忘れて

忘れて


忘れさせて


自分という存在が今後もずっと自分という存在であり続けること


それがどれほど苦しいことであるか


同時にそれがどれだけ喜ばしいことであるか


たくさん嘘をついてきた


これからもたくさん嘘をついていく


何もかもがどうでもよくなって


誰も愛さず


誰からも愛されず


生きることがめんどくさくなって


でも死ぬのもめんどくさくって


時々さっさと老いて死にたくなる


あらゆる「できない」の言い訳を


老いのせいにできたらいいのにって思う


生まれながらにできないことの痛みはきっと


できない人間にしかわからないし


そもそもあまり許されることはない


人を許さない人間が人から許されないのは当然だとしても


人を許す人間すら人から許されないのは


少し理不尽だと思う今日この頃


誰も裁かずに生きていきたいとだけ思っている


「みんな違ってみんないい」じゃなくて


「みんな同じでみんな悪い」でいいじゃないか


だから誰も悪くないし


違いなんて全部どうでもいい


くだらない


どいつもこいつも道徳的なふりをしている


自分たちが生きていくために 欲望を満たすために


自分たちと同じ人間を喜ばせるための都合のいいルールを作るんだ


大多数であろうと少数であろうと


それが集団である限り孤独な人間は疎外され


存在しないものとみなされる


それを肯定できるような環境にあればどれだけいいか


僕も多数派に せめて少数派になれればどれだけいいか


誰も仲間がいないというだけで僕は僕自身の存在を


どれだけ合理化したところでうまく肯定できない


「そうだ」と言ってくれる人が欲しい


「もちろん」と笑ってくれる人が欲しい


もっといえば「当たり前のことを言うな」と笑って欲しい


精神の腕で抱きしめてほしいのだ

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