第31話 想い人
その後は梨花と翔太も合流し、メンツが揃ったところで勉強会第一回がスタートした。
なんて言ってるが、俺は基本的に『分からない』『ここどういうこと?』といった二人の質問に答え続けるのを繰り返しているだけで自分の勉強はほとんど出来ないということに、開始一時間ほどで気が付いた。
無論二人というのは翔太と白川だ。
梨花は一人で黙々と勉強している。
こんな状況下というのもあり、自分の勉強は勉強会中は保留してラノベを読むことに決めた。
じゃなければ勉強会の後の時間が勉強とオタ活の両方をしなければならないというかたちになってしまう。
「だめだぁ! さっぱりわからん!」
開始から一時間半ほど経過したタイミングで、翔太が音を上げた。
人間の集中力は45分くらいが限界と聞くが、その倍出来ただけでも褒めるべきかもしれない。
一応自分たちの取り決めでは、勉強会は試験までの二週間。場所は俺の部屋で最低3時間は開催するというものになっている。
「まだ半分だぞ」
俺はラノベを読んでいた手を止める。
「そりゃそうなんだけどよぉ。てか悠は勉強しなくていいのかよ」
「確かに、吉田君さっきから小説ずっと読んでるよね」
白川も翔太と同意見の様だ。
「俺は地頭がいいからな」
「なわけないでしょ。あんたは常日頃から地道に勉強してるでしょ」
「くっ!」
一人だけペンを持ち勉強しながら俺の嘘を見抜いたのは紛れもない梨花だ。
「まあ。じゃねえと学年トップなんて取れねえよなぁ。ましてや俺らの高校そこそこの進学校だし」
そんな進学校に入れたお前の学力が何故こんなに低いのか気になって仕方ないぞ翔太。
「ちょっと俺休憩してくるわぁ」
「じゃあ私も!」
「お、おい勝手に……」
俺の言葉に反応することなく、翔太と白川は部屋から出て行ってしまった。
「ほっといていいんじゃない?」
「そうだな」
一瞬呼び戻そうかとも思ったが、梨花の言う通りそれは止める。
「…………」
二人がいなくなってから数分が経過した。
その間俺たちの間を支配していたのは静寂だった。
「ねえ」
梨花は目を合わせることなく唐突に話しかけてきた。
「なんだ」
「あんた本当に白川さんに好意を抱いてないのよね?」
「もし違うと言ったら?」
「そ、それは……」
「なんてな。好意は抱いていない」
「そ、そう」
たまに聞かれるこの質問。
その真意は未だに分からない。
ただ一つだけ思う。
お前は俺のことが好きなのか?
いや、それはありえない。
一種の可能性を思い浮かべるも、ないと思い一瞬で払拭された。
☆☆
「どこ行くの?」
休憩と言い吉田君の部屋から出る神沼君に付いてきたが、彼は玄関で靴を履き始めた。
「散歩だよ散歩。外の空気吸いてえと思ってさ」
「なら私も」
良い案だと思い付いていくことにした。
「勉強って面倒くせえよな」
「そうだよねぇ」
私たちは吉田君の家から歩いて二分ほどで着く小さな公園のブランコに座っていた。
「なあ白川」
「何?」
「悠のどこが好きなんだ?」
「えっ!?」
思いもよらない質問に驚いてしまった。
「直球すぎるか流石に」
「そ、そうだね。まあでも……全部かな。吉田君の全部が私は好きかな」
「そうか。ちょっと気になってたんだ。あいつ二次元好きすぎて今後大丈夫かなって思っててさ」
「なるほどね。ちなみに……そういう神沼君は女の子とどうなの? 彼女の噂とか聞かないけど」
「はっ!? あ、いや。俺はその……ずっと片思いといいますか何といいますか……」
神沼君は思い切り赤面になり動揺していた。
「ふふっ! ちなみにその相手とは?」
「そ、それは……」
「立花梨花さん……だったりして」
何となく脳裏をよぎった彼女の名前を口に出してみた。
「……!!」
「図星だねっ。お互い大変だなぁ」
「そ、そうだな! 頑張ろう!」
「おう!」
そして短い休憩時間を満喫し、私たちは吉田君の部屋へと戻ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます