13.過去(2)
空腹をカナタからもらったアメと、水をがぶ飲みすることでしのいだおれは、今日もなんとか給食の時間まで生きながらえることが出来た。
最近はまともに朝食を取れていないから、毎日給食になるまでが必死だった。
おれが腹を空かせていることは、誰にも悟れれてはならないからな。
なぜかって?
そんなのはずかしいからに決まってるだろ?
朝食を食べてないなんて最強にかっこ悪いと思うんだ。
もしそんなことがバレたらクラスの山本達にバカにされるに違いない。
だから絶対に秘密なんだ。
って思ってたんだが.....
よく考えたら、さっきカナタにバレちゃってたじゃねーか!
やべえ!どうしよう。
あの時は空腹のあまり状況を把握することが出来ていなかったけれど、よく考えたら、とんでもないミスを犯してしまったかもしれない。
咄嗟に空腹なのを誤魔化すことも出来たというのに...!素直にアメをよろこんで受け取ってんじゃねーよちょっと前のオレっ!
まずいな、バレたかな。
山本達にバカにされるのも嫌だけど、カナタにかっこ悪い秘密がバレるのはもっと嫌だ!
いやまだだ....まだ大丈夫だ。
はやまるな。
腹の音を聞かれただけで、まだ俺が朝食を抜かれていることに気付かれてはいないはずだ。
あのバカナタにそこまでの推理力は無いはずだ。
所詮、ちょっと早い時間にお腹がすいたのかなとか思う程度だろう。
そう、ちょっと早い時間にお腹がすいちゃった。
クラスに1人はいる食いしん坊君がたまに起こすイベントのひとつだと思えば良いんだ。
何気ない日常のワンシーン。他人から見たらたったそれだけの、注意するに値しない問題なのだ。
だから焦る必要はない。
あとは周りのクラスメイトにも聞かれてしまっていないかが心配だな.....
最悪の自体は、山本に話が伝わってしまうことだが、山本達にバカにされないためにも、ここ数日は仲良くしておくか。
仲良くしておけば、いざと言う時バカにしたりからかったりするのはちょっと気が引けるだろ?
山本は、クラスのやんちゃ坊主で、目立ちたがり屋でお調子者のバカだ。1度火がつくと人を率先的にからかうようなヤツなのだ。
バカにからかわれるものほど屈辱的なものはない。それに周りも面白がって山本に乗っかるから、よく面倒なことになるんだ。
悪いヤツではないと思うんだが、なにせバカだからな。おれはあんまり好きじゃないんだよな。
そんな事はさておき。
今はこの、黄金に輝いて見える目の前の給食を食べなければ....
ようやくありつける食事。
この瞬間だけは幸せでいっぱいだ。
よし、いただきまーす。
ぱく
ああ....生き返る......
「ゆかりさー、もしかして朝たべてない?」
「ゴホッ!!!...ヴ!...ゲホッゴ!ホッゴホッ...」
「ちょ....大丈夫ゆかり?」
え....?
あ..せっかくの給食を喉に詰まらせた!!
じゃなくて。
....思いっきり勘づかれてる...!!!
なんでこういう時に限ってカナタのやつ鋭いところをついてくるんだよ...
「あ゛ぁ...ダイジョウブ...食べ物が気管支に...」
「全然大丈夫じゃないわよそれ。はいこれ牛乳」
「んぅ..ゴクゴク」
むせた俺を擦りながら、慣れた手付きで牛乳を飲ませるカナタ。
なぜ11歳でここまでカナタは気が利くのか。
おれは不思議でならなかった。
「おーどうしたんだよヨスガ!
カナタに介護されてんのか?」
そして最悪のタイミングで山本が登場する。
「ブハッ!!ゴホッ!..ゴホッ..」
「今度はどうしたの!?」
山本おぉぉぉ!
なんでここに居るんだよ!
お前の席はだいぶ向こう側にあるだろ
食事中に立ち歩いてくるなよ...
最悪のタイミングじゃねーか。
「次から次へと...なんでまた....」(ゆかり)
「え?何?やっぱ朝ご飯食べてないの?ダメだよ朝はちゃんと食べなきゃ」(カナタ)
「え?ヨスガちゃんと朝ごはん食べてねぇのか!?」(山本)
「だあああ!食べてる!ちゃんと食べてるから!山本はこっち来ないで!?」(ゆかり)
「え....俺は来ちゃあまずかったのか...?もしかして嫌らわれてる?」(山本)
「あぁごめんね山本くん、今日のゆかりは頭を怪我してちょっとおかしくなってるだけだから、気にしないで。」(カナタ)
「そうだったのか!カナタの言うことなら仕方ねぇか。」(山本)
「仕方ねぇか。じゃねーよ!おいカナタ、誰がちょっと頭がおかしくなってるだ。俺は至って正常だ!山本に変なこと吹き込むな!」(ゆかり)
「せっかくフォローしてあげたのに、その言い方はなくない?頭のネジどこいったんですかゆかりくん?」(カナタ)
「うるさいな!やんのかこのやろー!それはそれとしてフォローしてくれてありがとな!」(ゆかり)
「どういたしまして!ゆかりなんかさっさと給食食べて休み時間になったら外に遊びに行っちゃえばいいのよ!」(カナタ)
「ああ言われなくてもそうするし!給食食べるし!ああうまい美味い!」(ゆかり)
「なんだよこの喧嘩」(山本)
「せんせー!、カナタちゃんとよすがくんが喧嘩してるー!」(クラスの女子)
「んんー?あー大丈夫だ。」(先生)
「それよりゆかり、さっきはひどい取り乱しようだったじゃない。ほんとに朝ごはん食べてるの?それとも他に何かに隠してる?」(カナタ)
「だから食べてるってば!なんも隠してねーよ」(ゆかり)
「ほんとにほんと?何かあったらちゃんと言ってね?」(カナタ)
「ほんとにほんとにほんと!何かあったらいうから!モグモグ」(ゆかり)
「そういえばカナタさんよぉ、山本くんて、ちょっと呼び方堅くねーか?せっかく俺は下の名前で呼んでるのによぉ」(山本)
「ごめんね山本くん、ちょっと黙っててくれる?今そんなしょーもないことに時間をとってる暇ないの 。」(カナタ)
「えぇぇ....しょうもないって.....」(山本)
「そうだぞ山本、おまえはあっち行ってろ」(ゆかり)
「山本ー、席につけー。2人の間にお前が入る余地はないぞー」(先生)
「皆して俺の扱い酷くねぇ!?」(山本)
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