終点 この道の先に終わりがある

 この道の先に終わりがある。


 長い旅だった。旅をする理由を考えていたこともある。

 望んで始めた旅ではなかった。いつの間にか始まっていた。始めさせられたのだと思っていたこともある。

 自分の道を恨んだこともある。もっといい旅が、いい道があるはずだと思って、また別の人の生き方を想像することで、なんとか苦しさを紛らせた日々もある。


 いつからだろうか。ただ進むだけが目的になったのは。

 愛する人に先立たれたときだろうか。

 最後の同行者と別れた時だろうか。


 人を憎んだり、羨んだりすることをやめたときだろうか。


 何かを求めたり、人を判断したりしなくなったときだろうか。


 もう何もわからない。わからなくてもいい。


 砂をただ踏みしめる。あたりには、はるか昔の文明が残した石造りの巨大建造物の残骸が残っている。

 砂埃は、ちっぽけな私も、偉大な文明の痕跡も、等しき吹き付け、存在を蝕んでいる。

 私も近いうちに骨になり、その骨も、いつかは痕跡すらなくなってしまうのだろう。


 それでいいのだ。


 最初からわかっていたのだ。すべては最後には消えてなくなる。消えてなくなってくれる。

 だから、ずっと苦しむ必要はなかった。



 この、救いともいえるような、小さな切なさで私は動いている。


 ずっと先の未来を私は知っている。でも私はもう少し歩くんだ。


 ずっと歩いてきたのだから。歩けるところまでは、歩くしかないのだ。



 すべてが砂に埋もれるその日まで。

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