第30話 勉強会
そして昼休みが終わり、午後の授業も通常通り行われ放課後を迎えた。
「今日から勉強会かぁ」
俺は帰る準備をしていたが、後ろでは翔太がそう言っていた。
別に俺から頼んだものではないのだから、やりたくないならそれで歓迎なんだが……。
「この後はどうするんだ」
「そうだな。俺と梨花は悠と家近いからそのまま帰ってから行くっていうかんじで良いと思うけど……白川はどうすんだろ」
白川は前の席でスマホを触っていた。
帰宅の準備は既に整っているらしい。
「あ、吉田君。今日から勉強会だよね。私このまま行くよ」
俺の視線に気づいた白川、どうやら制服姿のまま来るらしい。
でも確かに、こいつの家は学校から俺たちとは反対方向だったしな。
「そうか。わかった」
「何してんの。はやく行くわよ」
横から割って入ってきたのは無論梨花だ。
ていうかお前がいるのが一番謎なんだよな。
この勉強会はあくまで赤点回避が目標に設定されているのだから……多分。
「はいはい」
梨花に急かされながら準備を終えた俺は、四人で帰ることになった。
帰り道。
「んじゃあ。あとで行くわ」
俺の家付近の分かれ道、翔太と梨花は違う帰路なのでここで一旦二人とは解散する。
「ああ。あとでな」
そうして俺と白川は二人きりになった。
それにしても暑い。
やっぱり夏は苦手だな。
「ねえ吉田君。今日のあれのことだけど」
昼休み以降、まだ白川と二人きりで話せていない。
最初に聞いてくるとしたらこれしかないよな。
「大丈夫だ。心配するな」
「吉田君が頭いいのは知ってるし、去年の学年順位だって知ってる。でも万が一負けちゃったら……」
まあ勝負である以上絶対なんてありえない。
でも俺は最強主人公だからな。
「絶対とは確かに言えない。でも俺と白川は主人公とヒロイン、そしてその主人公は最強なんだ」
「あ、確かに」
ふつうこれで納得する人はいないだろうな。
「そうだね。主人公を信じられなくてどうするんだって話だよね」
「そうだ」
常人には通用しないような会話を俺たちはしている。
「そうだ……確かに俺は新庄に勝つ。でもどうせなら完封勝利のようなかたちにしたい」
「そんな方法ある?」
「ああ」
俺はちょっと考えていたアイデアを白川に伝えた。
☆
「おかえりぃ」
家に着くと、リビングで妹がアイスを食べながら出迎えてくれた。
「ああ」
「吉田君の妹ちゃん?」
「はい。妹です」
白川は俺の妹に興味津々といった様子だ。
この二人が会ったのは、白川が初めて俺の家に来た時が最初で最後だったか。
「前会った時名前聞いてなかったよね」
「そうでしたね。私は茜っていいます。確か同じ名前ですよね?」
「そう! 私も茜っていうんだ。てかなんで私の名前……」
「お兄ちゃんから聞いたので」
「白川、勉強するぞ」
水を差すようで悪いが、茜と茜の会話に違和感がありすぎるので白川を自室へと誘う。
「はいはぁい」
「頑張ってねぇ」
二人でリビングを出たタイミングで、後方からエールが送られてきた。
「前は気づかなかったけど、茜ちゃん可愛いね」
「そうだな」
階段を上がっている途中、白川は妹の顔面を褒めてきた。
確かに妹は可愛い、認める。
そして俺たちは、俺の部屋へと入った。
「久しぶりだなぁ。相変わらずのオタク部屋だね」
「ああ。そういうお前も同類だったとは、心底驚いたよ」
「ははは。まあ原因は君なんだけどね」
「すまない」
「謝ることじゃないよ!」
結果的に本人にとってプラスになったことだからそれでいいのかもしれない。
しかし、やはりこんな美少女をオタクにしてしまったと考えると、少し胸が痛む。
「まあ適当に荷物置いて座ってくれ」
「はぁい」
そうして白川は持っていた鞄を俺のベッド横に置き、中から勉強道具を取り出して準備を始めていた。
俺は私服に着替えようかと思ったが、面倒くさくなったのでこのまま勉強を始めることにした。
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