11.顰蹙
◆◆◆
───もう寝ていいか....?───
───はい、おやすみなさいご主人様───
───おやすみ、明日もよろしくな。───
「ご主人様ー....あさですよー
.........おきてくださーーい......
もしかしてご主人様....朝は弱いんですかね......なかなか起きない........
まあそんなところも.......」
「おはようホタル」
「わぁ!おはようございますご主人様!」
「朝から元気だな。」
「はい!暖かいベッドで寝られて心も体もスッキリです!」
「低血圧とか無さそうだもんな」
「はい!ないです。」
「それとホタル」
「なんですか?」
「近い。」
「近いですか??」
「何故お前まで俺のベッドに乗っている。
そして何故俺に跨っている。
そして何故顔を至近距離まで近ずける?」
「それはもちろん、可愛らしいご主人様の寝顔をお守りする為ですよ。」
「ドヤ顔で意味わからんこと言うなよ。
どいてくれ、顔を洗ってくる。」
「かしこまりましたー.....っと。」
俊敏な動きで、ベットから降りるホタル
窓から差し込む清々しい明かりが、頭を活性化させる。
背伸びをして、俺もベッドから降り、顔を洗いに洗面所に向かう。
洗面所と言っても、桶に水の魔道具が設置されている簡素なものだ。魔力を流すことで水が流れる仕組みになっているらしく、最初は全く訳が分からなかったが昨晩ホタルに教えてもらいようやくだが不自由なく使えるレベルになった。今後もこういった魔道具には四苦八苦することになりそうだが。
「ふぅ...」
顔を洗って、濡れた髪をかきあげる。
「さすがご主人様。顔を洗うお姿も絵になります」
すぐ真後ろで、ホタルの声が聞こえてくる
「いや怖ーよ!
なんでついてくるんだよ!」
「それはもちろん!
いついかなる時もご主人様をお守りするためです。」
「徹底してるな....もしかしてトイレに行く時もついてくる来るん気なんじゃ無いだろうな。」
「その時はストラップに戻っておりますので何かございましたらお呼び下さい。」
「結局ついてくるのか.....」
宿に併設された食堂で、日替わりの、ブラッディボア定食を食べたあと、外に出て昨日予定していた街の観光を開始する。
「ありました!船着場です!」
鮮やかで透き通った朱色の川に浮かべられた、木造の船着場には、幾つかの小舟が止まっていた。
船着場につくと、船頭らしきおじさんが話しかけてきた。
「舟を頼みに来たようだね。乗客は2人でいいかい?」
「はい。」
「どこまで乗るかい?」
「時計塔の近くまでお願いします。」
「あいわかった。それじゃあプルシャン公園までだな。さあ乗りな!お代は2人で銅貨8枚だよ。後払いだ。」
「分かりました。さあ乗りましょうご主人様!」
舟にのんびりと揺られ、流れる景色を堪能する。
暖かい日差しが心地よく、時々吹き抜ける風が涼しくて非常に快適である。
「乗り心地はどうですか?ご主人様。」
「快適だな、ホタルもそう思わないか?」
「そうですねー、なんだかとても落ち着きます」
そう言って銀色に輝く髪をかきあげるホタル。
「こういう場所で暖かい緑茶を一服出来たら最高なのになぁ」
「りょくちゃ....?」
「緑茶だ。知らないのか?」
「聞いたことないです。ご主人様がいた世界のものですか?」
「ああ、お茶は無いから水で我慢するか【ウォーター】」
ホタル知恵袋にも載っていないことはあるんだなと思いながら、スキルで生成した水を飲んで一服してみる。
「ふぅ......落ち着くな」
「私の愛刀も喜びますねー
趣深いですねーずわずわ」
おもむろに刀を取り出し、話しかけるホタル。
「ずわずわ?」
「はい!ずわずわです。」
「ずわずわなのか」
「この子はずわずわって言うんです
可愛いくないですか....?」
「可愛い...うん、強そうだな。」
「ええ、この子はとても強い力を持っていましてですね.....鑑定を使ってみてはどうですか?」
「いいのか?」
「はいどうぞ!」
何故か嬉しそうなホタル。
それでは遠慮なくずわずわを見させてもらうとしよう。
「【鑑定】」
ヴォン
という電子音のSEが脳内再生され、誰の手によってデザインされたのか分からない精巧な鑑定画面が目の前に突如として表示された。
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所持者の生気を吸うことで、この世ならざる切れ味と魔力を帯びる呪いの魔剣。
攻撃力増加(大)
攻撃力倍化
俊敏性増加(大)
出血属性
不壊
付与スキル
【楚蟹乱舞】
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いやずわずわヤバすぎだろ
記述が恐ろしいわ。
見た目相応に禍々しいわ。
ぜんぜん可愛くないんですけど。
生気を吸うとか書いてあるけどホタルは大丈夫なんだろうか。
「どうですか.....?」
そして何故か目を輝かせて聞いてくるホタル。
「えげつない」
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