終点 この道の先に終わりがある
この道の先に終わりがある。
長い旅だった。旅をする理由を考えていたこともある。
望んで始めた旅ではなかった。いつの間にか始まっていた。始めさせられたのだと思っていたこともある。
自分の道を恨んだこともある。もっといい旅が、いい道があるはずだと思って、また別の人の生き方を想像することで、なんとか苦しさを紛らせた日々もある。
いつからだろうか。ただ進むだけが目的になったのは。
愛する人に先立たれたときだろうか。
最後の同行者と別れた時だろうか。
人を憎んだり、羨んだりすることをやめたときだろうか。
何かを求めたり、人を判断したりしなくなったときだろうか。
もう何もわからない。わからなくてもいい。
砂をただ踏みしめる。あたりには、はるか昔の文明が残した石造りの巨大建造物の残骸が残っている。
砂埃は、ちっぽけな私も、偉大な文明の痕跡も、等しき吹き付け、存在を蝕んでいる。
私も近いうちに骨になり、その骨も、いつかは痕跡すらなくなってしまうのだろう。
それでいいのだ。
最初からわかっていたのだ。すべては最後には消えてなくなる。消えてなくなってくれる。
だから、ずっと苦しむ必要はなかった。
この、救いともいえるような、小さな切なさで私は動いている。
ずっと先の未来を私は知っている。でも私はもう少し歩くんだ。
ずっと歩いてきたのだから。歩けるところまでは、歩くしかないのだ。
すべてが砂に埋もれるその日まで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます