第61話 一匹だけじゃない

「バカな話だ」

 ペドロファミリーの一人がそうつぶやいた。

「実力を示さなきゃいけねぇんです。そう思い込んでました。わかるでしょう。あなた方なら」

 それに対して下っ端はそうこたえた。


「ボスや幹部はどこにいるんだ」

 監査の人間はそういって問い詰めるが

「本当にしらないんです。私らをおいて逃げったんじゃないかと」

「もう俺らのことも信用しちゃいないんで」

「幹部が一人庭の方に行くのをみましたが」

 下っ端はそれぞれできる限りの情報を話す。

 上と下ですら信頼関係がない。まとまっていたのは秘密の露見を恐れての事。

 秘密が秘密じゃなくなれば上を売るのにもためらいがない。

「じゃぁモンスターはどこで飼育している」

「私らは詳しいことは知りません。馬屋の方に持ち込むと幹部やその周りの連中がどっかに連れてくんです」

「馬屋って庭の建物か」

「そうです。馬も売ってもう二頭しか居ませんが」

 金もなく仲間のまとまりもなく、名誉もない。

 しかしファミリーとして名誉を示したい。そして名をはせたい。そのためには人材、それを雇い支える金がいる。

 違法でも危険でも一発逆転を狙いたくなるわけだ。とは狼人間が思った事。


「君たちの班は彼らを拘束しギルドへ連行しなさい。他の物は引き続き幹部とモンスターの捜索。周辺は封鎖済みです。まだ屋敷内にいるはずだ」

「了解」

 指示を受け解散。

 その際ペドロファミリーの一人が仲間に聞く。

「そういえばアニーはどうした」

 彼らは疑問に思わなかったがNもいない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る