おまけ
猫歴15年、延長戦
お兄ちゃんの前世は猫である。名前は広瀬
平行世界からUFOに乗ってやって来た猫がこの地球でやらかしまくったせいで、世界中の権力者がわやくちゃ。猫が帰ってからは、会議ばかり開いている。
特に直接殴り込まれたロシアと中国は、なんとかしてくれと国連で頭を下げていたが、国連も無理難題を突き付けられているからどうしようもない。なんだったら、全員で非難していた。
まぁ人権侵害や侵略戦争をしていたのだから、手助けすることもできないのだろう。国連もそのことについて改善するように言われているのだから、どう改善するのか、やらないとあの猫に国を滅ぼされると、逆に追い詰めていた。
そんななか、猫が滞在していたここ日本でも、てんやわんや。与党のやる気がないことがバレてしまい、国会でもテレビでもSNSでも、与党を糾弾する声の一色となっている。
その声をかわそうと、与党は内閣改造を行って全てを刷新したが、老人ばかりを選んだからにはよけい非難の声が大きくなった。
あの猫は、若者や女性の意見を反映させるような政府を作れと言っていたのに、どうしてこうなったのか聞いてみたい。でも、本当に来なくてもいいのに……
こんな愚痴を言っているのは誰かと言うと、広瀬
私が平行世界からやって来た猫と一緒に行動していたことと、動画サイトでその猫を使ってバズらせていたから、日本政府から目を付けられたのだ。
さらに、被害にあった国からも偉い人や諜報員が会いに来て、猫の弱点だとかを聞き出そうとしているので困っている。
家にやって来るのは当たり前。知らないと言っているのに高校の通学路には毎日現れ、その数は減らないどころか増え続ける始末。てか、世界中のマスコミまでやって来ているので、高級住宅地が人種の
いちおうジュマルと私の親衛隊が守ってくれているからなんとか登下校はできているが、1人でコンビニすら行けなくなっている。
一度、夜にアイスが食べたくなりすぎてジュマルと一緒に外に出たけど、某国の工作員にさらわれそうになった。その時はジュマルが瞬く間に倒してくれたから被害はなかったが、母親や父親が狙われていたらと思うとゾッとした。
このこともあって黙ってられず、私の動画配信サイト『ララちゃんネル』を使って各国の代表と質疑応答をすることにした。こんな収益チャンス、めったにないからね。
ララちゃんネルを使って告知すると、集まり過ぎ。あまりにも多いので日本政府に場所を確保してもらったら、甲子園球場となったのでちょっとラッキー。マウンドで撮影したかったの。
それはあとからやるとして、今日は気合いを入れた服で、ララちゃんネルのオンエアーだ!
『は~い。美人すぎるJKチューバー、ララだお。ララちゃんネル始まったよ~。パチパチパチパチ~』
ツカミは大外し。甲子園球場は満員なのに「シーーーン」と閑古鳥が鳴いてる。あの猫を馬鹿にできない。でも、これはララちゃんネルの始まりにいつもやっていることだから外せなかったの!
『ん、んん! え~……本日お集まりいただいたのは、他でもありません。私は何も知らないから、会いに来られても迷惑なんです~~~!!』
私の心からの訴えは、ザワザワするだけ。まったく質疑応答になっていないのだから、到底納得できないのだろう。
『それと、中国政府の人。こないだ私をさらおうとしましたよね? 日本政府の人は、私が誘拐されそうになったと被害届を出したのに、どうして発表しないのですか? そんなことするから、私はいつまで経っても1人で外を歩けないのですよ!』
もうこの際、私も不満をぶちまけてやる!
本当は中国の工作員は、黒塗りのワゴンから降りて来て私たちを囲んだだけだけど、知ったこっちゃない。日本政府がまったく助けてくれないんだから、自衛するしかないのだ。
私の爆弾発言のせいで、中国政府と日本政府から出席している偉い人は一斉に睨まれて肩身の狭い思いをしているけど、そんなの知るか!
『てか、みんなも同罪ですよ! こんな
女子高生如きに叱責された偉い人は、一斉に下を向いた。
『いいですか? あの猫は隕石並みの攻撃をするサンダーバードって鳥の話をしましたよね? みんな気付いていないから言いますけど、その攻撃を受け止めたということは、あの猫は同じだけの攻撃ができるということです。さらに言うと、その出来事は、猫の国が建国間もない時のことなんですよ!』
しかし、猫の脅威を思い出した皆は、ハッとして顔を上げた。
『それから10年以上経っているのですから、私たちの見たあの猫の脅威は、その一端にすぎないのです! ハッキリ言って、人間では勝てません! もしも変なことをして機嫌を損ねたら、人類どころか地球が滅亡します! あなた方の肩には、それほど重い命運が掛かっているのですよ!!』
実際にはサンダーバード以降、それより強い敵と出会っていないし、あの猫は怠惰だからその当時より倍程度しか強くなっていないとは知っているけど、聞いた人には10倍は強くなったと錯覚しただろう。
『もう、あの猫は、神の領域にいると考えましょう。天災だと認めましょう。神や天災には人間は勝てません。幸いあの猫は人類のためを思って行動しているのですから、私たち人類も同じ行動をすればいいだけのことではないでしょうか?』
私の問いに、考える人と頷く人に分かれた。
『課題は、人権侵害、領土問題、貧困問題、核兵器廃棄問題、紛争問題……いつの時代も話し合われていることです。今までは声高々に言うだけだったことを、本気でやればいいだけのことでしょ?
そうすれば、猫の脅威に怯えることなんてないんですよ! ていうか、私はちっとも怖くありません! だって、できると信じていますから! みんなの手で、世界中を幸せにしにゃしょう!!』
「「「「「にゃ~~~!!」」」」」
最後の最後で噛んでしまったからには、甲子園球場が「にゃ~にゃ~」と叫ぶ声に包まれてしまうのであった……
やっちゃった~~~!
それから質疑応答に移ったけど、偉い人は謝罪の言葉しか言わない。元々聞きたいことも質問してみたけど、どうやったら猫を殺せるかだったので、諦めたんだってさ。
中には、私をお嫁さんにしたいとか言うお金持ちのおじ様がいたけど、お兄ちゃんが追い払ってくれた。本当はけっこう好みだったのに……
そんなこんなで家にまで押し掛ける各国の偉い人やマスコミはいなくなったのだけど、今度は猫耳カチューシャを付けた老若男女が現れるようになった。
理由は……
「「「「「白猫巫女様~~~」」」」」
とのこと。
最近、世界中で自然発生して信者が増え続けている新興宗教『白猫教』が私を巫女に祭り上げようとしていたのだ。ご丁寧に、ララちゃんネルで私がやった猫耳キャラでかわいこぶりっこしている画像をうちわに張り付けて……恥ずかしい!
「あの~……あの猫、
「「「「「え??」」」」」
「いや、だって、古事記由来の神様と喋ることができますし、靖国神社に参拝していましたよね? 他の宗教施設には一切足を運んでないじゃないですか? もっと言うと、資料に出て来る『白猫教』は猫の非公認となってますよ。そんな宗教作って大丈夫なんですかね~??」
「「「「「ちょっと出直して来ま~~~す!」」」」」
というわけで、軽く反撃。白猫教信者は逃げて行ったので、追撃。ララちゃんネルで「猫は神道」と言いまくったら、白猫教信者は激減して、神道に入信する人が激増したらしい……
でも、本当はあの猫、仏教徒だけどね。
ようやく私の周りが静かになったところで、とんでもない御方から手紙が届いた。その御方とは、天皇陛下。私に
しかし、私は何も
たぶん、私の悲鳴を最後にスマホが壊れたから、天皇陛下も焦ったのだろう。数分後には、うちに荒ぶる警察官が大量に来たもん。
何もないとめっちゃ謝罪して、署長のスマホを借りて天皇陛下とお話したところ、紫綬褒章は私を呼び出すちょうどいい口実で使ったらしく、本当は二人きりで話をしたかったそうだ。
そんなこと言われたら、そっちのほうが緊張する。でも、一度断った手前、また断る勇気もないので東京に向かうことに決めた。
ちなみにスマホは、天皇陛下にはすぐ直ると言ったけど、修理不可能だったので泣く泣く欲しかった新機種に交換しました。
わっ! このカメラの機能、すっご~い。
新しい武器を携えていっぱい撮影し、猫から
そこで緊張しながら挨拶をして話をして行くうちに、優しい天皇陛下のおかげで普通に世間話をできるぐらいになったのだが、次の瞬間には固まった。
「フフフ。やはり夫婦でしたか。シラタマ王の反応と似ていますね。フフフ」
そう、あの猫。異世界転生していたことが天皇陛下にバレてやがったのだ。だから私も怪しまれて呼び出されたのだ。だったら帰る前に言ってよ!
「あの、その話は、誰かに……」
「私一人の心に留めております。心配しなくとも、誰にも言いませんよ」
「そ、そうですか」
「ここにお呼びしたのは、その確認と、愚痴ですね。シラタマ王は、昔からあんなに無茶苦茶だったのですか?」
「いえ。いつも自身を
そこからは、私たち夫婦の昔話。出会いは掻い摘まんで説明し、バブル崩壊で首をくくろうとする仲間を救いボランティア活動に精を出していた話を長々としてしまったが、天皇陛下は微笑ましく聞いてくれた。
ちなみに天皇陛下の愚痴は、UFOで連れ回されたこと。UFOの中では下で行われている映像が様々な角度で大画面で流れていたから、王女様たちは楽しく見ていたらしいが、天皇陛下は気が気でなったんだって。
あの猫の嫁が銃をブッ放す軍人相手に大立ち回りを繰り広げ、挙げ句の果てには大きな建物を叩き潰していたのだから、私も行けばよかったな~……いや、引くよね~?
思ったより楽しく話せた天皇陛下との面談は、ラストはコミュニケーションアプリのID交換してしまったけど、スタンプ送ってもいいのかな?
あ、どうして私の電話番号を知っていたのかと聞いたら「国家権力、ナメてます?」って言われたからそういうことみたい。こわっ。
こうして猫が帰ったあとの私は、猫のせいで大変な思いをすることになったけど、天皇陛下と時々スタンプ交換をする間柄になったのであった……
でも、次の殊勲式では、元夫の後藤鉄之丈が
おしまい
*************************************
この続きは「猫王様の千年股旅」で。
猫さんの生活はまだまだ続きます。
アイムキャット❕❕❕~異世界の猫王様、元の世界でやらかす記~ @ma-no
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます