第21話エピローグ
エピローグ
ピピっ
「38度4部か」
俺は体温計をしまい、手帳に日付と温度を書いた。
今日で、コロナウィルスにかかって二日目になる。身体はだるい。
コンコン。
その時扉にノックする音が聞こえた。
「はい」
「兄さん、雑炊できたよー」
そう言って妹のゆかりが入ってきた。あれから4日後。すっかりゆかりは体調を回復した。
俺がやったことは無駄骨(むだぼね)だったかな。
つい、そんなことを考えてしまうほど、ゆかりは元気になった。
「うう、すまない」
「いえいえ。さ、召し上がれ」
二つの雑炊とそれぞれのレンゲ。どうやらゆかりもここで食べるらしい。
俺はベッドで、ゆかりは床でそれぞれ食べた。
まだ、頭がフラフラする中、俺は雑炊を食べる。そして、出た感想は。
「うまい」
「本当!?」
ゆかりの顔が綻ぶ(ほころぶ)。なんか、そんな顔をされるとこっちまで嬉しくなってしまう。
「兄さんの雑炊も美味しかったよ」
「本当か?」
「うん。本当本当。兄さんのパスタも美味しかったし」
俺は破顔する。
「それはありがとう」
自分の料理が褒められて悪い気はしない。
それでふと違うことを思い出し、ボソッとつぶやいた。
「悪いことしちゃったかな?」
「?」
ゆかりは不思議そうな目でこちらを見る。
「俺が看病したばかりに、俺が感染(かんせん)して、ゆかりに看病させて、悪かったかな、って思って」
「そんなことない!」
ゆかりが大きな声で叫んだ。それに俺はびっくりする。
ゆかりは顔を俯かせて(うつむかせて)、一語一語後搾り出す(しぼりだす)ように言った。
「私、あの時、死ぬかと思った。一人で、死んで死しまうんだと思った。でも!兄さんが、あの時そばにいてくれて、、ほんとおおおに感謝している!あの時、兄さんがいたから、私、安心できた!確かに、合理的に考えれば、兄さんが看病しなかったら、兄さんは感染(かんせん)しなかったかもしれない。でも、でもね…………」
そう言って、顔をくしゃくしゃにした妹を俺は優しく、抱きしめた。
「わかった」
「……………」
「すまなかったよ、余計なこと言って」
それから程なく妹の嗚咽(おえつ)が響いた。
3月の下旬はこんなにも暖かい。
俺は家族の温もり、春の陽気の温みを感じながら、妹を宥めて(なだめて)いった。
完
ねえ、兄さん結婚しようよ サマエル3151 @nacht459
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