたい勢力が騒いでいるだけと著書で述べていて素人にはどちらの意見が正しいのかさっぱり分かりません。もしよろしければご自身がどのようにのお考えかお聞かせください。
物凄い文章量と詳しいお返事を頂き本当にありがとうございます。現状では台湾を占領できると思われる戦力はあるが、その後の政治を考えたらまだその時期ではないと中国が認識しているのですね。コロナとバブルの崩壊で民心が政権批判に傾くと、戦力不足でも暴発の可能性が高まりそうで恐ろしいですね。日本の準備が間に合えばいいのですが。私自身や子供達が徴兵されるような事態にならないように祈るしかないですね。
作者からの返信
米国が中国相手にどれだけ優位を取れるのか、また不利なのかは正直分かりません。中国の兵器の更新速度は速く、謎が多く、中国軍の内情も秘密が多いです。3年前の情報がアテにならないくらいです。分かりにくいというのは中国の強みだと思います。
現状では、中国も米国も相手の戦力を恐れています。中国は万が一負けた場合、カリスマ性を失い内乱を誘発する恐れがあります。米国は兵士が死ぬと世論がすぐに停戦へと傾く傾向にあり、損害は防ぎたいものと思われます。
台湾を短期制圧することは、中国軍の総力を上げれば難しくはないでしょう。地理的にも近いですし、米国や日本と直接対峙するわけでもありません。しかしそこに総力を注げるのか?注いだら国内外の反応はどうなるか?万が一ウクライナのように台湾が粘り強かったら?万が一空母が撃沈されたら?万が一補給が上手く行かなかったら?万が一米国の支援が間に合ってしまったら?
中国は政治的に不安定です。自由を制限しても何とかなっているのは上手くやっているからであり、戦争での敗北は現中国共産党が成り立っている前提を破壊しかねません。コロナ禍での行動制限に対する不満が爆発する直前で、極端なまでに制限を解除したのもそれが原因です。中国は党が支配していますが、党の行動は民衆に支配されています。そういう意味では日本よりよっぽど民主主義的です。
他に、戦争で直接負けなくても、経済制裁を食らえば終わりとなる可能性はあります。不安要素が多すぎて、軍事的には簡単なはずの台湾制圧を思いとどまっているのが現状です。
まあなので、中国が戦争を仕掛けるときは圧倒的な軍事力を誇示して周りに有無を言わせない空気を作れると思ったときでしょう。短期決戦をしかけ、勝てば恐らくそれで終わりです。
戦局としては、空軍と弾道弾、サイバー攻撃で一気に混乱させ、海軍力で海の優位を確保、空挺と強襲上陸で橋頭保を確保し、後詰の輸送艦から陸軍を送りこんで、ピストン輸送で補給しつつ機甲戦力で高速制圧。王道の流れだと思います。というかこれしかありません。どれか一つでもまごつけば、国外からの口出しを許します。
どれか一つでもまごつけば、と言う意味では原潜数隻で南シナ海を制圧できるというのは間違いではないかもしれません。が、言葉そのままの意味で言っているのであればとんだほら吹きです。もしくは20年前の常識にとらわれているとしか思えません。
原潜の索敵範囲、射程(巡航ミサイル除く)、移動速度はたかが知れており、数隻で制圧するには南シナ海は広すぎます。かつ、南シナ海は大陸棚なので原潜が不得意とする戦場です。浅海域で音を正確に拾い、隠れ、魚雷を避けることがいかに難しいか(Command: Modern Operationsというシミュゲーム実況を見ると分かりますが、潜水艦は通信・速度両面で連携が難しいので、海上艦艇がいなければ各個撃破されるだけとなります)
たった一つの兵器ですべてが決着することはまずありえません。いくつもの兵器を組み合わせることで有効となる兵器がほとんどです。原潜もその一つです。
米国は地理的に離れているため、補給が格段に難しくなります。だからこそ韓国や日本、フィリピンなどに拠点を置いているわけですが、このあたりの米軍だけでは抑止力として不十分になりつつあります。でも、米軍の本音としてはさっさと兵を引き上げたいところです。遠隔地の一大拠点を維持する金は膨大です。
だから台湾は自国戦力の強化を怠りませんし、日本は台湾有事が迫っている今日、大規模かつ恐ろしいまでのスピードで兵法同時に改革を始めているわけです。台湾有事に参戦するにしろしないにしろ、日本単体でも抑止力として中国ににらみを利かせる構えです。
戦局の推移としては、中国は王道のやり方で勝ちをもぎ取るでしょう。今の中国でもそれはできます。その確率がいかほどなのかは分かりません。中国がどこまで完璧な勝利を求めているのかは分かりません。でも中国軍の実力が、中国の求めるレベルに達していないのは確かです。だから中国は軍拡を続けています。
総力を注ぐことができず、または台湾が粘った場合、全ては狂いだし予測は不可能となります。日米の動向が最も重要になってきます。この二国がどう動くかで、全て変わります。
今の中国は、上手く行けば台湾を短期制圧することはできますが、日本を短期再圧することは不可能です。アメリカをいないものとして考えれば日台を相手にしても勝てるでしょうが、中長期戦と損害を覚悟するべきでしょう。
現実にはアメリカがいます。絶対に無視できない存在です。このために、戦争期間が伸びることは中国そのものに致命傷を与えかねないものとなっています。
純軍事的に考えれば、アメリカは不利どころか何もできないに等しいでしょう。台湾周辺の米軍だけで全力の中国軍と交戦したところで、足止めになるかどうか、なったとして何時間になるか……。
しかし、必ず政治が絡んできます。アメリカが参戦するなら自動的に日韓(話がややこしくなるのでここまで韓国を無視してきましたが、役割としては日本と同じです。北朝鮮が中国側で何かしら動くでしょうが)も何かしらの形で干渉してきますし、であれば中国軍は台湾を短期再圧すると言う目標を達成できない可能性があります。
達成できてもかなり厳しい状況に追い込まれ、13億人民による政権崩壊の可能性が残ります。
中国にとって、まだ台湾に手を出すのは賭けです。いつ手を出すかは分かりませんが、完全な勝利が約束されるまで手は出さないでしょう。王道の戦争ができるようになるまで、軍は肥大を続けます。
重要なのはむしろ政治的な戦局の方で、中国はバブル崩壊とロシアのウクライナ侵攻による種々の悪影響を受けて焦っています。その上コロナの大感染であり、国力は弱体化の傾向です。
軍拡にも近々ブレーキが入ると思われ、そこに日本の防衛力増強が間に合えば、あとは中国は追い込まれるまで何もできません。軍事力を人民に還元して軟着陸を狙ってくれれば、一番平和に終わります。
日本が間に合わなければ、そこで台湾に関してはほぼほぼゲームセットと見ていいでしょう。中国が侵攻を決定した、その時点で勝負はついているようなものです。ウクライナのようになる可能性はありますが、やはり低いものです。
中国はずるくてあくどいながら、賢くて慎重です。小国だったころの生き方と、大国の強さを持ち合わせます。強くて賢いからこそ、追い込まれる以外で下手な手は打たないでしょう。派手に宣言した時には、すでに王手を打っている、そういう戦い方をするはずです。
その賢さで、軍事的解決が無理なことを悟り平和的解決の方向へ持って行ってくれることを願います。そのためには、主に日米の抑止力を高めなければなりません。仮にエドワード氏の言うことが軍事的に正しくても、政治的には嘘と切り捨てて防衛力向上を狙わなければなりません。
戦局はすでに、進んでいます。